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大竹村丸物語  作者: 骨皮 ガーリック
27/97

閑話 先輩達の休日

菊地先輩視点です。

2028年

3月25日土曜日。

今日から春休みだ。あれから20階と21階を行ったり来たりしている。


アタシ達は大竹君の様子を見てまだ先に進んでいない。

今日は鉄と2人でダンジョンに行く約束をしている。

いつからか覚えてないけど、もう長い間部活が無い日は2人で行っている。

午後からギルドで待ち合わせだ。



ギルドに着くと既にロビーに鉄がいた。

「お待たせー、待った?」

「待ってないよ」

「それじゃあ着替えてからまたここに集合ね」

「おっけー」



受付でいつも預けている装備を受け取って、更衣室に入る。

中では4、5人が着替えていた。腹筋バリバリのお姉さんに、華奢なお姉さん、金髪で両腕に刺青を入れてるお姉さんと統一感は無い。


「あら、もしかして『怪力一閃』のお嬢さんかしら?」

腹筋バリバリのお姉さんに声をかけられる。

『怪力一閃』最近こう呼ばれることが増えてきた。誰が考えたのか女子高生に付ける異名じゃないよね。有名な探索者には異名が付くことがある。


「一応そう呼ばれてます。自分では名乗ったことないのでわかりませんけど多分アタシですね」

「そうなのね、噂は聞いてるわ。すごく強いって、今度戦ってる所見てみたいわ」

「そんなに強くないですよ。今度予定が合えば一緒に行きますか?」


「あら嬉しい。連絡先交換してもいいかしら」

「いいですよ。はい」

「ありがと。それじゃあ頑張ってね」

「はい」


アタシがなんで簡単に連絡先を交換したかって?アタシは筋肉が好きだから。でも、女性限定だけどね。女性の筋肉が好きなの。


身近な人だと暗舞高校の1年の平 佳奈ちゃん。

あの子は凄かった。長身で華奢に見えたけどお風呂の時に見たら腹筋が綺麗に割れてて、思わず見惚れちゃった。


べ、別に下心があってお姉さんと連絡先を交換した訳じゃないよ。決して。


鎧を着てロビーに行く。

ちなみに『怪力一閃』はアタシの戦い方からつけられた異名だ。



「それじゃあ行こっか」

「うん」

ダン証をかざして黒渦の中に入る。

今回は24階の攻略が目的だ。24階は一面湿地帯で地面はぬかるんでいる。そこにはリザードマンが生息している。


リザードマンは緑色の鱗を持つ、二足歩行のトカゲと言われている。

大きさはおよそ180cmでその鱗はとにかく硬く、ハンマーで叩いても傷が付かないと言われていて防具の素材にも使われている。


どのリザードマンも槍を持っていて、槍裁きは一級品だ。近寄ることすら困難になる。

既に何回かここには来ているから対応は慣れている。


この階のキーモンスターであるマッドリザードマンは鱗が青色で全ての能力がリザードマンを上回っている。

そして1番厄介なのは土魔法で、周囲の土を操ることができる。

予備動作無しのその攻撃は数々の探索者を苦しめてきた。



リザードマンに遭遇するまで鉄と話をして時間を潰す。

「そういえばスカウト来たんでしょ?」

「うん。でも全部断ってるよ」

鉄にはいくつかの企業からスカウトが来てる。


「そうなんだ、どうして?」

「んー、まだ先のことだから。ゆっくり考えたいんだ」

「そっか。アタシも進路どうしようかな。ダンジョン関係に進もうかなぁ」


「僕はダンジョン関係に決めてる。その中のどれにするかは迷ってるけど」

「うーん」

「まぁ、とりあえず大学行って先延ばしにしてもいいと思うよ。ダンジョンだけでも現状稼げてるから」

「そうなんだよなぁ」

悩ましいところだ。



「村丸のことだけどさ」

「大竹君?」

まぁ、言いたいことはわかる。

「最近悩んでるなって」

「そうだよね」


「何か力になれることは無いかな?って最近思うんだよね。先輩として」

