14話 ゾウは強いぞ
「気をつけてね、今までより数段一撃が重いから危ないと思ったらすぐ手を貸すからね」
「了解です。やれるだけやってみますよ」
俺は今巨大なゾウと対面している。
ふー、まず正面からじゃダメだろ、鼻のリーチが長すぎる。俺の2倍以上だからな。
てことで、後ろから攻めるわけだけども、俺が編み出した目潰しを使えないのが痛いな。
投げたら当たるかもしれないけど、威力は無い。んー、とりあえず足を狙おうか。
ゾウと距離を取って後ろに回り込む。そっと近づき後ろから棍棒でどーーーん!
(いってーー!!)
知ってたけどビクともしないよ
(まずい!気付かれた)
ゾウがこっちを向き鼻を振りかぶる。
(せいやー!)
ブンッ!!
(っぶね!)
ゾウが繰り出す鼻の横薙ぎを間一髪、ゾウの体の下に飛び込んで回避。
(音えぐー、ムチかよ!)
バイソンなんか比じゃないな。
当たったら、間違いなくホームランだよ。
俺もいつかあれくらいの威力を出したいぜ。
おしりの方から抜け出し、距離を取る。
気づいたことがある、ゾウの顎はそこまで高くない。十分届く距離だった。
前からは無理でも後ろから体の下に入って、そこから顎にぶちかませばどうにかなるんじゃないかと。
人間の顎を殴ると脳がどうのこうのっていうのを聞いたことがある。
ゾウも一緒かどうかわからないがやってみよう。一筋の光が見えた。
さっきのゾウは既に原田部長に倒してもらってる。俺に敵対してたから、長考する時間なんてない。
改めてゾウの後ろに回り込む。
忍び足で潜り込み
顎を下から棍棒で、バチコーン!!
(いてー)
ダッシュで逃げる。
さて、どうだ?
んー、効いてる気がしないし、鼻振り回してるから近づけない。
ダメっぽいな?
長期戦で倒すしかないのか。
「今日はここまでにしよっか。もう戻る時間だから」
「はい」
くそー、どうすりゃいいんだ?
とりあえずあの鼻と長期戦できる方法を考えとかないと、何も出来ない。
合宿所で平を見つけた。
「あのさ、今平気?急で申し訳ないんだけど回復できる?」
「ん?いいよー!どこ?」
「左肩を」
「りょーかい」
じわーん、
俺の体が淡く光る。
「おー!すげー、痛みが無くなった!ありがと」
「全然いいよ、いつでも言ってね!」
「じゃね!」
平と別れる。
すごいな、疲れまで取れた。
なんかでお礼しとこう。
昨日と同じようにお風呂と食事を済ませる。
「あのさ、ゾウを倒せる気がしないんだよね、まじでデカすぎてやばいよ」
「まぁ、ゾウにパワー勝負は大変だな。俺は毒で瞬殺だったからなんとも言えないな」
つえーよ。
「ずっと思ってたけど、その能力強すぎるよね。攻撃も防御もできるじゃん」
ハイブリットすぎる。
「そうだな。何本も大木出せるし、木の上に避難もできるし蔦とか枝で拘束も出来て、そこから毒で倒せる。1人で完結できるしな。
でも、棍棒でも防御はできるだろ?」
「そんな技術ないよ」
「やってみなきゃ変わんないぞ?」
「一理ある」
「清麻呂は今何してんの?」
「俺たちは今、対人戦の訓練してるよ。なんでも20階過ぎると人とのトラブルがあるみたいで、最初から人を狙ってダンジョンに入って物を盗む人がいるらしい。
そのために人を相手にする訓練やってる」
「へー、物騒だね。どこにでもそういう人っているんだね」
「あー、高嶺先生って美人だろ?結構そういうのが酷いらしい。」
「なるほどね。自分の力に酔っちゃって、周りからもチヤホヤされて自分がモテてるって勘違いしちゃうやつね」
「あるある。そういう年頃なんだよな。可哀想に、取り返しつかなくなってから気づくんだよそういう人って」
「若いねー」
「それな」
「みんな!枕投げ大会やるよ!
2日目はもちろん1対1の勝ち抜けトーナメントだ。もちろん僕はシード。勝ち抜いた人が僕と戦える」
結果は火を見るより明らか。
決勝は原田部長対石川先輩となった。
が、原田部長には遠く及ばない。
この大会にエンターテインメントは無い、ガチ勝負!
夏の大会は明日が最後、この夏も守りきるのか。
絶対王者 原田直人 伝説を作ってしまうのか。
「なぁ、村丸。万が一の時のためにこれを渡しておく」
「これは?」
小さくて黄色い木の実を渡された。
「体の感覚を麻痺させるやつだ。その木の実を食べれば、もし手足がちぎれてもその痛みを感じなくさせる効果がある。
手足がちぎれても戦わなくちゃならない時が来るかもしれない。その時に痛みで戦えないんじゃ嫌だろ?そのための物だ。それと毒の木の実も、大抵のモンスターはこれを食べたら即死だ」
赤い木の実も貰った。
「そうだな、そんな未来が俺にはある気がする。ありがたく頂くよ」
俺の勘がそういってる。
毒か、
「おう」
「「おやすみ」」
電気が消えて、みんなが眠りにつく。
寝る前に目を瞑りながら考えた。
ゾウに対抗するための手段を。
朝6時30分起床
朝食を済まして今日も昨日と同じ班行動。
原田部長に事情を説明して午前中は別行動にしてもらった。
昨日寝る前に考えたとある秘策。
そのための準備に俺は今新宿駅の傍にあるホームセンターに来ていた。
そこで目当ての商品を買って学校に戻る。
ついでにみんなの分のアイスも買っといた。
合宿所の前に新聞紙を広げて棍棒を出す。
買ってきた木工用ヤスリでひたすら棍棒の凸凹を削る。
そう!昨日清麻呂と話した棍棒での防御!
ゾウの鼻攻撃を受け止めるのは体が持たないから、受け流す。そして隙を伺ってひたすら殴る。超超持久戦を考えた。
正直やりたくないがこの先も攻撃を受け流す場面があるはずだと、自分に言い聞かせて今削ってる。
もちろん最初は上手くできないだろう、でも大事なのは挑戦すること、そして思考を辞めないこと。
とにかく今できることをやるだけだ。
この作戦の問題は棍棒が壊れたら終わりなところだ。
新しく出す棍棒はもちろん凸凹だからだ。そこに気をつけて挑む。
「準備は出来た?」
「はい、それでは原田部長よろしくお願いします」
蝶のように舞い蜂のように刺す。
それが今回のコンセプト!いざリベンジマッチだ!
ゾウを倒すシミュレーションを頭の中で何回もやってますが、ことごとく鼻で蹴散らされます。
そこでゾウについて色々調べてたら少しゾウに詳しくなりました!
がんばれ!村丸ちゃん!!応援してるよ。
それと昨日、この作品が誰かに読まれてることがわかりました。嬉しいです。




