37話 ゴースト退治
「あ、もしもし」
電話で年末はダンジョンには行けないことを柏木さんに知らせる。
「はい、また決まったら連絡します。お願いします。はい。それじゃあ」
ピッ。
「せんぱ〜い!誰と話してたんですか?」
時雨が部室に入ってきて俺の通話を聞いていたのか詮索してくる。
「ダンジョンの相方の人に連絡してたんだよ」
「えっ!誰ですかそれ!?先輩誰かと行ってたんですか!」
「うん。最近知り合ってね」
「どんな人ですか!?」
「どんな人?ちょっと抜けてるけど、優しいし強い人かな」
「じょ、女性ですか?」
「違うよ。イカついおじさん、筋肉ゴリゴリで片目に眼帯してるんだ。普段は頭にバンダナ巻いてたな」
「なぁ〜んだ、おじさんですか」
「なんだよ急に」
「なんでもないですよ!」
「それより今週の日曜日お出かけしませんか?」
「日曜か、う〜ん」
「予定ありました?」
「ダンジョン行こうと思ってたんだけど」
「そのおじさんとですか?」
「そうだけど」
「え〜、僕とそのおじさんとどっちが大事なんですか!?」
「そりゃ時雨だけど柏木さんとは約束してるから俺だけじゃ決められないよ」
「それじゃあ土曜日は!!」
「土曜日も約束してるんだ」
「どっちかお願いします!」
「仕方ないな。柏木さんに聞いてみるよ」
「はい!お願いします!」
時雨のお願いは断りづらい。甘えん坊な弟みたいな感じで、弟が欲しかった俺は時雨に甘い。自分でもそう思ってる。
「あ、もしもし、さっきとは違う件なんですけど━━━」
柏木さんは快くオーケーしてくれた。
「いいってさ。日曜日行こうか。それでどこに行くんだ?」
「遊園地です!」
「おー!久しぶりだな。春休みに部活のみんなで行った以来だな。
そうだ!2人も誘うか!」
「いいですよ」
「前回からかなり成長したからな、今なら絶叫も怖くない気がする」
「先輩絶叫ダメなんですか?」
「ん?ああ。高いところがダメなんだ。でも今ならあの高さから落ちても大丈夫そうだな」
「落ちないですよ。変な想像するから余計怖くなるんです」
「そうは言われても想像しちゃうじゃん」
「あの高さがいいんですよ。それが絶叫の醍醐味じゃないですか」
「まあ、乗ってみないとわからないな」
ガラガラ。
「お疲れ〜!」
「お疲れ」「お疲れ様です」
「今週の日曜日朝姫空いてる?」
「なになに!?空いてるよ!」
「時雨と遊園地に行くって話になったんだよ。だから2人も誘おうかなって。春休みみんなで行ったから、また行こうかなって」
「おお!いいねぇ!行けるよ!それにしても村丸から誘われたの初めてだ!」
「そうかな?そもそもそんな遊ばないしね」
「ね!珍しい」
その後神保さんも誘って4人で行くことになった。
土曜日。
「おはようございます」
「おはよう。そんじゃ行くか!」
今日は朝から柏木さんとダンジョンに行く。
それから今日は23階に行く。時期尚早かもしれないがとりあえず行ってみることにした。前の柏木さんの二の舞にならないといいけどね。
ダン証をかざして黒渦に入る。
まただ。暗くてどんよりしてる。
「さて、どうだろうか」
23階はゴーストが出る。いわゆる人魂だ。想像通りに火の形をしている。
火と風を操って攻撃してくる。
キーモンスターはハイゴーストだ。
かなり強力で火水風闇の4つの属性を操る。
格段に強くなる。
そんなゴーストが3体同時に目の前に現れた。
「とりあえず殴ってみます!」
先手必勝。
火の玉の避けて、近づく。
(プヒュンッ)
何かが俺の横を過ぎると右腕に切り傷ができた。
(なっ!これが風魔法か!?見えない!)
