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大竹村丸物語  作者: 骨皮 ガーリック
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51話 新型カメラ

柏木さんとパーティーを解散してから1人でダンジョンに通うようになった。なんだか寂しい気分になりながらもコカトリスを倒していくのが俺の日課になる。部活がない日は28階でコカトリスを倒す。


そんなある日。

休み時間に佐藤君が話しかけてきた。

「大竹くん!コカトリスとの戦いの動画みたよ!めちゃくちゃ迫力あって凄かったよ!」

初めて戦った時の動画を佐藤君に見せた。定期的に見せてるから感想をくれる。


「それでさ、また新しいカメラを造ったんだ。バージョンアップってやつで、完全に上位互換になったんだ」

「へー、すごいね」

「それがこれなんだけど」

ポケットからそれを取り出す。掌サイズで半円形になってる。今俺が使ってるやつは完全に球体だった。


「形が変わったね」

「そうだけど、もちろんそれだけじゃないんだ。液晶パネルはタッチパネル式になって操作も可能。スマホと連動して、録画もできるし映像の解像度も上がってる。最近の大竹くんの動きだと追いきれないときがちょっとあったけどこれなら大丈夫。自動調整で暗闇でも昼間のように撮影可能。音もしっかり拾ってくれるんだ。

それで相談なんだけど、配信とかしてみない?」

早口で語ってからの流れでなんか提案された。


「いや、いいよ。話すの得意じゃないし」

「いやいや、話さなくてもいいんだよ。戦いの映像だけでも見る価値あるから。僕みたいな人、世の中にたくさんいると思うんだ。無言でもいいし、思ったことを言うだけでもいいんだ。暑いとか寒いとか、お腹すいたとかだけでも。ダンジョン配信者の中には無言の人は結構いるから」

