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39話 ガチャオーブ

昨日、誕生日でした!

 新宿ダンジョン一階。俺達の周りには冷やかしの探索者が人垣を作っていた。視聴者の数も多い。同時接続数は五万を超えている。


 ガチャオーブを使う瞬間を見ることなんてないから、皆興味深々なのだ。


「ギャラリーの皆さま! そして視聴者の皆さま! お待たせしました! 私、死ぬ死ぬマンは只今より、ガチャオーブを使います!!」


 ダンジョンに響く歓声。いつもはコメント欄だけなので、新鮮だ。


 リュックからガチャオーブを取り出し、ケースを開ける。


 ただ白く光るだけで、何のスキルが封じられているか分からない。


 右手に持ち、高く掲げる。そして、グッと力を込めた。


 オーブは強く発光し、何かが俺に降りてくる……! 

 それは──。


 【 名 前 】 八幡タケシ

 【 年 齢 】 18

 【 レベル 】 10

 【 魔 力 】 30

 【 攻撃力 】 30

 【 防御力 】 30

 【 俊敏性 】 36

 【 魅 力 】 5

 【 スキル 】 配信命、モフモフ化、女人禁制

※【 H P 】 54332/54332


 ──えっ。


「どういうことだ……」


 俺の声だけが響く。


「ウゥ……アァァァァ……?」

「師匠……どうでした……?」


「女人禁制……」


「ウゥ?」

「はい?」


「【女人禁制】ってスキルが生えた」


 しじまがざわめきへと変わる。


「それはどんなスキルなんですか?」


「分からない。ステータスには何の説明もないんだ。ちょっと俺の身体を触ってみてくれ」


 マリナがじっと俺の顔を見た後、右手を俺の左手へ伸ばすと──。


 パチンッ! と静電気のような音がして弾かれる。これは……HPの壁とは別だ。


「グミは俺に触れられるか?」


 グミも同じように右手を俺の左手へ伸ばすと──。


 また、パチンッ! と弾かれる。


 ちょっと待って欲しい。常時発動型のパッシブスキルなのか……!?


 今度は俺からグミの手を握ろうとすると──。


 ズゴゴンッ!!



#



「……ゥ!!」

「……ぅ!!」


「……ゥゥゥ!!」

「……しょう!!」



「ウゥゥゥゥ!!」

「師匠ゥゥゥ!!」



 うん……? 瞼を開くとグミとマリナの顔がある。何だっけ?


「ウゥ、アアアァァァ?」

「師匠、大丈夫ですか?」


 二人とも焦っている。


「大丈夫みたい。何があった?」


「師匠がグミ先輩の手に触れようとしたら、雷が落ちました! それで師匠は意識を失って……!!」


 女人禁制……。自分から触ると雷が落ちるのか……。


 起き上がり、周囲を見渡す。


 観衆は呆気に取られた様子で俺をじっと見ていた。


「すみません! 男性の方、誰か一人協力して下さい!!」


 呼び掛けると若い探索者が一人、前に出た。


「ちょっと俺の手を握ってくれませんか?」


 右手を差し出す。


「では……!」


 男の手が伸びてきて、すんなりと握手が成立した。


 女人禁制だからなのか?


「すみません! 性転換して女性になった方、いらっしゃいますか……!?」


 一瞬騒がしくなった後、背の高い女性が前に出た。


「俺の手を握ってくれませんか?」


 さっと右手を前に出す。


「はい……!」


 ──パチンッ! と弾かれる。この人は女性扱いなのか。


「すみません! 女装が趣味の男性の方はいらっしゃいますか……!?」


 ざわめき。そしてガタイのいいおっさんが前に出た。


 ウィッグをしてワンピース姿だが、男である。


「お願いします!」


 右手を差し出す。


「わかったわ!」


 握手は成立した。女装した男は大丈夫らしい。


「すみません! 性自認が曖昧な方はいらっしゃいますか……!?」


 大きなざわめき。そして中性的な人が前に出た。男にも女にも見える。


「お願いします!」


「はい!」


 握手は成立。


「スキルの判定により、貴方は男性です!!」


「……はい」


 複雑な表情をされた。


 ドローンカメラが目の前で止まった。俺はどんな顔をしているのだろう。


「私、死ぬ死ぬマンはガチャオーブから【女人禁制】というスキルを授かりました! どうやら、女性に触ることも、触られることも出来なくなったようです!!」


 八幡タケシ、18歳。


 また一つ。呪いのスキルを引いてしまいました……。

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― 新着の感想 ―
うわぁ
[良い点] 【悲報】死ぬ死ぬマン一生童貞確定!!!!! めちゃくちゃ閲覧数多い状態でHPマシマシになってれば何とかできないことも無いのでは………いや無理か………無理じゃなくても社会的に死ぬから無理だな…
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