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大竹村丸物語  作者: 骨皮 ガーリック
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6話 ダンジョン

早速自己紹介。

「俺は大竹村丸。おじいさんは?」

「わしは崩城時満(ほうじょう ときみつ)じゃ、今年69になる爺さんじゃ」

「崩城さん、よろしく!俺は今年16です」

「ほぉ〜、若いのぅよろしくのぅ」

「お2人さん準備はいいか?」

「はい」「よいぞ」


目の前にある俺よりも大きな黒い渦がダンジョンの入り口だ。

その前に駅の改札と同じようなものがあり、そこにダンジョン入場許可証(ダン証)をかざす。

ICカードになっている。


入場と出場で1回ずつそれぞれやることで、誰が中にいるかの確認をしている。

もしもの時のためにあるものだ。

ダンジョン内での死亡の確認が取れない時は3ヶ月で死亡扱いになる。


この渦に触れるとダンジョンに移動する。

謎の渦だ。

「よし、行くぞ!」

黒渦に触れると、そこは

地面も壁も天井も全てが岩でできた洞窟だ。

ドーム型になっていて一つの広場になっている。

天井は20mくらいで地面は直径100メートルくらいかな。

そこらへんに小さなウサギが走り回っている。


1階のウサギは普通のウサギとほぼ一緒だ。

違うのはスピードが桁違いだと言う。

一般人でも倒せる最弱のモンスターだ。

最初の方は動物型の魔物しかいない。

「よーし、まずはやってみよう!

無理そうなら手本を見せるが、まずは自分のやり方でやろう。ウサギは基本逃げるから大丈夫だ。たまに体当たりしてくるが打撲にもならない、少しバランスを崩すくらいだから安心していい。持っているナイフでスパッとやるんだ」

早速実践だ。


「じゃあ、俺から行きます。」

ちょっくら暴れさせてもらいますか。


ぼーっとしてるウサギに向かって、ナイフを左手に持ってゆっくりと後ろから近づく。

あと3歩のところまで近づき、ナイフを構える。

「ふんっ!」

「シュバッ‼︎」

ナイフをすんでのところで横っ跳びで躱され、睨まれながら遠くまで逃げられた。チラチラとこっちをみながらすごいスピードで逃げていく。


その後も5体試したが同じ感じで逃げられた。

逃げる方を先読みしてナイフを振り下ろすが、どうもワンテンポ遅い。


「よーし交代だ。」

「くそー、速くて当てられそうにないです。」

「まぁ、必勝法もあるがまずはあの速さに慣れることが大事だな。」

「ほっほ、わしの番か」

テクテクと背後からウサギに近づき、


「シュバッ‼︎」

「ギャウゥ」

ナイフを一突き、ウサギは気づく間も無く

首を後ろから貫かれビクッと痙攣し動かなくなった。

「「えっ!」」

俺とおじさんがあまりの出来事に思わず、声を出して驚く。


「ほっほ」

ニコニコとウサギを片手で持ち上げ、戻ってくる姿は、ただの優しいおじいちゃんの様だ。

持っているウサギの首から血が流れていなければ。


こ、これは

「ほ、崩城さん、もしかして経験者?」

すでに何回かダンジョンに入ったことあるんじゃないか?

「いいや、殺生は初めてじゃの。

年の功ってやつじゃの、長生きしてれば自然と先読みできる様になるからのぅ」

「う、うそだろ。

今の動き探索者になり始めた人がしていい動きじゃないぞ」

どうやら探索者から見ても今の動きは異常らしい。

ははっ、これが才能ってやつか。

世の中は残酷だぜ全く。


そして

「おっと、わしにも特殊技能ってやつがあるみたいだの、今なんとなく理解したわい。

本当に突然こんな超常的な能力が手に入るんかの」

モンスターを倒し崩城さんは特殊技能に目覚めた様だ。


「へー、見た感じ何もわからないですけどね」

「わしの能力は目じゃな、ほっほ、これは面白くなりそうじゃ」

その目はすでに次の獲物を睨んでいた。


「ちょいともう1体狩ってきてええかのぅ」

「いいですよ、好きなだけ狩ってきてもらって、大竹くんももう一回やってみようか」

「はい」

くそー、自信無くすぜ。


隣では

「シュッ」「シュッ」「シュバッ」

明らかに異常な狩りが行われている。

崩城さんがウサギの正面に立ち、ウサギが跳んだ時には首にナイフが刺さっていて空中で死にそのウサギが生きて着地することはない。


横から見てても何が起こってるのか理解できない。

崩城さんの動きが格段に速いわけではない。

普通にナイフを投げている、ただそれだけなのだ。


気になって自分の方に集中できない。

「ね、ねぇあれ、どうなってるんですか?」

思わずおじさんに聞いてしまう。

「わ、わからない。だが本当にただの先読みなのかもしれない。

動く方向を読んでその先にナイフを投げている。それだけの様に感じる」


「崩城さん、どうやってるんですか?」

「ほっほ、見えるんじゃよ。

どうやら集中すると世界がゆっくりになるんじゃよ。それで、ウサギが跳ぶ瞬間がはっきりと見えるんじゃ。

その瞬間、わしには長く感じる一瞬じゃが、跳ぶ方向が分かればそこに合わせてナイフを投げてあげればこのとおりじゃ。

これだけゆっくりな世界じゃ、この距離なら狙った場所にナイフを投げるのは簡単じゃな。」

「す、すげぇ!」


世界がゆっくりになるとか、強すぎだろ‼︎

かっけぇなぁ!


