68話 依頼
20万文字いってました。
いつも読んでくれてありがとうございます。
今日はテキトーに素材集めやらなんやらでいろんな階を行ったり来たりした。夕方頃、ギルドに戻ると受付のおじさんに声をかけられた。
「ちょっと裏の個室に来てもらってもいいか?」
「はい」
おじさんの後について行って、応接室って書いてある部屋に入る。
「下層探索者宛に依頼が来てるんだ」
「はあ…」
「下層で取ってきて欲しいものがあるんだよ。大竹が下層に行ってから1年経つだろ。他の下層探索者は企業と契約したり国からの依頼を受けたりしてるんだ。なんたって、日本にはたったの20人くらいしか居ないからな。なんで1年かっていうと慣れてない時に依頼しても達成する可能性が低いからな。
んで、今回はまだ誰とも契約してない人からの依頼が来ててな、大竹もまだ誰とも契約してないだろ?そういうわけで紹介をしたんだがどうだ?他の探索者もいっぱいいっぱいでな。足りてないんだ」
「はあ、まあいいですよ。内容次第ですけど」
「そうか、良かった。依頼の内容だが、35階にいる麒麟の剥製なんだが、なるべく傷を付けないで倒せそうか?」
「んー、できると思いますよ」
「そうか。期限は1ヶ月になってる」
「了解です」
「ギルドから大竹の情報を依頼主に教えることはない。仮に契約する場合は大竹自身が直接会うことになる。一応今回の依頼主は食品会社の社長でね、最近有名な保存食を売りに出してる、株式会社オールラディーズって知ってる?」
「いや、わかんないです」
「まあ、契約したい場合は言ってくれ。場所を設けるから」
「はい」
「社長との繋がりはあって損は無いと俺は思うぜ。個人的な意見だけどな」
「なるほど」
「それじゃあこの契約書を読んで問題なかったらサインをよろしく」
俺は名前を書いて印鑑を押す。
「それじゃあ話は終わりだ。時間取らせて悪かったね」
「いえ、それでは」
「おいおい、ダメだよ」
「何がですか?」
「こういう時に先に報酬の確認をしておかないと。契約書にも金額が書いてなかっただろ?」
「そうなんですか」
「今回はわざと伝えなかったけど、そういう時は自分から聞かないと。依頼が終わった後に変な金額を出されても文句言えないぞ。聞かなかった方が悪いからな」
「なるほど。で、いくらですか?」
「3000万だ」
「えっ、そんなに!」
「まあ、そう思うだろうが、別に高くは無い。考えてもみろ。日本に20人しか取りに行くことができないんだ。むしろ安いまである。まあ本人がこの金額で納得なら問題は無い」
「俺はいいですよ」
「よし、ならよろしくな」
「はい」
部屋を出て家に帰る。
専属契約か。なんかめっちゃ楽にお金稼げるんだけど。いいのか?こんなに楽で。
もしかして清麻呂もこんくらい稼いでんのかな?今度聞いてみよ。
う〜ん、契約した方がいいか?別に損になることは無いからなー、しちゃおっか。
翌日。
「えー、今日は初めての依頼をしていきたいと思います。今回の依頼の内容はここ!35階の麒麟です。麒麟の剥製が欲しいと依頼が来ましたので、なるべく傷を付けずに倒したいと思います」
『大丈夫?』
『難しくないですか?』
『依頼と戦闘スタイルが合ってないww』
『あんた殴る以外できるのか!』
「みんなの心配もわかります。やってみないとわかりませんが、俺はなんとかなると思ってます。まあ麒麟は何体でもいるので成功するまでやっていきましょうか」
「確かに麒麟ってかっこいいですよね。頭に生えてる1本の角とか、首には大量の毛があってなんか高貴さと気品を感じる」
大木の森を歩いてると前から麒麟が出てくる。
「あっ、今更だけど角がお揃いだ」
お互いに額に1本角が生えてる。
「なるべく傷を付けたくないからな」
細長い金棒を出して構える。麒麟は結構速いからなぁ。一撃で仕留めたいけど。
「ふんぬ!」
金棒を投げると、麒麟が反応して跳ぶが間に合わずに後ろ足の付け根に刺さる。
「だあぁ!」
ミスった!仕方が無いから頭を潰して倒す。
「次だな」
とうっ、やあっ、そいっ。
あれから何体か失敗が続き無駄に麒麟を倒すことになった。体に気を遣うの疲れるなぁ。普段気にせず飛ばしすぎたな。
そもそも麒麟が速いんだ。当てずっぽうで動きを予想してやってみるか。
せいっ、はあっ、ふわっ。
んー、難しいな。2桁過ぎても未だに成功は無し。
俺の金棒が狙ったところに当たらないのには1つ理由がある。
当たった金棒が麒麟の体を貫通しないように少し軽く投げてるからだ。そのせいで麒麟でも反応できるスピードになってる。
直接差し込むか?でも雷纏ってるからなぁ。痺れはあんまり好みじゃないんだよな。
それに懐に入るの大変だし。俺のスピードもそこまである訳じゃない。投げた金棒の方が速い。
決断の時かな。まだまだ実力不足ってことだ。手加減して思い通りに倒せるほど俺は強くないと。
仕方ない、ちょっくら電気マッサージ受けてきますか。
短刀くらいの長さの金棒を出して突っ込む。
そして麒麟の首元を突く。
「あがぐがわわわ!!」
全身に電気が走る。
金棒を上から下に斜めに入れる。金棒の先端が魔石を割ったのがわかった。
これまでの戦いで麒麟の魔石の位置は把握済みだ。最小限の傷で倒すことが出来た。
『乙』
『上手くいきましたね』
『ん?いつもと同じ力技に見えるけど』
『いつもと同じだな』
『電気は嫌い。把握』
ロープを使って麒麟を木に吊るして血抜きをする。
逆立った髪を直して、お昼を済ましておく。
首から血が出なくなってから麒麟を背負ってギルドに戻る。めちゃくちゃ視線を感じながら受付に行く。
「おー!もうやってきたのか。お疲れさん、これをはめておけ」
おじさんから魔石を貰う。
「それは防腐機能付きの魔石だ。博物館にある剥製にも使われていてそれを付ければ肉も骨も腐らなくなる」
魔石を首の所にねじ込む。傷口の血は水で洗ってるし毛がフサフサで傷口が見えることは無い。
完璧と言っていいだろう。
「そんで、専属はどうする?」
「契約します」
「そうか、なら1週間後にギルドで行おう」
「了解です」




