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第十話 海だ! だけど、何だか……。

いよいよ海洋訓練。

訓練とはいえ、いよいよ詩衣の夢が現実になる瞬間。

その時詩衣が感じたのは……?


どうぞお楽しみください。

 待ちに待った海洋訓練!

 さぁ昨日のうちに買っておいた朝ごはんを食べて!

 支度を整えて!

 アパートの階段を降りて先生の部屋に!


「先生! おはようございます! 支度できました!」


 あれ? 反応がないな。

 まだ寝てる? 顧問の先生が寝坊とかシャレにならないよ?


「せーんせい! 起きてくださーい! 海に行きますよー!」

「……」


 あ! 出てきた!

 でも全然寝起きだ。髪ボサボサでヒゲもボーボー。

 だらしないなぁもう。


「先生、早く支度してください。行きますよ!」

「……忍庵おしあん、今何時だと思ってる……」

「五時半ですね!」

「……集合は?」

「七時に学校です!」

「……早くね……?」


 あ。言われてみれば。

 いつも四時半起きで学校行ってるからその感覚だった。


「……もうちょい部屋で待ってろ……。学校まで十分かからねぇんだから、落ち着いて待ってろ……」

「……はーい」


 うーん、ちょっと気持ちが焦ってたかな?

 でもま、遅れるよりいいし、準備運動でもして待ってよう!




「あ! おはよう陽子ちゃん!」

詩衣しいちゃん! 大丈夫!? 変なことされてない!?」

「大丈夫だよー。先生ちゃんとシャワー使わせてくれたし、優しいところあるなー」

「……シャワー……?」


 二十分のところ三十分にしてくれたし。


「お返しと言ったらあれだけど、朝は私が起こしてあげたんだ」

「……朝、起こす……?」

「そうそう寝起きの先生、髪ボサボサでさー。写メ撮っとけばよかったなー」

「……!」

「朝も楽だし、もうそのまま住んじゃいたいくらい」

「……詩衣ちゃん!」


 え? 陽子ちゃん? 何で抱きしめてくるの?


「おう賀井かい、おはよう」

「先生のけだもの! 信じてたのに!」

「え!? 何だ急に!?」


 その後しばらく陽子ちゃんは、猿海さるみ先生を睨みつけていた……。

 ……仲悪かったっけ……?




「はぁい、おはよぅ。みんなそろってるわねぇ?」


 海に移動すると、蒲田かまださんが準備して待っていてくれた。


「今日の訓練は海での実地訓練になるわぁ。プールの訓練と違って相手は自然よぉ。一歩間違えれば命に関わるってことは忘れないでねぇ」

「「「「「はい!」」」」」

「海の中では私と浪太なみたの指示は絶対よぉ。もし守れないならぁ……」


 な、何!? 急に雰囲気が変わった……!?


「今後一切海には入らせねぇからそのつもりでいろよ……!」


 うわ! ドスの効いた声こわっ!


「ちゃぁんとしてたら大丈夫だからねぇ」

「「「「「……はい……」」」」」


 みんな声が震えてる! 私も!

 でもそれだけ真剣なんだな……。

 ちゃんと言うこと聞いて、頑張ろう!




 うわ、うわわ!

 すごい! すごいすごい!

 広い! どこまでも海だ!

 明るい! 日差しが底の方まで届いてる!

 魚! 魚が泳いでる!

 身体をゆるやかな水の流れが触っていく!

 一方向だけじゃなくて、複雑にからみあってる!

 あぁ、スーツなしだったらもっと感じられるのに……!

 みんなも楽しそう!

 あちこち見ながらゆったり泳いでる!

 あ、先頭の蒲田さんが止まった。


『ここで 中性浮力』


 ハンド・シグナル通りにゆっくり上を向いて浮く。

 ……あ……!

 金色の水面。

 明るい青色に染まる周りの岩。

 飛ぶように泳ぐ魚の群れ。

 無重力のようにふわりと浮かんでいる身体。

 夢のまんまだ……!

 みんなも同じように浮いて水面を見てる……!

 やった……! ようやく見れた……!

 ……。

 だけど、何だか……。




「うん、オッケーねぇ。これで今日の訓練はおしまいよぉ。あと三ダイブしたら、カード発行よぉ」

「ありがとうございます!」

「じゃあ浪太、また来週ねぇ」

「あぁ、よろしく頼む」


 蒲田さんが車に乗っていくのを見送って、猿海先生が私達に向き直った。


「お疲れさん。どうだった初めての海は」

「あの、すごかったです! 景色はきれいだし、身体が浮かんでる感じがとっても不思議で……!」

「あたしかんどーしちゃったー。動画とれたら絶対バズったのになー」

「泳げるかどうか心配でしたけど、あんなに自由に動けるものなんですね……!」

「すっげー広かった! 気持ちよかったー! あれが詩衣の見たい景色だったんだな!」

「……あ、はい。そうです」


 そう、そうだったんだけど、何だろうこの違和感……。


「あの、詩衣ちゃん、大丈夫?」

「え? あ、うん、大丈夫。子どもの頃からの夢が叶ったからかな、何か力抜けちゃった……」

「そうなんだ……」

「しーっち、ありがとねー。すごーいかんどーしたー」

「私もありがとう。こんなに水の中を心地よく感じられるなんて、スキューバをしなかったらわからなかったわ」

「詩衣があの時VRを見せて励ましてくれたおかげだ! さんきゅーな!」

「みんな……! こちらこそありがとう!」


 嬉しい。あったかい。

 一緒にここまで来れたことがとても嬉しい!

 ……なのに、何でだろう……。

 この、水を飲んだのに、のどのかわきが収まらないような、変な感じ……。

読了ありがとうございます。


夢が叶ったはずの詩衣が感じた違和感とは……?


次話もよろしくお願いいたします。

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