「坊主もいつかできるぞ。わしにはわかる。

だから焦る必要はないぞ、

自分を信じるんじゃ」

「お、おっす!師匠‼︎」

思わず師匠と呼んでしまった。


こんなことは初めてだ。誰かの技術に憧れるのは。

俺が初めて憧れた人。

「いつか必ず師匠よりすごくなるから、楽しみにしててよ!」

師匠とのこの約束、必ず果たしてみせる!

とりあえずまずは1体殺さないと、話にならない。


「セイッ」「ヤー」「トウッ」

20分後、隣にはウサギの死体の山ができていた。

全て爺ちゃんのだが。

俺はいまだにウサギに触れもしない。


「やばいな」

「1回手本見せるか、普通のな」

まるで爺ちゃんのが見本にならないと言っているみたいだが、実際見本にならない。

常人に出来っこない。


「いいか、爺さんのやってることは一応基本的なことだ。

獲物の逃げる方向を予測して仕掛ける。

だが、これは慣れないと難しい。

そこで、どこに逃げるかわからない時は、逃げ道を絞るんだ。


壁に追い詰めたり、角に追い詰めれば、逃げ道は当然絞られる。こんな感じで追い込むことができればあとはじわじわと詰め寄り捕まえるだけだ。まぁ、追い込み漁みたいに罠、この場合は壁の方に追い込めば後は簡単だぜ」


おじさんがウサギをじわじわと壁際に追い込み

逃げ場を失ったウサギにナイフを突き刺す。

まぁ、わかるけど。

追い込むのがむずいよ。


それから10分後、ナイフをしまい手袋をしてウサギを壁際に追い込み飛びつく。

腕と胸を使ってがっちりとホールドする。

どうにか右腕1本に持ち替えて、空いた左手でナイフを取り出して首に一突き。


かなり暴れて返り血が顔にかかるが力を緩めない。なんとか殺すことに成功。


「ほっほ、よくやったのぅ」

「頑張ったな」

と雑に頭を撫でられる

「や、やめてよ子供じゃないんだから」

「まだまだ子供だよ」


シュン、不意に頭の中に流れ込む情報。

そしてだんだんと感じる体の中にある謎の力、これが魔力か。

そしてこれが俺の特殊技能なのだろう。

早速使ってみる。


「来い」

ボンッ!

地面に1本の木の棒が突如現れた。

それは野球で使われる木製バットほどの長さであるが、太さまで二回りほど太い。

握る部分以外の表面はでこぼことしていて、荒削りな制作中の木製バットの様な印象だが。

俺の記憶にあるこれはおそらく棍棒。


大昔、人間が使っていた武器。

まじか、これが俺の能力。

なんかショボい。

もっとフィクションみたいなことができるのかと期待した。


地面に落ちた棍棒を手に取ってみると、重そうなイメージだったが意外と持ちやすく重すぎることはない。

試しに振ってみるがすでに体の一部であるかの様な感覚。

俺は左利きだから基本は右手が下かな。


近くのウサギに近づき横からフルスイング。

さっきまでとは違い一発でウサギの体を捉えることに成功。

相性は良さそうだ。


かっ飛ばしたウサギは20m先の壁に叩き付けられ、絶命した。

その後、20分ほどウサギを狩って終わりにした。


なぜ20分かというと、爺ちゃんが狩ったウサギの魔石を師匠とおじさんの2人で取り出していたからだ。その間俺は狩りをさせてもらった。


棍棒は結構頑丈で岩に叩きつけても、ヒビが入ることはなかった。

そして、俺は棍棒を出したのでは無く、作り出すことが能力の様だ。


出し入れは自由で念じれば消えるし、念じれば出てくる。棍棒の先の方に名前を書いた後、出し入れしたら、名前が無くなっていたので、別物なのだろう。こびりついた血も無くなっている。


微量だが体内の魔力が少し減っているのがわかる。出す時にだけ魔力が減っていた。

消す時に魔力は減らない。


ギルドに戻り買取カウンターに向かう。

師匠の方はすでに終わっていた。

何体狩ったんだろうか、後で聞こう。

ちなみに、俺は10体だ。

とにかく棍棒との相性が素晴らしかった。

「こちら買取金額となります。それと領収書です」

「ありがとうございます」

今回は魔石だけだ。


重さで計算しているみたいで、専用の機械に置いていた。

話を聞くと追加でアタッチメントを付けると1回で10万個の魔石の重さが測れるらしい。

規模がデカすぎる。


ウサギの魔石は1つ0.1グラムだ。

ウサギの魔石は小さいからほとんど値段は付かない。10個からしか買取は行えない。

大体10個で1円だ。

スズメの鼻水かな。涙ですらないぞ、これは。

もちろん大きくなれば値段も上がる。


なので1階なんかは初めての人か、業者以外は行かない場所だ。

モンスターの肉は基本買取は行われていない。

そのためダンジョン内で無くなるのを待つか、自分で食べるかの二択だ。


依頼がある場合は買取が行われる。

だが基本は業者に任せる。

依頼の場合は中層や下層の物だ。

業者では行けない場合、依頼が出る。

骨、爪、角も見た様な感じらしい。


「師匠は何体狩ったんですか?」

「わしは150体じゃな、魔石だけ卸したのう」

「さすが師匠‼︎」

「おじさんも今日はありがとうございました!」

「おう、大竹!気い付けろよ!じゃあな」

「坊主、またのぅ」

「押忍!」

そのまま俺は家に帰って家族に今日のことを話した。




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