18話 クリスマス
あれから18階のゾンビと19階のトレントも倒した。
今日は12月24日の金曜日。明日から冬休みが始まる。冬休みにはまた暗舞高校との合同合宿がある。ただ今回は26日〜28日までの2泊3日になっている。
今日の部活は休みだ。
そして今日は菊地先輩の家でやるクリスマスパーティーに誘われた。ダンジョン部のメンバーでやるようだ。
今日は終業式で学校が午前中に終わった。帰りに石川先輩とファミレスに寄ってお昼を済ました。
辻堂駅に17時に集合することになり、それまでの間に近くのショッピングモールでプレゼントを買った。なにやらみんなでプレゼント交換をすることになった。
センスが問われるこのイベント、こういう時のプレゼントは相場が決まっている。俺が間違えることは無い。万が一にもな。
「今日夜ご飯いらないからね」
「はーい、迷惑かけないようにね。あとこれ持っていきなよ」
と、ラスクのお菓子を紙袋に入れて渡された。
これは俺が大好きなやつだ。ホワイトチョコに普通のチョコそして砂糖をふんだんに纏ったラスクセット。
チョコラスクはちょこっと重いがこれがないと永遠に食べちゃうから最高のバランスなんだ。
「行ってきまーす」
「行ってらっしゃい」
辻堂駅は歩いて10分くらいだ。
外はもう暗く吐く息が白いのがわかる。でも俺には親友から貰ったスカーフと手袋があるから問題ない。
駅には菊地先輩と高嶺先生がいた。
「こんばんは、先生もいたんですね」
「こんばんは、そ、そうね。たまたま空いてたから」
ん?いつもの先生らしくないな。
「凄いオシャレですね。俺もそろそろファッションとか勉強しようかな」
「あら、ありがと。そうね勉強して損することはないからね」
このスカーフと手袋に合うファッションはどんなのかな。
「あ!来たね」
「お待たせしました!」
「待ってないよー」
鈴鹿も合流した。
「お疲れ様。僕が最後かな」
石川先輩も合流。
「それじゃあ行こう!」
駅から出ると黒いリムジンが1台止まっていた。ここら辺では初めて見たな。
「じゃあテキトーに乗って」
おっと、まさかの菊地先輩の車!
「失礼しまーす」
「お願いします」
全員中に入ると動き出す。
「5分くらいで着くから」
「先輩お金持ちだったんですね」
「まぁ、親が社長だからね」
「へー継ぐんですか?」
「アタシは継がないよ。お姉ちゃんが継ぐから」
「お姉さんいたんですね」
「今大学3年だよ」
「先輩みたいなタイプですかね」
金髪ギャルかな。
「それにしてもよくダンジョン許してくれましたね」
「お父さんが全身鎧なら許すって言ってね。それじゃあこれでいいでしょってフルプレートを着てお父さんに見せたの。お父さんびっくりしてたよ。こんな重い装備じゃ動けないと思って言ったと思うけど、アタシには関係ないからね。怪力だから」
なんてことない話しをしてたら着いたようだ。
うん。でかい。ていうか何回もここの家の前通ったことあるわ。
門を開けて中に入ると左右に緑の芝が広がっていて奥には庭園がある。西洋風の建物だけど庭は和風だ。
ガチャ。
「いらっしゃーい!」
中から美人な金髪お姉さんが出てきた。なるほど姉妹っぽさを感じる。
「お母さん恥ずかしいから静かにしてて」
はい、ベタなやつでした。お姉さんかと思ったら母親。
「「「「お邪魔します」」」」
「ようこそ!」
お母様に歓迎されて部屋に入る。
?ここはパーティー会場ですか?
