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大竹村丸物語  作者: 骨皮 ガーリック
37/97

33話 完全復活

今回ほんのりグロテスクな表現があります。

苦手な方は後書きに内容のまとめを書きましたのでそちらを見ていただければと思います。


今回は高嶺先生視点です。

私は私はなんてことを。

生徒を守る立場なのに。逆に守られるなんて。急いで運ばないと。


着ているジャージはボロボロだ。

木の上でにいる鈴鹿さんと頭の無いオークの上に倒れてる大竹君を転送させる。

一瞬遅れて私も転送する。場所は部室。


「もしもし明詩高校に救急車をお願いします。2人意識がなく倒れてます。1人は片腕を失って全身からも血を出していて重症です。もう1人は外傷は見当たりませんが気を失ってます。お願いします」


急いで部室から出て保健室に向かう。こんな時は廊下を走ってもいいだろう。

保健室にマーキングして、また部室に飛ぶ。


そして保健室に転送後2人をベッドに寝かせる。

2人ともボロボロだ。

鈴鹿さんは防具がボロボロでインナーさえも破れてしまっている。


でも問題は大竹君だ。当然服はボロボロ右腕は斬り飛ばされて、肘から先が無い。それだけじゃなくて頭から血が流れて、左足は変な方向を向いている。


こんな状態でどうやって戦ってあのオークに勝てたの?

私が目を覚ました時は大竹君が、倒れてるオークの上に倒れる瞬間だった。


わからない。でも今はそんなことはどうでもいい。

変われるなら変わりたい。

ごめんなさい。ごめんなさい。

校庭からは野球部の声が聞こえる。

平日の夕方だから学校にいる生徒は多い。


「う、うあぁ」

(えっ!!)

「お、大竹君?」

「せ、先生。ここは?」

「ここは学校の保健室よ。すぐに救急車が来るからね。」

「朝姫は?」

「鈴鹿さんは隣で気を失ってるわ。大きな怪我はなさそうだけど」

「そっか。守れたんだ…良かった」

「私も助けられたわ、今はゆっくりしてなさい。傷口に響くわ」


あっ!2人は今どこに?

神保さんに電話する。

お願い出て。

「もしもし。今どこに?」

「先生!!今2人でダンジョンに向かってます。ギルドの人に教えないと」

「もう大丈夫よ、2人ともひとまず無事だから。2人は怪我はない?」

「えっ!?そうですか。良かったです。私たちは大丈夫ですよ。今どこですか?」

「良かった。学校の保健室よ、これから救急車で病院に向かうわ。2人は今日はもう家に戻ってもらってもいい?明日また話すから」

「はい。わかりました」

良かった。2人は大丈夫ね。



「大竹君その体勢で大丈夫?」

「はい。全身痛いんで、これでいいです」

「そっか。今言うことじゃ無いかもしれないけど、ありがとね。助けてくれて」

「いえ、男なんですから。女性を守るのは当然ですよ。今日男として一段階レベルアップした気がします」

「そっか、ありがと大竹君」

いつもの大竹君で安心した。


「気にしないでください。大きな怪我がなくてほんとに良かったです。

それとこれから救急車に運ばれるんですか?」

「ええ、もうすぐ来ると思うわ?」

「あ、あの先生に頼みたいことがあるんですけど」

「なに?なんでも言ってね。私にできることならなんでもするわ」

「あ、あの言いにくいんですけど」

大竹君は言葉を詰まらせる。


「どうしたの?らしくないわよ」

「ぱ、ぱんつを替えてもらいたいんです」

「えっ!」

びっくりして大きな声を出してしまう。


「ご、ごめんなさい。でもこれは、やらなきゃ俺の心が死にます。体はこの後の手術で無事でも心が死にます」

「なんで、ぱんつを?」

どうかしたのかな?


「も、漏らしちゃいました。最後のオークと戦ってる時に。

でもわざとじゃないんです。恐怖でとかじゃなくて、尿意も一切なかったのに急に出たんです。俺自身何が何だかわからないです。でもこの年でおもらしなんて知られたら正直生きていけませんよ。なのでお願いします。先生」

ま、まぁ、あの状況なら仕方ない所もあるけど、本人がそういうなら。


「えっと…そ、それくらいなら任せなさい。私と大竹君だけの秘密ね」

ここは大人の対応を。動揺を見せないように。

「せ、先生!ありがとうございます」

「それで替えのぱんつはあるの?」

それが問題よね。無いとどうしようもないけど。

保健室にあったりするかな?


