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22話 スキルオーブ

「グミ先輩、食事は後にしましょう!」


 カレー屋の前にへばりついて動かないグミを、マリナが必死に引き剥がしている。


「行くぞ。待たせているんだから」


 そう。俺達は神保町にあるトマベチ上級鑑定事務所に向かっている途中だ。要件は勿論、スキルオーブの鑑定。


 今回もトマベチさんのご好意により、無料で鑑定してもらえることになっている。


 なんとかグミを引き摺り、目的のビルの2階に上がった。


 インターホンを鳴らすと、「どうぞ〜」と甘ったるい声が返って来る。


 中に入ると、見るからに大らかな女性、トマベチさんがいた。


「……衣装を変えて来たの……?」


 グミとマリナの服装──バニーガールを見ている。


「はい! 同時接続数稼げるので!」


「商魂逞しいわねぇ」


 少し呆れた顔をして、トマベチさんは俺達にソファを勧めた。


「さて、早速だけどスキルオーブを出してもらえる?」


「はい」


 リュックの中からスキルオーブを取り出すと、相変わらず七色に輝いている。ローテーブルに置くと、トマベチさんが睨むように見つめた。


「鑑定前だけど、多分レアなスキルよ。これ……」


「見ただけで分かるんですか?」


「もう何千とスキルオーブを見てきたからね。なんとなく、感じるの。"格"みたいなものを」


「このスキルオーブは"格"が──」


「高いわ」


 トマベチさんが力強く断言した。弥が上にも期待が膨らむ。


「じゃあ、鑑定するわね」


 軽く触れると、白い光がスキルオーブを覆った。トマベチさんの額に汗が浮かぶ。


「これは……」


「どうでした?」


「初めて聞くスキルよ……」


 よし来た! レアスキルだ!!


「教えてもらっても?」


「モフモフ……」


「えっ?」


 なんて言った?


「モフモフカよ……!」


「えっ? モフモフカ?」


 何を言っているんだ? トマベチさんは。おかしくなってしまったのか?


「自分がモフモフになるスキル! モフモフ化よ……!」


 モフモフ化……。確かに俺はモフモフ配信を狙っていたが、それはテイムモンスターの話だ。俺がモフモフになる予定はない。


「も、もう一度、鑑定してもらっても?」


「何度やっても同じよ! タケシちゃん、諦めなさい」


「嫌です! 本当は闇魔法とか瞬間移動とかそーいうカッコいいスキルなんでしょ!! このスキルオーブは……」


 トマベチさんが黙って首を振った。


「師匠、諦めましょう」

「ウゥ、アァァァァァ」


 二人が俺を慰める。きっとコメント欄も俺を慰めて──。



『モフモフ化wwwww』

『夢かなったじゃん!!』

『モフモフ配信したかったもんね? 死ぬ死ぬマン』

『どれだけモフモフになるのか気になる!』

『早くスキル使ってくれー!!!!』

『死ぬ死ぬマン、猫耳生えるん?』

『めっちゃ楽しみー!!』

『モフモフで石像持って戦う奴wwww』


 ──くれてはいなかった……。

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