一旦離れるか!せっかく近づいたが不可視の攻撃はまずい。不意打ちでくらうと対応できない。
「風が見えないです!」
「まじか!どうする?」
どうするか。見えない攻撃。いや見えないだけでそこに実体はあるんだ。それさえわかれば。
いや、そうか!
額に角を生やす。
角はあらゆるものが見えるが実際は目で見てるわけじゃない。多分これは感じてるんだ。
角には感知能力がある。見えないものが見える。
壁の向こう側。暗闇の中。水の中。
ならいけるだろ!
再度近づく、リッチの火の玉と違って縦横無尽に追いかけてくる。
任意での操作なのか追尾なのかはわからない。
叩けば消える。避けて叩く。それだけだ。
(プヒュンッ)
(スッ!)
よし!風の攻撃が見える。これなら問題ない。
(プヒュンップヒュンップヒュンッ)
(ホワッヒュッセイワッ)
よし!三連続の風も避けれた。
距離を詰めてフルスイング。
(ブフワアァァン)
ゴーストの形が崩れたと思ったら元通り。
やっぱり物理は効かないか。
俺も柏木さんも完全に物理攻撃しかない。
撤退か?
一旦引いて考える。
「物理効かないです。どうします?」
「んーん、この状況じゃ俺も何もできないからな。なにか専用の武器を買うか?」
「そうですね。売ってればいいですけど」
「売ってるのは確かだ。剣を買いに行った時に見たからな」
「それなら良かったです」
「それにしてもあのゴースト放っておいて大丈夫ですかね」
「まあ、大丈夫だろ。あんまりスピード無さそうだしな」
「そうですね」
ギルドに向かおうと歩き始めた時、柏木さんがさっき新調した剣が自分の足に引っかかった。
(ゴテッ!)
思いっきり転んで顔から地面に激突した。
「大丈夫ですか?」
「痛てて…全く危ない剣だな」
「自分で買ったんですから、気をつけて下さいよ」
「参った参った。俺に剣は合わないかもな」
「とんでもないことを」
「あっやべ!眼帯壊れちまった」
「えっ?ぶつけただけで壊れるんですか?」
「ああ、これは特別性でなプラスチックでできてるんだ。布だとちょっとした事で壊れちまうからな。」
「今、ちょっとした事で壊れたじゃないですか」
「ああ、俺も初めてでびっくりしてる」
「目に刺さったら危ないですよ」
「そうだな。なにか新しいのを考えよう」
「あっ、今のでゴーストがこっちに近づいて来てます。走りましょう!」
「なんだって!?ゴーストが?」
「はい!なので逃げましょう」
「おう!」
(ケチトチコ…)
「あっ…」
(ズビャンッ)
振り返った柏木さんの視界に入った人魂が石化して落下する。そして地面にぶつかって崩れる。
「お、お疲れ様です」
「おう。終わったな」
「忘れてましたよ。その力」
「俺もすっかり忘れてたぜ。ハハッ」
「柏木さんこの階無双できますね」
「そうだな」
「それじゃあ続きをやりますか」
「そうだな」
はぁ、気付くの遅いよ。
こうして柏木さんによる一方的な蹂躙が始まった。
(ズビャンッズビャンッズビャンッ)
視界に入った途端石化して落下、地面に衝突して割れる。
なんと惨いことか。
ゴーストが何をしたって言うんだよ。
「ガハハッ」
ハイゴーストもついでで割れた。
「終わりましたね」
「終わったな」
「帰りますか」
「帰るか」
帰った。
次の日、みんなで遊園地に行った。
早朝から電車に乗って開園と同時に入場してたくさんの乗り物に乗った。
時雨は俺が食べてるやつを食べたくなるらしい。今日だけで何回、一口ちょうだいを聞いたか。
いっぱい写真も撮って楽しかった。
写真が大好きらしい時雨とのツーショットは100枚を超えていた。
それからみんなが写ってる写真を部屋に飾った。
楽しかったぜ。




