11話 すごい
俺は今鈴鹿と佐野先生の3人でダンジョンの1階に来ている。
数時間あれば12階まで行けると思う。
改めて、1階から15階までは各階でモンスターを10体倒すと次の階に行ける。
追加情報で、協力して倒しても認められるということ。
2人で協力して10体倒せば次の階に行ける。
だから鈴鹿に足止めをしてもらって俺が棍棒で動かない相手にフルスイングを決める。
これでかなり楽になる。
周囲一帯のウサギが動かなくなる、数えてみるとちょうど10匹だ。こんなのチートだぜ全く。
すごいのが、俺がフルスイングしてもウサギが飛んでいかないことだ。
つまり俺の力では鈴鹿の粘着から抜けることはできないってことだ。
全く恐ろしいぜ。
「朝姫ちゃんすごいね。僕でもそれから逃げるのは大変そうだ」
「そうなんですか!正直どこまで通用するか不安だったんですよ!」
「中層なら十分通用するよ」
「良かった〜、でもそんなに強力なんですね。
この粘着力、なんなんですかね」
「それは僕にも分からないね、それはもうそういうものだって僕は割り切ってるからね。
なんせ科学的にありえないことができちゃってるからね」
その後も淡々とフルスイングをかましていると早くも12回が終わってしまった。
「それじゃあ一旦村丸君はここまでだね。
学校にうちの1年がいるから合流しよっか。
さっき集まった部屋にいるからやることはもう伝えてあるから2人に聞いてね。」
「わかりました。ありがとうございました」
鈴鹿のおかげで戦闘では汗をかかなかった。
さっきの部屋に戻ると1年の2人が腕立て伏せをしていた。
あ、名前忘れた。
「あのー、2人と合流して一緒にトレーニングしてって佐野先生に言われたんですけど」
「おん?大竹か、それじゃあ体育館に移動するぞ」
「そうだね」
なんか、オラついてるな。
赤髪が逆だってて腕に蔦を巻いてる危険人物が答えて、背が高いボーイッシュ女子が相槌をうった。
「ごめん。名前なんでしたっけ」
正直に聞いた。
「私が平 佳奈でこっちが坂上 清麻呂だよ」
危険人物の名前は坂上清麻呂と。
「ありがとう、もう忘れないです」
「全然敬語じゃなくていいよ!私たち同い年だし!」
「そっか、初対面だと距離感が難しくてね」
俺は自己紹介での失敗がトラウマになっているような気がする。
「おう、初めましてだからな、これやるよ」
そう言って坂上 清麻呂は黄色い花を渡してきた。
「う、うん、なにこれ?」
「それはバラだ」
黄色いバラなんてあるのか、初めて見た。
「そうなんだ、なんかすごいな、花好きなの?」
急に5本の黄色いバラを貰った。
やっぱりちょっと変わった人だ。
「あん?そうだよ、文句あるか?」
「無いよ!珍しいからさ」
めんどくせー
「俺は昔から花が好きなんだ。将来の夢もお花屋さんだ。そのために今もお花屋さんでバイトしてる」
なんか突然の告白。
しかも花屋さんに"お"をつけるタイプの人間だった。ギャップ。しかも今のうちからバイトで経験を積んでるなんてガチだな。将来を見据えてやってるのか、すごい。
「いいなぁ、夢があるの」
「ふん、誰にだってやりたいことの1つや2つあるだろ」
「どうだろ、俺は今まで無かったけどね。最近1つ見つけたけど」
「とりあえず、移動しよっか」
平さんからの催促がきた。
「そうだね」
「行くぞ」
「2人は何階まで行ったの?」
「俺は今23階だ」
「えっ!ウソ!?」
「嘘じゃねーよ、俺は天才だからな」
「疑ったわけじゃないよ、びっくりしてつい声が出たんだ」
自分のこと天才って言うのか、同類だな。なんか親近感が沸いた。
「まぁこの後俺と戦うからその時わかるぜ」
「えっ!戦うの!」
「聞いてないのか先生から」
「トレーニングするってだけ」
「そうか、これから大変だぜ」
22階でやってる先輩たちは目が飛び出でるほど強いって鈴鹿が言ってたけど、俺が相手になるのか?
「ちなみに私は17階。サポートメインだからゆっくり進んでるけどね」
「まじか、すごいな」
「まあ、能力によって難易度が違うからね」
確かに俺は棍棒出すだけだから苦労しそう。
「俺はまだ12階だよ」
「いつから行き始めたんだ?」
「夏休み前からだよ、11階で苦戦してね」
「それなら全然遅くないだろ。確かに11階は相性次第で苦戦するな」
「連携が鬱陶しかったよ」
「俺は大抵のモンスターとは相性がいいな」
「そうなんだ、羨ましい」
どんなすごい能力なんだろ。
「と、ここが体育館だ。中で、対人戦だぜ。暴れても壊れないようになってるから安心していいぜ」
「どんな感じでやるの?」
「まずは慣れるために軽くやるか」
「それじゃあ私は見てるね」
「お互いに能力を使っての戦闘だ。俺に手加減しなくていいぞ。その方が俺は燃える」
そんな性格だろうなって思った。
「だろうね、実力的に手加減は意味無いでしょ」
何分持つかな俺。
「最初に言っとくが俺は植物を操れる。
俺の戦い方は拘束と状態異常で動きを封じる。だけど今回は状態異常は使えない。危険だからだ」
植物を操る。正直よく分からん。
「了解、俺は棍棒を出す能力だ。どうだ、この能力差涙が出るぜ」
「それじゃあやるか」
「おう!」
「よーい、始め!!」
初っ端から全開で行くぜ!!