「そうは言われても、ネットに顔出したくないし」

「そこも大丈夫。今回のカメラは設定すれば自動でモザイクをかけれるようにしてるから」


「俺インターネット詳しくないから難しいことできないよ」

「必要ないんだ。それも搭載済みだから。ワンタッチで配信アプリと連携して、開始から停止も可能なんだ。そのための液晶パネルだから」

もう、最初っからやらせる気満々じゃん。俺の不安を先取りして対処してきてる。配信用の機能が備わってるし。


「んー、それならいいかな。無言でいいならやるよ」

「やった!ありがと大竹くん!」

「それにしても機能盛り込んだね」

「うん。お父さんに借金して下層モンスターの魔石と素材をふんだんに使って造ったんだ。未来の自分への投資みたいなものだね」


「まじか。ちなみに値段は?」

「300万円くらいかな。まあ、仕方がない出費だね」

「それ俺が使っていいの?」

「うん。僕は大竹くんだから渡すんだよ。見ず知らずのお金持ってる人に買われるよりいい」

「俺はどれだけの対価を求められるんだ」

「そんなのないよ!僕は楽しみなんだ。大竹くんの戦いを見るのが」

「そんなに楽しいの?俺の戦い見るの」


「うん!やっぱり近接戦闘は見てるだけでもハラハラして汗をかくんだ。その場にいるような臨場感を味わえて最高だよ。そのためにカメラもより高性能にした」

「そうなんだ。あっそうだ、コカトリスの魔石あげるよ。最近結構倒したから」

「ほんとに!これでまた造れるよ」

「それで借金返せば?」

「なっ!せっかくの素材を売るなんて、そんなこと出来るわけが無い!あぁ、創作意欲がぁ、湧いてくる」


そのまま佐藤くんはトボドホとおぼつかない足取りで席に戻る。

配信か。まぁいつも通りでいいって言ってたしな。そのままで行くか。

と、考えてると慌てて佐藤くんが戻ってきた。

「忘れてた。配信の設定とかカメラの設定僕がやっとくね」

「よろしく」

スマホを渡してやってもらう。


佐藤くんの両手の親指が高速で動く。いろいろ設定してるのかな。

俺は次の授業の準備をする。


5分後。

「終わったよー。配信アプリの設定しておいたから最短で今から24時間後には配信できるようになってるよ。カメラの方も連携させて音声とモザイクを設定しといたから」

「ありがと」

「この画面から配信のタイトルを入れて配信開始をタップすると配信が始まるよ。タイトルさえ入れてれば、カメラの録画ボタンを押すと配信が始まるようになってる」

スマホの画面を見せてもらって説明を受ける。まぁわかる。

「何かあったら連絡してくれれば対応するからね。あっ、大竹くんのファン1号は僕だよ!」

「了解」


受け取ったカメラをカバンにしまって古いカメラを返す。それにしても300万円か、思い切ったな。

でもこれだけの技術というか能力?錬金術が使えれば安いのかな。


俺も配信用に防具とか買おうかな。やっぱり見栄えとか大事でしょ。金棒が赤黒いからこれを軸にして決めるか。

2時間目の英語ではずっとファッションについて考えてたら終わってた。

うーん、決めきれないぜ。


明日は1日コカトリスと遊ぶか。そんで日曜日に初めての29階を配信しようかな。まぁ観られても観られてなくてもいいけど。



土曜日の夕方。

朝からコカトリスを狩りまくって、ようやくギルドに戻ってきた。

これから明日の配信用に服を買いに行く。俺はおなじみのショッピングモールに行く。


う〜ん。やっぱり白がいいかな。それとも赤とか派手目な色に手を出しちゃおうかと、いろんなお店を見てると。


「お姉さん達可愛いね。俺達とご飯行かない?それとも今日は忙しかったら連絡先交換して後日でもいいよ。俺達何時でも空いてるから、それに高いお店でもいいよ。行ってみたいお店があったら俺達と行こうよ。奢るからさ」

「いえ、大丈夫です」

「そうなこと言わずに、少し考えてみてよ。ご飯食べるだけだからさ。そっちの君は?」

「私も大丈夫です」


ショッピングモールの中にあるベンチでナンパしてる人がいた。2人組のチャラそうな男達が同じく2人組の女の人達に声をかけてた。


素通りしようとしたけど俺の驚異的な視力はチラッと見ただけではっきりと顔が見えて、その2人の女の人達が知り合いだとわかった。

その知り合いとは朝姫と神保さんだった。これは素通り出来ないな。その場に向かいながら声をかけた。


「おまたせ!いやー、買い物時間かかっちゃったよ。あれ?知り合い?」

4人が同時に振り向く。


「ち、違うよ。急に話しかけられて」

「そうなんです」

「へー、ども、2人に何か用ですか?」

「あ、ああ。ご飯に誘ったんだよ。暇してそうだったから。な?」

「おう。で、一緒にどう?」

まだ続くのかよ。


「だから嫌です。さっき断りましたよね」

「じゃあ連絡先交換しようよ。ね!」

「んっ!んんっ!」

咳で圧をかけてみた。


「もしかして君の彼女だった?」

「違いますけど」

「じゃあいいよね。俺達といた方が楽しいよ」

「そうそう。俺達なら女の子を待たせるなんてことしないからな」

おっと、まだ続くのか。中々引き下がらない粘り強いナンパ達だな。


「2人は嫌がってますよ」

「そんなの、君の前だからだよ」

「そうそう、ちょっと離れててよ」

うーん、あれを試してみようかな。人にやるのは危ないかな?


一旦目を閉じて心をフラットにする。目を開くと同時に俺の魔力を男にぶつける。

もちろん魔力には実体は無いから物理的には何も起こらない、そう物理的にはね。

(せいやっ!)


男達にはどう感じたのか。

(どさっ)

腰を抜かして口をパクパクとする。

(やべっ!やりすぎちゃったかな)

俺は2人の腕を掴んで立たせて横の狭い通路に入ってく。

「ごめんね、やりすぎちゃったみたい」

「え、あ、え、」

「……」

2人とも喋れなくなっちゃった。


「ほんとにごめんなさい!まさかここまで威力があるとは思わなくて」

「え、い、いえ、な、にをしたんですか?」

「ちょっぴり魔力を使って威圧してみたんです」

「そ、そうな、、んですか」

「もう大丈夫だと思うんですけど」

「い、いえ、俺は今アンタにビビってるんで。その魔力とかはわかんないっす」

「そうですか。それじゃ俺は行きますね」

「さ、さよならっす」

「はい。さよなら」


俺は2人から離れて朝姫達のところに戻る。

やっちゃったよ。あそこまで効果があるなんて。2人には申し訳ないことをしたな。


「おまたせ、もう大丈夫だと思うよ」

「助かったよ!ありがと村丸!」

「助かりました」

「それにしてもあれは何?」

「お試しでちょっと魔力を当ててみたんだ」

「なにそれ」

「ちょっと前にオオカミの所でたまたまだったんだけど今みたいなのが起きたんだ。その時はオオカミが俺から逃げ出したんだけど。だからちょっと威嚇みたいな感じでやってみたら、ああなっちゃった」

「へー、そんなことできるんだ」


「俺も最近知った。それじゃあ俺行くから」

「うん。ありがと!」

「ありがとうございます」

「ふっ、気にしないでよ。男として当然の事をしたまでさ。

紳士とは常に心に余裕を持つものだ」


最後の方は2人には聞こえないくらいの声で呟く。

かっこいいセリフを吐いて2人から去っていく。いいシチュエーションだ。


あんなテンプレなナンパほんとにあるんだな。びっくりしたよ。

さて、買い物の続きをしようか。

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