「はい、カバンの中にあります」

あ、あるんだ。よかった。

「ちょ、ちょっと待ってね部室に取りに行ってくるから」

部室に飛んでカバンを持って保健室に戻った。

この間約2.5秒。これが私の本気よ。

(ゴソゴソ、ゴソゴソ)

あ、あったわ。

手に取ったぱんつを広げる。

どうしても目に入ってしまう大きく印刷されてるライオンの顔。後ろにはしっぽが印刷されてる。


「大竹君替えるわよ」

ボロボロのズボンを下ろして……

もう見ちゃったから仕方ないけど今履いてるのにはサメが大きく口を開いてる。予想するに後ろに印刷されてるのは尾ひれだろう。


「はい、お願いします」

ぱんつを下げる。

大事なことよ!恥ずかしがっちゃだめよ。変なことをしようとしてる訳じゃないのだから。それに生徒よ、生徒を助けるのも教師の務め。


なるべく見ないようにサッと下ろしてサッと抜いて、サッと違うぱんつを持って、サッと足を通してサッと腰まで上げる。

(ペチンッ!)


よ、よし完了。

「お、終わったわ」

「せ、先生!ありがとうございます。このご恩は一生忘れません!こんなに人に感謝したのは初めてです」

「ちょ、ちょっと泣かないでよ。大袈裟よ」

涙が流れるが手を動かせないから枕に涙が染みる。


「大袈裟じゃないです。俺の沽券に関わることなんですから」

「ま、まぁいいわ。ぱんつは私が洗っておくから安心していいわ」

私の提案に大竹君は驚く。


「そ、そんな!そこまで迷惑かけられないですよ。女性におもらしぱんつを洗わせるなんて、そんなの仏様でも許しませんよ。こんなことしたら一発で罰が当たりますよ。カバンに入れといてください」

「ダメよ、大竹君これから入院するのよ。何週間もしくは何ヶ月入院するかわからないのに漏らしたぱんつをカバンの中に放置は絶対ダメよ。大丈夫、誰にもバレないようにするから。ね。」

綺麗好きとかでは無いけど、カバンの中に放置はまずいよね。


「面目ないです。もう、なんて言ったらいいのか。感謝しきれませんよ」

「大丈夫、私は命を救われてるから。任せて!」

命に比べたらなんてことはない。

「はい」


それにしてもほとんどぱんつ濡れてないわね。勘違いしたのかな。


しかし、その後ぱんつを見たことに私は後悔した。


あーっ。見なければ良かった。見なければ気づかなかったのに。気づかずに洗濯して終わりだった。

でもこれはぱんつを替えておいて良かった。

見たのが私だけで良かった。


これを知らないってことはまさか今日、大竹君は開花したんだ。

これ以上考えるのはやめよう。顔が熱くなってきた。

(ピーポーピーポーピーポーピ!)