「その気持ちわかるよ。でもアタシ達とは違うからね大竹君」

「うん。能力がね」

「アタシ達は能力で身体能力が上がるから案外サクサクとここまでこれたけど、大竹君はそういうの全くないからね」


「そうなんだよ。それなのにパーティーとはいえ半年で21階のモンスターと戦えるようになるなんて、正直異常だよ」

「ね。暗舞高校の坂上君(きよまろ)は能力が特殊だからあそこまで早く階を進めてるのも納得だけど、大竹君は言っちゃえばほとんど無能力だからね。棍棒を出せるだけだから、普通の人が武器を持って戦ってるのと大差ないよ。身体能力の成長はあるけど、それはみんな同じだし」


「それに能力の成長も早いんだ。半年で既に2回もなんて、、そういう成長しやすい能力かもしれないけど。僕達とは何か違うんだ」

「そうだよね。アタシが知ってるだけでも2回、死ぬかもしれない経験をしたのに、その後特に何も無かったようにケロッとしてるし」


「あぁ、でも思うんだ。その心の強さ、折れない心が能力の成長の早さの秘密なんじゃないかって。それと推測だけどその心の強さ、いや鈍感さでいつか大竹君自身が危険な目にあうんじゃないかって思うんだよね」

「わかる。あの命の重さを理解してないような感じが少し怖いんだよね」


「だから、見守ろうかなって思うんだ。それが僕にできることだと思うんだ。もちろん何か相談してきたら全力で相談に乗るけど」

「そうだね。それがいいと思う。それに気づいたらまた強くなってる可能性あるしね」

「あぁ、あのトゲ付き棍棒の威力初めて見た時はびっくりしたな。オークの肉をえぐってて」

「来たね」



目の前には緑の鱗を纏ったリザードマン。

その手には槍がある。

「ハァッ!」

アタシが飛び出し大剣を振るう。


リザードマンの槍の防御を弾き距離を詰める。

上段からの振り下ろしは、リザードマンの右腕をいとも容易く断ち斬る。

上断(じょうだん)!!」

上から敵の体を斬る技の名前。

ネーミングセンスが無いアタシが知恵を振り絞って考えた名前だ。


「グワァッ!」

リザードマンが叫ぶが構わずに攻撃を続ける。

鉄が背後に周り背中を斬り付ける。

「グワッ」


アタシは身を屈めて横回転をして足を斬り付ける。

横断(おんだん)!」

横から斬る技の名前だ。

「グガアッ!」


とどめに下から斬り上げる。

下断(げだん)!」

もちろん下から斬る技の名前だ。


魔石を取ってカバンにしまう。

「もう余裕だね」

「ああ。もうマッドリザードマンにも通用するだろう」


それから10体のリザードマンを倒した。


「見つけたね、マッドリザードマン」

「準備はいいか?」

「もちろん!」



鉄が距離を取って、アタシは近づく。

が、不意に地面に足を取られる。

「くっ」

マッドリザードマンの土魔法で足場が悪い。


槍の突きを大剣で弾き、その勢いを利用して後ろに跳ぶ。1歩で距離を詰めて大剣を振るう。

槍に弾かれるが手を休めない。

(ていっやぁ、そりゃ!)


土魔法を使う隙を与えない。連撃を叩き込む。

鉄の背後からの攻撃に反応して防御する。

「キンッ!」

背中に回ろうとしたが足を土の中で固められて動けなかった。

(ぐっ)


大剣で地面を突いて逃れる。宙に土玉が浮かびこっちに放たれる。大剣で斬って再度仕掛ける。

(ズチィッ)


鉄が空中から仕掛ける。

鉄のもうひとつの能力は空間を蹴ることができる。これを使って空中を高速移動して四方八方から攻撃を仕掛ける。


その速さはマッドリザードマンを置いていき次第に体の斬り傷が増えていく。

そこにアタシの最大威力、

三上横下(さんじょおうげ)!」

上、横、下の三連撃でマッドリザードマンの体を三枚おろしにした。


「よーし!24階クリア!」

「帰ろうか」


アタシ達は25階に挑む。

まだまだアタシ達の限界は先だよ!



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