17話 順調
17階は夜の公園のようにしんとした空間が広がっていた。ポツポツと木が生えている。
「ここにはスケルトンがいるから、まぁさっきのゴブリンの時みたいな感じで大丈夫だよ。ハイスケルトンがキーモンスターで一回り大きい。
なんと言ってもスケルトンは打撃武器は効かないから、他にもアンデット系は魔石を壊して倒すのが基本だね」
「了解です」
この階は視界が良好だからさっきとはフォーメーションが変わる。前に俺と菊地先輩、後ろに石川先輩と鈴鹿が並んでる。
スケルトンはほとんどが単体行動だった。
目の前に1体のスケルトンが立っている。
身長は俺より高く片手に剣を持っている。
「アタシがスケルトンの攻撃を防ぐから、その隙をついて攻撃してみて」
「了解です」
カタカタカタッ。
人と遜色ない滑らかな動きでこっちに走ってくる。そして上段から剣を振り下ろす。それに対して菊地先輩が大剣で防ぐ。
ガン!
横から回り込んで棍棒を出す。
(ふんが!)
俺のフルスイングでスケルトンの胴体を飛ばした。カタカタと音を立てながらゆっくりと胴体に足と頭が集まっていく。胴体を掴んで胸の辺りにある魔石を掴んで叩き潰す。
それと同時にスケルトンの体は動かなくなった。
「この階も大丈夫そうですね」
「そうだね。ちゃちゃっと終わらせよう」
念の為、試しにスケルトンが持っていた剣を地面においた棍棒に叩きつけてみた。
すると少し棍棒に切り込みが入った。
おーう、、剣を受け止めるのはやめておこう。受け流しも危ないから基本は避けた方がいいな。もしもの時は棍棒を犠牲にすればいいか。
ちなみに菊地先輩の大剣を棍棒が耐えることは無く、スパッと逝ってしまった。きゃー怖い。
そう俺の棍棒は強度が心もとない。ゾウに踏まれれば砕けるし、大剣でスパッと斬られる。心配事が無くならないな。
20体くらい倒すとハイスケルトンと思わしき骨影を見つけた。他のスケルトンより一回り大きく骨が太く大剣を持っている。
菊地先輩が攻撃を止めてる間に同じように棍棒を叩き込む。(どぅえりゃ!)
そして魔石を取り叩き潰す。
「よーし!順調に終わったね。今日はここで終わりにしよっか。時間もいい感じだしね」
「了解です」
なんかダンジョン内で「了解です」ばっかり言ってるな。まぁいいか。
みんなで戻りギルドの更衣室で着替える。
「石川先輩動き速すぎですよ。今の俺だと反応出来ないんですけど」
「それが僕の能力だから。まだまだ追いつかれないよ」
「でも申し訳ないですね。今日石川先輩も鈴鹿もほとんど見てるだけになっちゃったじゃないですか」
「いいんだよ。部活だから!みんなでやるのが楽しくて部活入ってるんだから。それに大竹が強くなるのを見てるのも楽しいから。後輩の成長を見守るのも先輩の役目だよ。大竹も後輩ができたらわかるよ」
「なら良かったです。それにしても結構汗かいちゃいましたよ。あんまり動いてんなかったんですけどね」
「モンスターも生き物だからね。生き物を殺すと体だけじゃなくて心も疲れることもあるから」
「うーん、あんまり感じてる気はしないですけど」
「表面上はそうでも心の奥ではそうじゃないかもしれないから。心は繊細だからそこも気をつけないとな。モンスターの殺しすぎで精神が不安定になって辞める人もいるんだ。そこも才能だ」
「うへー怖いですね」
「ちなみに去年杏奈はオオカミを殺すのに戸惑ってた。なぜなら家で犬を飼ってたからだ。そういう特定のモンスターを殺せない人もいる」
「俺はそういうの無いですね。どんな生き物も平等に扱いますからね」
「ははっ、頼もしいよ。それじゃあ着替え終わったしロビーに行こうか」
「はい」
ギルドの中には休憩用スペースがある。ソファとテーブルが並んでいてここをみんなロビーと呼ぶ。
「はい、ジュース飲む?」
ソファに座ってると石川先輩がオレンジジュースを買ってくれた。
「いただきます」
やっぱりオレンジジュースこそ至高!
ぐびぐび。
10分後女子組が来た。
「それじゃあ今日は解散です」
「「「「はい」」」」
自転車で家に帰る。
「ただいまー」
「おかえり」
母から返事がくる。
廊下に荷物を置いて手洗いうがいを済ます。そしてお風呂に入った後、廊下に置いた荷物を部屋に置く。それからリビングで夜ご飯ができるまでゆっくりする。
これが俺の帰宅後ルーティンだ。
俺の部屋は聖域だ。外から帰ってきて汚れてる状態で聖域に入ることはしない。聖域を汚すことは許されない。
リビングでテレビを見て時間をつぶす。
「ママー今日の夜ご飯は?」
「知らないよ!名前なんてないから。お肉と野菜を炒めたやつとアジフライ」
「了解」
録り溜めてたアニメを観なくては。えーと、今季は「8年前から君を見てた」と「再キック」がやばいんだっけ。ミステリーとスポ根物だ。
俺はスポ根が大好物だ。サッカー、野球、バスケ、バレー、テニス、カバディ、吹奏楽部なんでもござれだ。
なかなか面白かったぜ。
「ご飯できたよー」
「「「はーい」」」
父と姉も帰ってきていた。
ご飯も食べ終わり聖域に戻る。ベットに横になって気づいたら寝てた。
変な夢を見た。
夢の中の俺は何年間も鉄の檻に閉じ込めらていた。だけどその環境に不満はなかった。
何がきっかけかわからないが鉄の檻がボロボロと崩れて俺は自由になった。
そこからの記憶は曖昧だが確かに覚えてる場面がある。
辺り一面に人の死体が転がっていて、俺の左手には巨大な赤黒い棍棒が握られていた。
そしてその場に立っていたのは俺1人だったことだ。
夢から厨二を摂取できるのはいいことだ。今日はいいことがありそう。
1日2話投稿したいのに後数十分早ければ…
ちくしょー!!