救急車が来た。

あっ、ズボン戻さなきゃ。良し。

ぱんつをポケットにしまってから正門に向かう。



私は正門で説明して保健室にいる2人を運んでもらった。

私も同乗して病院に向かう。

あっ!?2人の家族に連絡しなくちゃ。

親御さんにはとにかく謝らないと。


病院に運ばれて大竹君の手術が始まる。

御家族が到着して状況を説明する。

状況をスっと受けえれてくれて、手術を待つことになった。


どうしてそんなに落ち着けているのだろう。

鈴鹿さんは軽い脳震盪で気を失って今は寝ていると報告された。

良かった。


時刻は21時。

未だ手術は終わらない。

既に大竹君のお姉さんも来ていた。


22時。

手術は終わった。

どうにか腕はくっついたがリハビリが必要だと。頭を少し縫って、足は綺麗に折れていたため、最低2ヶ月ばギプスを付けると。

それと暫くは点滴が必要だと。

重症だが命は助かった。





次の日病院に行くと大竹君はすっかり治ってた。大竹君のお母様に話を聞くと、今朝、おじいさんがポーションを受付に預けて、大竹君に渡して欲しいと頼まれたそうだ。


名前を聞くと崩城(ほうじょう) 時満(ときみつ)と言ったそうだ。

それにしても良かった。後遺症もなく、完全回復だそうだ。


念の為今日はこのまま入院となった。

大怪我な為、精神の方も検査することになったが、異常はなかったと。


その後、目が覚めた大竹君と親御さんと話して来週から学校に復帰することになった。

鈴鹿さんも問題なく念の為数日様子を見て大丈夫そうなら来週から復帰ということになった。




翌週。

放課後の部室で大竹君と会う。

「はい。綺麗にしといたからもう大丈夫よ」

「ありがとうございます。いやー、これがバレてたら心の方はダメだったかもしれないですね」


「こらっ、ふざけないの」

「ふざけてないですよ。腕を失ったくらいじゃ俺の心は壊れないですよ。あのぱんつをみんなに見られてたと思うと夜も眠れません」

「大竹君。ちょっと耳を貸して」

「はい、なんですか?」


大事なことだからこれは伝えないといけない。

大人としての責任を。

「こしょこしょこしょ」

「ま…ま…マジ…です…か?」

「これからは気をつけてね」


「はい、なるほど。ついに俺は大人の階段を登ったんですね。これで俺も大人の仲間入りだ!!」

「ふふっ」

「なんですか先生。笑うところじゃないですよ」

「ごめんね。あんなにボロボロになるまで戦ってた人がこんなことで喜ぶのが可笑しくて」


「ふんっ、先生にはわからないですよ。この年頃の人間はとにかく大人ぶりたいんですよ。これでも俺、悩んでたんですよ。周りとの違いに。俺はやっぱり特別なのかなって」

「そうだよね、ごめんね」

俯く大竹君をちょっと可愛いなと思った…のは一瞬だった。


「わかればいいんですよ。

あ〜、早くダンジョン行きたいなぁ」


「えっ!あんな思いしたのに怖くないの?」

「えっ!怖い?あんなに楽しいこと他にないじゃないですか。俺、今まであんなに興奮したことないんですから。あぁ、あのオークともう1回戦いたいな」

大竹君の目は、もう私を見てなかった。


きっと思い出しているんだろう。あの時の戦いを。

異常なまでのダンジョンへの執着、狂気を孕んだその思考回路。


ああ、今すぐここから離れたい。私の考えは正常だと思う。

この歪んだ笑顔を前に私はきっと正常では居られない。生存本能からか大竹君と物理的に距離を取るために1歩下がる。


この距離は私の距離だ。この距離なら例え襲われたとしても転送が間に合う。

そんなことをする人間じゃないとわかっていても、私の中の本能が拒絶する。


みんなのことを思う優しい人間だと知っている。意識が戻った時、すぐに鈴鹿さんの安否を確認したことを知っている。


このどちらか一方なら納得できるが、この二面生が共存しているのがたまらなく怖い。

どちらかは演じているんじゃないかと思うほどの温度差。


全身から汗が吹き出る。

上手く笑えてるのかな。顔の筋肉が動かない。

た、たすけて。

「せ〜んぱ〜い!!」

時雨君が入ってきた。


「あ、先生もこんにちは」

「こ、こんにちは」

「どうしたんですか?先生」

「なんでもないわ」

「そうですか。先輩もう大丈夫なんですね」

「おうよ!師匠のおかげで完全回復じゃい!」

私達に背中を向けて腕を曲げる。そして顔だけ振り返る。

ボディービルダーの人が広背筋を見せる時のポーズだ。

筋肉は全くないし、そもそも制服着てるし。

はぁ、いつもの優しい大竹君の表情に戻った。


「やったー!先輩のおかげで僕達は助かったんですよ。でもすぐに転送してこなかった先輩たちが心配でしたよー。ほんとに良かったです」

「いや〜俺の直感がヤバいって言っててさ。その直感に従ったまでよ。我ながら自分のシックスセンスが恐ろしいね」

「さっすが先輩!元気ですね」

時雨君が大竹君の腕に飛びつく。

よく見る光景だ。

男子ってみんなこんな感じなのかな。それともこの2人が特別なのかな。時雨君は女子の制服を着てるから頭が混乱する時がある。


「おうよ!だからって腕に抱きつくなよ?」

「いいじゃないですか!」

「仕方なあなぁ、許す!」

「わーい!」

大竹君はいつも時雨君に甘い。

この笑顔が偽りだとは思えない。


その後鈴鹿さん達も集まって来た。

高嶺先生が目を覚まして2人を救出。

病院で手術後、おじいさん(師匠)がポーションをくれて全回復。

村丸はすぐにまたダンジョンに行きたくなる。

村丸に対する時雨のボディータッチがいつも激しい。


高嶺先生は村丸の狂気と優しさの二面生に怯える。

↑は覚えなくても大丈夫です。


こんな感じの話しですね。


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