いいえ、リビングです。はい。
全ての家具がでかい。
「それじゃあご飯並べとくから手洗いしてきてね」
でかい、でかい、でかい。
席に座るとどんどんと料理が並べられていく。
チキンにサラダ、お寿司に海鮮、焼き鳥シュウマイ唐揚げてんこ盛り。
「「「「「いただきまーす」」」」」
「はい、召し上がれ」
うまい、うまい、うまーーい。ファンタスティック。
食後のデザートにはいちごのケーキが出てきた。でかーーーい。
ケーキも食べ終わりゆったりとした時間を過ごした。
するとお母様が。
「それでは!これよりトランプ大会をしまーす!優勝者にはなんと大容量カバンをプレゼント!こちらあの有名なユーツール社が開発した100kgまでならどんな物でも入る重さを感じないカバンです!」
「「うそ!!」」
「そんな高価な物」
お母様の発表にみんなが驚いた。
ユーツール社は俺のスカーフと手袋も開発したしたところだ。つまり錬金術で造った物だ。
ちなみに収納袋は基本下層にしかないアイテムだ。
人の手では再現出来ないと言われていて、ダンジョン産の物しかない。
だからとにかく高価だ。普通の人には買えない。
しかもユーツール社はそれを造ったようだ。
「この前招待されたパーティーで貰ったの。でも私たちは使わなしい、だからダンジョン行くなら便利でしょ?」
すごいことになった。
「それじゃあ始めまーす」
今回はババ抜き、ポーカー、大富豪をやることになった。
最初の2つが遊びで大富豪が本番だ。
負けられない戦いが今始まった。
ババ抜きはとにかく運勝負だ。結果は3位。
ポーカーはよくわからず4位で終わった。
そして始まった大富豪。かなり良い手札で始まった。早くも石川先輩の手札が少なくなる。
そこから俺の連鎖が起きてそのまま1番に抜けた。
「よっしゃー!」
思わず両手をあげてしまった。
「おめでとーう」
俺は昔から大富豪だけは何故か強かった。特に頭を使ってるわけじゃないが勝てる。
パーティーも終盤になりいよいよ最後のイベント、プレゼント交換だ。
それぞれが用意したプレゼントを音楽が鳴っている間に回し続けて音楽が止まった時手元にある物を貰うことができる。
「それじゃあスタート!」
「ブッツカッツカつープッカ」
音楽ボイパかよ!!
「ツーチッツカドゥンドッパシュウルルスーパッズチャ。」
「はい!ストーップ!」
「杏奈ちゃんから順に開けましょ」
お母様の声掛けで菊地先輩から開けることになった。
「開けまーす」
リボンを解き蓋を持ち上げると中には長方体の黒い物があった。
「なんか重いと思ったらこれ砥石?」
「おめでとう!僕のプレゼントだ」
石川先輩のプレゼントは菊地先輩に渡った。
「これ使うかな?」
「探索者なら使うだろ?ダンジョン部なら欲しい逸品じゃないか?」
「うーん。今度使ってみよ!ありがと!」
砥石か、なるほど。センスあるな石川先輩。ダンジョン部ならではでユーモアがある。
「じゃあ次私!わーハンドクリーム?」
鈴鹿がプレゼントを開ける。
「そう。俺のやつだよ。石川先輩のせいで俺のプレゼントが霞んじゃいましたよ」
ちくしょー!逆にミスったか。無難すぎる!
「ありがと!大事に使うね」
「まぁ、豪快に使っちゃってよ。次は俺ですね」
結構大きい箱だが重さはそうでもない。
蓋を開けると中には象のぬいぐるみだった。
抱きしめられるくらいでかい。
「おーう、まじか」
「私なんだけど嫌だった?」
鈴鹿からのプレゼントだ。
「いや、すごく嬉しい。象は俺にとってソウルフレンドなんだ。長い時間を一緒に過ごして絆ができたんだ。楽しい時間も辛い時間もな。ありがとう鈴鹿」
「やった!」
「次は僕だね。よいしょ!おー?香水?」
「私のね。私のお気に入りを広めたくてね。軽いから普段つけてても気にならないと思うけど」
「ありがとうございます。これを機につけてみます」
「それじゃあ最後は私ね。菊地さんのかしらね。じゃん!ハンカチ可愛い!」
「よかったー男子に行かなくて。先生だとギャップがありますね。」
「ありがとね菊地さん」
「あれ、杏奈の友達?」
「うん、部活のみんなだよお姉ちゃん」
リビングの扉を開けて入ってきた女性の正体はお姉様だった。
しかも黒髪ロングで清楚系。菊地先輩とは逆だな。
まぁ、菊地先輩も清楚系だけど。
「初めまして、姉の風花です。妹がお世話になってます」
「いえいえ、こちらこそ」
なんてこともあり。
「それじゃあ今日はお開きにしますか。26日は駅に8時集合で遅れないように」
「「「「お邪魔しました!!」」」」
帰りも駅まで送ってくれた。鈴鹿はそのまま家まで送って貰うことになった。少し遠いしもう暗いからな。
「ただいまー」
「おかえりー」
はぁとんでもない物を貰ってしまった。とんでもないカバンにソウルフレンドの象のぬいぐるみ、ありがとう。




