22話 新武器
1月4日。
今日は親友の家に来ている。冬休みの課題を京一と一緒にやるからだ。
「お邪魔しまーす」
「あら、村丸くんいらっしゃい久しぶりね」
「こんにちは」
京一ママが出迎えてくれた。小学校からの付き合いだから京一ママとも仲が良い。
最近は京一と遊ぶことが減ったから、久しぶりに会った。
「お昼食べてく?」
「はい、お願いします」
「まかせてー!村丸くんがいるから気合い入っちゃうよ!」
2階に上がって京一の部屋に入る。
「入るよー」
「うん」
中には小さいテーブルの上に教科書とプリントが置いてあった。
「今日はよろしくお願いします」
部屋の中に1歩入って、90度のお辞儀をする
「ふむ、礼儀正しいことはいいことだ。座りたまえ」
許可を貰ってクッションに座る。
「それで、どんな課題が出てるの?」
出された課題を京一に教えて貰いながら進める。
「なんか前より勉強出来なくなってない?」
「それがですね。最近は専らダンジョンに勤しんでおりまして」
「変な言葉遣いは覚えて一般常識は覚えなくていいと?」
「これも全て京一殿から勧められたアニメで得た知識でございます」
「もう、そういうのいいから。ちゃんとしないとほんとに進級出来なくなるよ?」
「最近授業聞いてないから」
「はぁ、暗記科目は後でいいからとりあえず数学教えるよ」
「お願いします」
「お昼できたよー」
気づけばお昼だった。真剣にやりすぎて時間を気にしてなかった。
「それじゃ、一旦お昼休憩だね」
「おう」
リビングに行くと京一ママがエプロンを着けて料理を運んでた。お昼ご飯はちらし寿司だった。
「「「いただきまーす」」」
ふむ、美味しい。
「「「ご馳走様でした」」」
「さて、続きをしようか」
「おう」
それから4時間とにかく手を動かして課題を終わらして、内容を頭に詰め込んだ。
「これなら次のテストいけるな」
「テスト前にそのやる気を出せればいいのに」
「無理だよ。テストの時期は何故かやりたいことが多いからね」
「知ってる」
「それじゃあ今日はありがと、お邪魔しました」
「じゃあね」
「いつでも遊びに来てねー!」
京一と京一ママに見送られる。
それからの数日はダンジョンに行ってスケルトンを狩りまくった。
1月11日火曜日。
今日から学校が始まる。やっと部活に行ける。年始から1回も部活がなかった。
毎年年始は部活をやってないらしい。なんでだろう。
ついに21階のオークと戦える。俺のNew棍棒が火を噴くぜ。
朝教室に入って隣の恋咲君と後ろの岡島さんに挨拶をする。
何回か席替えをしているが、この2人は毎回俺の前後左右のどこかになる。奇妙な偶然だぜ。
席替えは毎回くじ引きで行われる。
箱の中に手を突っ込んで紙を取る形式だが、俺は必ず中指と薬指で挟んで取るようにしてる。
これが俺流の験担ぎだ。
だが今日は部活がない日だ。1人でダンジョンに行く。
次の日の放課後部室に集まる。
「あけましておめでとう!」
「「「「あけましておめでとう((ございます))」」」」
「「今年もよろしくお願いします」」
「早速ダンジョン行こうか。今日は21階だね」
俺たちは今21階に来ている。
「おー!天気いいですね」
「この階から景色を楽しめるようになってるんだよ。何故か分からないけど」
雲ひとつない空がどこまでも続き、視界いっぱいに広がる草原。風が気持ちいい。風に吹かれて草木が揺れる。
「すごいよね!」
気の高まりを感じる。
「よし、行こうか。オークは基本ホブゴブリンの上位互換だと思っていいよ。ただし武器は剣を使うから気をつけてね」
「了解です」
「先にみんなに言っておきたいことがあるんですけど、棍棒が強くなりました」
「おー、良かったじゃん」 「見せて!」
「じゃじゃん!なんと鉄製のトゲが追加しました。これで威力アップです」
「おー、殺傷能力上がったね!」 「痛そー」
さて、俺のパワーはオークに通用するかな?
ちょっと待って、相変わらず高嶺先生ジャージなんだけど。
「行くよ」 「「はい!」」
目の前にはオークが立っている。2m弱で横幅もある。プロレスラーみたいな体格だな。
特徴的なのが豚の鼻に口から飛び出してる牙だ。
菊池先輩がオークの攻撃を受け流す。後から俺も続き攻撃を仕掛ける。
横からの攻撃に反応して剣で防がれる。
(ガキッ)
逆方向から菊地先輩の攻撃をくらう。
(ズシュッ)
お腹を斬られて血が吹き出す。それでもオークは止まらない。オークの剣を受け流そうとした時。
(ガギンッ!)
俺の棍棒のトゲに剣が引っかかって受け流せなかった。
「やべっ!」
剣の勢いで持ってかれて棍棒が地面に叩きつけられた。
前の棍棒は凸凹が緩やかだったから受け流せてたが、今はトゲになって受け流すことが出来なくなった。気づかなかった!やっちまったぜ。
すぐに新しい棍棒を出す。武器を手放した俺を放って菊地先輩とやり合ってる後ろからフルスイングをかます。
(ズリィッ!)
手には今までと違う感触が伝わる。肉をえぐりとるような、重々しい感触だった。
オークの脇腹の肉がえぐれて肉食獣に食いちぎられたような痕ができていた。
痛みを感じたのか一瞬怯む。
「グアーーーー!!」
オークが咆哮をあげた。
菊地先輩の攻撃をなんとか凌ぐが2対1はきついのだろう。だんだん押されていく。
最後には菊地先輩の大剣がオークの腕を斬った。その後首を斬られて死んだ。
(ガキンッ!ズギュッ、サシュッ、)
強いな。結局俺の攻撃はほとんど防がれた。
ただ、パワーは通用したことがわかって良かった。
魔石と剣をカバンにしまう。
「強敵でした」
「そうだね」
それからも5体倒して奥に進む。
オークの攻撃はしっかり見えて避けれるが、受け流せられないのが辛い。まぁ致し方ないか。
…いや、叩き落とせればこっちのチャンスにもなるのか。
パワーで負けてなければできる可能性がある。
あとは角度とタイミングが。
よし、試してみるか。
「来たよ」
タイミングよく次のオークが来た。
これまで通り菊地先輩と攻める。するとオークの上段からの攻撃が来た。よく見てタイミングを計って…ここ!!
(ヂギンッ!!)
くそ、持ってかれた。やっぱり難しいな。どうしても振り下ろしの勢いに俺の棍棒が持ってかれる。
く〜、失敗すると手がジンジンするぜ。
下から振り上げるが止められる。
(デュキッ!)
ダメか!一旦棍棒を離してサイドステップからまだ詰める。棍棒を出して背中側からおしりをえぐる。続けて足首を叩き、膝が折れる。
(ズリッ!ダギッ!)
その後の菊地先輩の攻撃を受けれず、首を斬られた。
(キュッ!ジュシャッ)
うーん、まぁ自己評価ではいい動きができてると思う。剣を叩き落とすのはおいおいできるようになればいいか。




