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大竹村丸物語  作者: 骨皮 ガーリック
39/97

36話 おじさんと一緒

12月に入った。

部活では21階で活動してる。

特に急ぐ理由もないから、ゆっくり連携の確認をしてパーティーの練度を高めている。


今日は日曜日。

今日も1人でダンジョンに来ている。

そして今日から22階に挑戦だ。


22階は一面岩だった。地面も壁も。

そして目の前には岩でできたゴーレムが動いている。

ゴーレムの特徴は当然体全体が岩でできていることだ。


人型で身長は3mほどで動きも滑らかだ。だが目口耳鼻は無い。それでも人の動きを認識してる。


キーモンスターは鉄でできたゴーレムで名前はアイアンゴーレム。

単純に性能が上がる。それと地面を操る。


目の前のゴーレムに近づくとゴーレムが戦闘態勢に入る。

膝を曲げてこっちに突っ込んでくる。ゴリゴリの近接戦闘型だ。

勢いそのままで殴りかかってくる。大きいからそれだけですごい迫力だ。

俺は金棒を出して受け流す。

(ドゴオォォン!!)

ゴーレムの拳が地面を砕く。


ただのパンチでこの威力か。直撃をくらえばひとたまりもないだろう。

骨の1本や2本は簡単に折れそうだ。

それからも腕を振り回してくる。単純な攻撃だが威力があるから気を抜けない。


金棒で腕を殴ると削れる。だけどすぐに修復するのがゴーレムのもう1つの特徴だ。


なかなか懐に入れない。雑な腕振りと華麗なステップワークで上手く距離を取られる。

オークより頭良さそう。

パンチばっかの脳筋だけど。いや脳岩か。


ゴーレムって頭潰しても何も変わらなそう。

とりあえず体のどっかにある魔石を探そう。全身削っていけばいずれ見つかるよね。

ってことで殴る。


どんどん足場が悪くなってくるから必然的に動き回りながら戦うことになる。

手を削って腕を削る、見つからないから足、腰それからお腹、胸にも無い。

こうして残ったのは頭だけになる。


厄介だぜ。頭は単純に位置が高いからめんどくさい。ジャンプして頭を殴る隙を作るしかない。

この隙を作るのが大変だ。


ゴーレムには筋肉も無いし血も無い、骨も脳も疲労も無い。

俺が隙を見せるととにかく殴りかかってくる。

殴殺マシーンだ。殴ることしか考えてない。引くことも無いし防御もしない。


いや、引くことはあるけどそれは相手を殴りやすい位置に置く為にゴーレム自ら動いてる。


金棒との相性がとにかく悪い。

仮に剣でスパッと腕を斬れたら修復に時間がかかってその間に隙ができる。

金棒だと削るが精一杯で隙にはならない。


いや、砕けばいいのか。

つまり苦戦してるは単純に俺の力不足か。


気付けば戦闘が始まってから10分以上経ってる。

両者に傷は無く、変化したのは地面だけ。

んー、どうしよっか。考えながらパンチを避ける。


(ズゴオォォォン!ズゴオォォォン!ズゴオォォォン!)

空振ったゴーレムの拳が地面を砕く。

相変わらずすごい威力だ。俺の本気と同じくらいだろうか。

一か八かやってみるか。

正面からの本気のぶつかり合いを。


ゴーレムのパンチを俺のフルスイングで打ち返す。

目には目を。脳筋には脳筋で。

力勝負といこうか!


ただ、回転率が早いゴーレムのパンチに合わせるのは難しい。

ということで賭けに出た。


左のパンチが地面を砕いた瞬間に金棒をゴーレムに投げつける。

すると右の拳が金棒に向いた。


基本防御はしないが全くしない訳では無い。

それは今までのやり取りでわかった。

パンチの軌道上にある金棒を叩き落として、次は左のパンチが来る。


この一瞬の時間があれば十分だ。

体勢を整えて迫り来る左のパンチに俺のスイングを合わせる。

(ゴズウゥゥゥン!!)


ベストポジションで捉えたゴーレムの左拳は砕けて弾かれる。

痛ってー!!


俺の本気のフルスイングでも砕けたのは拳だけか。

続いて右のパンチが来るが避けて跳ぶ。

まだ左拳は修復してない。


そして今放った右拳では間に合わない。

頭に金棒を叩きつけて頭を割ると魔石を見つけた。

(ゴドン!)


振り直す時間が無いから一旦金棒を消す。

手元に出し直し、露出した魔石に金棒を突き立てて割る。


ゴーレムの動きが止まって倒れる。

(ズバランッ!!)

ふぅ、長引いたな。

何とか上手くいってよかった。


その後ゴーレムを2体倒した。

やっぱり時間がかかる。




(ゴズドグゥゥゥン!!)

地面が揺れた。ゴーレムだろうか?それなら俺が戦ったやつより力があるな。


「まずいまずいまずいぜぇぃー!」

近くで人の声がした。


こっちに走ってくるのはイカつい大男だ。筋肉が盛り上って防具を押し出してるのがわかる。

右目に黒い眼帯をしたおじさんは片手に剣を持っているが途中で折れていた。


「おーい!そこの君ぃー!悪いが逃げてくれぃ!!俺には倒せないぃ!」

叫びながら近づいてくる男はどうやら後ろからついてくる銀色のゴーレムから逃げているようだ。あれがアイアンゴーレムか。


スピードもそれなりにあるな。男と同じくらいのスピードで距離がなかなか縮まってない。

どれぐらい走ってきたんだろう。

どうせ倒すんだからここで戦ってもいいでしょ。


「おじさん!引き受けるよ!!」

「大丈夫なのか!?俺は戦えないぞ!」

「はい!1人で大丈夫です!」

おじさんとすれ違って金棒を構える。

アイアンゴーレムが俺に標的を変えて殴りかかってくる。

それを避けると。

(ゴウズゴオォォォン!!)

