第八話 朝早いのは無理!
プールでの訓練を終え、いよいよ海での実習を迎えるスキューバ部一同。
しかし集合は朝早く。
家の遠い詩衣の取った手段とは……?
どうぞお楽しみください。
「お疲れ様でした!」
「お、お疲れ様……」
「おっつー……」
「……早く帰りたい……」
「打井さん、大丈夫……?」
打井先輩は狭いところの恐怖と闘いながらだったけど、何とか全員深水訓練を終えた。
次はいよいよ海洋訓練!
そしてそれが終われば、いよいよCカードの発行だ!
「よう、みんな揃ってるか」
「猿海先生! お疲れ様です!」
「忍庵、お前は水に入ると元気になるな」
「はい!」
「……普通は疲れるもんなんだけどな……」
むう。人を変な奴みたいに。
「とにかくこれで残すところは来週の海洋訓練だけになった」
「はい!」
海だ! 海だ海だ海だ!
あぁ、訓練とはいえ、海に入れるんだ!
嬉しい! 楽しみ! 来週が待ちきれないよ!
「集合は七時な」
しっ……!?
そんなの絶対無理! 間に合わない!
「蒲田にサポートについてもらう関係で、スクールが始まる前に終わらせたいんだ。ちょっと早いけど大丈夫か?」
「先生! 私無理です!」
「そーか。じゃあ忍庵は来週休み、と」
「違います!」
何てこと言うんだこの人は!
たとえ親戚の結婚式があったって行くよ!
「そうじゃなくて、ウチからだと朝八時より前には着けないんです!」
「あー、お前んち遠いんだもんな」
「はい! だから」
「じゃあ俺のアパートに泊まるか?」
……へ?
いいの!? やった! これで参加できる!
「先生! 詩衣ちゃんに何する気ですか!」
「え? あ! 違う! 賀井、違うぞ!」
「いやー、せんせーさいてーだなー」
「いや待て違うんだ東海林! 話を聞いてくれ!」
「落ち着いてみんな。猿海先生はそんなことする人じゃないわ」
「数寄……! 信じてくれてありがとう!」
「……話聞いて、有罪とみなしたら……、あたしが根元から引きちぎる……」
「打井……。何だか怖いぞ……」
みんな、何でそんなに猿海先生に詰め寄ってるんだろう?
「すまん! 説明が足りなかった! 俺の家は親戚から管理を任されてるアパートで、そこの空き部屋に泊めるつもりだったんだ!」
「それならそう言ってください。生徒に堂々と手を出す変態教師かと思ってしまいますよ」
「しないってそんなこと!」
……あ! そういうことか!
海に入れる嬉しさで、全然気がつかなかった……。
猿海先生がその気だったら危なかったぁ……。
「忍庵すまん! 俺はそんなつもりは全くないからな! 安心してくれ!」
……何かそこまで言われると、ちょっとイラッとするなぁ……。
「な、何ならお前達も泊まるか? 三部屋空いてるから、一部屋二人とかになるけど」
「あの、泊まりたいですけど、うち、ちょっと厳しくて……」
「あたしもごめーん。うちのわんこ、朝の散歩はあたしじゃないとダメでさー」
「あたしも弟達の世話があるから泊まりはなぁ……」
「すみません、私も無理です」
じゃあ、結局二人きり……?
「じゃあ忍庵、おうちの人に説明しておいてな」
「……はぃ……」
「? どした?」
返事の声が小さくなった理由は、私にもよくわからなかった……。
読了ありがとうございます。
詩衣はこのままだと、海をエサにしたらどこにでもついていく子になりそうですね……。
アホの子ではないんです。
ただ海の事しか頭にない残念な子ってだけです。
そんな主人公ですが、見守ってやってください。