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大竹村丸物語  作者: 骨皮 ガーリック
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40話 冬の陣

就寝部屋に男4人が集まる。これから起こるのは仁義なき戦い、明暗合同合宿枕投げ大会冬の陣が今始まろうとしている。


「冬も俺が優勝をかっさらうぜ。強者としての戦いを見せてやる」

「ふんぞり返っていられるのも今のうちだぜ清麻呂」

「この戦いだけはいくら先輩でも手加減はできませんよ!」

「俺もっす、下克上を見せてやるっす」


清麻呂が部屋の真ん中に立つ。

「前回大会優勝者の俺が仕切らせてもらう。ルールは至ってシンプル、4人が部屋の角に陣取って相手に枕を当てる。最後に残った者が優勝だ。能力の使用はありだが、部屋を壊したら一発退場だ。ルールは以上、フェアプレー精神を心がけるように…いざ始め!」


こうして始まる枕投げ大会、最初から全開で行くぜ!角を生やして周囲を確認する、何も見逃すな。

一瞬の気の緩みが命取りになる。


見える見える。些細な動きも見落とさないぞ。

先制は清麻呂か!服の袖口からツタが顔を出しノーモーションで最短距離で枕を拾って投げてくる。さすが清麻呂、緻密な植物操作だ。俺じゃなきゃ当たってただろう。サッと避けて壁に当たって落ちる枕を空中でキャッチする。この時みんなに背を向ける形になるがもちろん見えている。


このタイミングで動く金太郎くん。俺の背中を狙って投げてくる。

お見通しだぜ。右足を軸にして半身になって避ける。この勢いを殺さずにそのまま両手で枕を1つずつ持った状態で回転する。

二周三周して時雨と金太郎くん目掛けて枕を放つ。

簡易版 大嵐投。


時雨は避けたが金太郎くんは避けきれずに足に当たる。

すぐに金太郎くんが投げてきた枕を拾って体勢を整える。清麻呂が金太郎くんの陣地から枕を拾う。

3人は向き合いながら細かいフェイントで隙を誘う。


そんな中、先に動いたのは時雨だ。かなりの速さで投げられた枕は清麻呂の足元にいく。

だが清麻呂を仕留めるにな速さが足りなかった。あっさりと避けられ壁に当たると思われたが、枕が方向転換する。180度方向が変わった枕は清麻呂の背中側から足元にいく。


一瞬見えたのは枕の一部に時雨の手が見えた。恐らく枕を投げた時に一緒に飛ばしておいた手を清麻呂を通過したタイミングで動かして無理やり方向転換したのだろう。

いやらしいテクニックだ。


反応できなかった清麻呂は当たった。だが枕が床に落ちることはなかった。

原因は足元の裾からツタが枕を絡めとっていた。


ツタによって宙に浮かぶ枕が俺に襲いかかる。ツタで掴んだままの状態で俺がそれを避けても追尾してくる。厄介なのは清麻呂がもう1つ枕を持っている事だ。ツタだけに気を取られると殺られる。常に警戒しておかないといけない。

時雨への警戒も怠らない。


清麻呂がもう1つの枕をツタに持たせる。それから清麻呂による集中攻撃が始まった。

時雨は機会を伺ってるのか動かない。反撃したいが今は避けるので精一杯だ。

金棒を出したいが部屋の中では狭くて扱いづらい。どうにかこの状況を変えたいがやれることがない。


いや、一か八か失敗したら隙だらけになるがこの状況じゃ仕方ない。やらなきゃこのままだ。


枕を避けてそのツタを掴む。既に後ろからもう1つの枕が迫ってきてる。掴んだツタを額に持ってきて、角の先端に当てる。

俺の角は意外ととんがってる。角で切れることを賭けて擦り付ける。

(だあぁっ)


ダメだ。ツルッと滑って傷すら付かない。

これを隙と見られたか、時雨が俺に枕を投げる。思わず跳んで避けてしまい、空中では為す術なく清麻呂の枕に当たってしまった。


こんなに呆気なく終わってしまうものなのか。

これが一発勝負、大会の怖いところだ。


これで清麻呂と時雨の一対一になる。これにより陣地が広がって部屋の半分がそれぞれの陣地に変わる。

枕の所持数は清麻呂が3、時雨が1だ。

有利なのは圧倒的に清麻呂だろう。


3つの枕が飛び回る。それに対して時雨は体の部位をしまったり小さくなったりして凌ぐ。俺と同じように時雨も避けるので精一杯で攻撃に出れないのか。

それが3分続く。


この攻防で久しぶりに体を元に戻した時雨、何かをするのかと見ていると明後日の方向に枕を投げた。これはさっきと同じやつなのかと思うと枕が方向転換する。清麻呂の枕同様、時雨の枕も部屋を飛び回る。清麻呂がツタでその枕を捕まえようとするが追いつかない。


時雨の枕が清麻呂の背後を取って終わりかと思った時、清麻呂の枕によって時雨の枕が弾かれる。そして落ちた枕を清麻呂が拾う。手持ちの枕が4つになった清麻呂。

ここで時雨が降参を宣言した。



長い戦いが終わった。

清麻呂から枕を奪うのは無理だと判断したのか、清く諦めた時雨。


そして本日優勝の清麻呂。

金太郎くんはみんなの布団を綺麗にして自分の布団に入る。

清麻呂はトイレに行く。

体が暑くなったからベランダに出る。

ガラガラ。夜の風が気持ちいい。


あとから時雨も来た。

「いやー、あとちょっとでしたよ」

「惜しかったな。でもあの攻撃をよく耐えたな」

「最後の一対一が村丸先輩だったら勝てる可能性あったんですけどね。清麻呂さんは厳しいです」

「なんだとぉ?」

「能力的に僕が有利ですからね。まだまだ手の内を全て晒してないですから」

「だろうね。まっ、俺は来年の夏に優勝するんだけどね」

「僕ももっと強くなってますよ。倒せますか?」

「もちろん」

「ふへへっ」

「ヘックシ!寒っ!」

「中に戻りましょうか」

「そうだな」


合宿の一日目が終わった。

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