なんて威力だ。地面が揺れる。


地面を殴ると揺れるって俺とキャラ被ってるんだけど!!

もしかして最近揺らしてないから忘れられてんのか!?

俺のアイデンティティなんですけど!

しかも俺より威力ありそう。


負けじとアイアンゴーレムの腕を殴る。

(ゴイィィィィン!)

衝撃が腕を伝って全身が痺れる。

硬すぎいぃ!!まずいぞ。


「おい、大丈夫か!?」

どうやら後ろで見てたようだ。

「任せて。おじさんは逃げていいよ!」

「そんなこと言われても子供に任せて先に逃げるなんて男が廃るぜぇ!」

「そんな余裕あるんですか?」

「いーや!無い!!」


「だったら逃げてくださいよ。何分時間を稼げるかわかりませんよ!今逃げておけばよかったって後悔しますよ!」

「子供を置いて逃げて生き延びる人生は無いぃ!」

「かっこいいこと言ってますけど何ができるんですか?」

会話をしながらもアイアンゴーレムのパンチを避ける。

「くっ」


「援護ならできる!」

「それじゃあお願いします!隙が出来れば何かできるかもしれません!」

ひとりじゃ無理だこれ。

とにかくフルパワーで殴るしかない。

俺にはそれしか無いから。


「俺は土を操れる!今もアイアンゴーレムが地面を動かそうとしてるのを必死で止めてる!」

あんたもアイアンゴーレムと能力被ってる!


「そうだったんですか!落とし穴とかできませんか!?」

「できる!!できるぞ!」

「それじゃあ次、俺がジャンプしたタイミングでお願いします。アイアンゴーレムの半身が埋まるくらいで!」

「了解した!だがすぐ抜け出すぞ!さっき何回もやられた!」

「大丈夫です!一瞬あれば!」


そして右のパンチ、左のパンチをジャンプで避ける。その時に地面に巨大な穴が空いてゴーレムが落ちる。

それに合わせて額に角を生やす。

(ニョキ)


眼前を小岩が飛び交って視界を塞ぐが俺には見える。

アイアンゴーレムの体で一番小さい部分の頭部を狙って叫ぶ。


「俺とのキャラ被りは許さない!

奥義!大地を揺らす力(グランドシェイク)!!」。

久々の必殺技だ。すなわち必ず殺す技。

ということはつまり。


地面の中のアイアンゴーレムの頭が無くなって胸の辺りまで削れている。

よし!おっけー!

ゴーレムは動かない。


「援護ありがとうございました!」

「いやいや、こっちこそだぞ!助けてくれてありがとな!」

おじさんが頭を下げる。


「どうせ戦う相手でしたから問題ないですよ。でも1人で倒せそうになかったですから、この展開に感謝してます」

「そう言ってくれると助かるぜぃ。えーっと…」

「大竹です。大竹 村丸」


「そうか。俺は柏木(かしわぎ) 流玄(げんりゅう)だよろしくな」

「なんであんなことになってたんですか?」


「実はな昨日、組んでたパーティーが解散したんだ。残ったのは俺だけ。俺はまだ探索者でいたかった。1人でも続けようと今日22階に来たんだが、なかなかゴーレムに会えなくてな、今日初戦闘がアイアンゴーレムだったんだ。今日はアイアンゴーレムと戦う予定なかったから逃げたんだが見つかっちまってな。こうなったんだ。ほんとにすまん!」


「そうだったんですか。剣折れてますけど」

「俺は後衛だったんだ。これはさっきギルドで買ってきたやつで実は初めて剣を使ったんだ」

失礼だけどアホかな。こんな階層で試すって。


「なるほど。眼帯してますけどそれってモンスターにやられたんですか?」

柏木さんは右目に眼帯をしている。

「いや、実は強力な力が宿っていてな、人前でうっかり力が発動しないように眼帯で塞いでんだ」

「へー」


「どんな能力か気になるか?

実はな右目で見たものを石化させられるんだ。すごいだろ」

聞いてもないのに答えてくれる。

「ほんとですか?それならめちゃくちゃ強いですけど」

ほんとかな?ちょっと胡散臭いな。


「見せてやろう!俺の力を!」

そういうと眼帯を外して自分の剣を前に出した。

すると徐々に剣の柄の部分から石化していく。

折れた先っぽまでいくと灰色の剣が出来上がった。


「そしてこれを。ふんっ!」

剣を地面に叩きつけた。

(ズシャン!)

「わ、割れた」

粉々に割れた。まるで高いところから石を落としたみたいに。


「さっきのアイアンゴーレムにこれ使えばよかったじゃないですか!?」

これを使えば防御力が格段に落ちる。

「いや、あの巨体にやるとなると時間がかかる。足元からやっても俺が先にやられる。って言うのもあるが実はテンパってて忘れてた。なにぶんここ何年も使ってなかったからな。これを使うとモンスターの素材が全部ダメになるからパーティーのみんなから止められてたんだ」

「は、ハハッ」

やっぱりこの人ちょっと抜けてるな。


「これも何かの縁。一緒に探索しないか?」

この流れで誘われるとは思わなかった。

けど。


「いいですよ。今回も1人じゃ厳しかったんで柏木さんがいてくれるならこの先も行けそうです」

「よっしゃあ!よろしくな大竹くん!!」

「はい」


こうして俺は偶然知り合ったイカついおじさん、柏木さんとパーティーを組むことになった。



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