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ある老龍の語り部

作者: トホQ

これは、ある老龍から語り継がれている、今の龍族の形となる「劇的な転機であった」と言われる元となった話を、記したものである。



昔、まだ人種と魔族、そして誇り高き龍族が、この星の覇権を争い、殺しあっていた時代のこと。


魔力を巧みに操り、魔法技術の発展した魔族と、存在そのものが圧倒的な龍族が優勢で、人種は苦しい状況にある、そんな戦況だった。


誇り高く、強者である龍族が本気を出せば、一瞬で争いに蹴りは着いていたが、我が先祖は遊び程度で魔族と人種にちょっかいをかける形で参戦していた。

もちろん、龍の里へ進行しようものなら、容赦なく灰にしていたが…。


人種は弱く、魔族の勝利で収まると我々も魔族も思っていただろう。だが、人種は繁殖力と新しい道具をどんどん開発し、我らと魔族と100年近く、渡り合ってきた。


魔族も龍族も繁殖力がそんなに強くなく、人種の卑劣な搦手などに少しずつ数を減らしていった。

だが、それでも魔族と龍族の絶対優位は揺るがないと、まだ遊んでいられると、少なくとも龍族は思っていた。


だが、そんなある日だ。なんの前触れもなく我々龍族の里の上空にとてつもない魔力の塊が出現した。

少しずつとか、徐々にとか、そういうことではなく、本当に『突如として出現した』のだ。


最初は魔族の攻撃かと思ったが周りに魔族はおらず、おろか、その魔力に魔族の干渉した形跡もない。


つまり、自然的に、不自然が発生したのだ。


あまりにも魔力の密度が濃かった為、黒い球体のようだった魔力の塊は、2日で静かな魔力へと変質した。


この2日、好奇心旺盛で戦闘好きな我らが黙って見ているはずもない。最大火力のブレスやクロー、噛みつきなど様々な攻撃を試したが、どれも届かない。ブレスに関しては吸収されているようにも見えた。


我らは、その魔力に影響を及ぼせないと悟り、変化があるのを観察して待った。


そして2日後、魔力が静かな、しかし以前より強力な存在感を纏うように変質した。

魔力の中心には、なんと人種の赤子のようなモノが入っていた。


好奇心旺盛で戦闘好きな龍族の中で、もっとも力があり、攻撃的な龍が、その赤子に噛み付いた。

赤子は魔力で覆われていたので、その魔力ごと噛み砕こうとしたのだろう。


その龍の牙が、魔力の壁に触れた瞬間、人種の赤子のようなモノは瞬く間に人種の18歳くらいの見た目に変化して、噛み付いてきた龍を蹴り飛ばしたんだ。


我々からしてみれば、龍が噛み付いたと思ったら、その龍は山2つ吹き飛ばすように飛ばされており、球体のあった所には18くらいの人種が、いかにも回し蹴りしました、みたいな格好で浮いていたから、何が起こったか、理解出来るまでそれなりにかかった。


『やばいモノが生まれた』そこにいた龍は皆そう思っただろう。

対処しなくては、と、まとまりのない龍族にしては珍しく、全員が同じ思いで動こうとした矢先、


『伏せ』


の一言がその場に響いた。

たった一言、その言の葉に込められた重圧はとてつもなく、その場にいた龍のほとんどが抗えず、地に伏したのだ。


強者たる龍族、その重圧にも屈せず、だが、思うように動かない体に鞭を打つように闘志を奮い立たせる龍もいた。


だが、その抵抗は無駄だった。

ブレスは吸収され、フラフラと飛び上がってのクローも素手で、腕ごと消し飛ばされていた。


地面へ叩きつけた龍を見て、ソレは、

『あぁ、そうか、さすが龍族。やはり雌雄を決せねば屈辱的よな。理解した』


と、指を鳴らした。

するとさっきまで体を縛っていた重圧はどこかへ消え去った。


縛るものは無い、さすればすることはひとつ、あの異質なモノを始末せねばなるまい。

その思いで飛びかかろうとした矢先、


『存分にかかってこい。ここからは手加減なしだ』


そう言った奴から、さっきまでは感じられなかったおぞましいほどの殺気が溢れ出した。

その殺気に当てられた龍は、やはりさっき抗えなかった時のように、泡を吹いて倒れてしまった。


やはり、さっき動けた龍だけが立ち向かうことが出来たが、結果は惨敗だった。最初の龍は頭を消し飛ばされた。裏拳で。

『あっ、加減間違った』

とかソレはなんでもないかのように言っていた。

動けた龍のうちほとんどがこれで不能に、まだ動けた2人も一撃でのされていた。


蹂躙が終わると、殺した龍の元に降り立ち、

『リレイズ』

と魔法を唱えた。すると無くなった頭が再生して、死んだはずの龍が起き上がった。

周りも混乱したが、当然本人が1番混乱していた。


こうしてソレは圧倒的すぎる力で、龍族を完全に重複してしまったのだ。


そしてソレは各地にいる龍も集めさせ、『人化の魔法』を授けた。そして、

『戦いたくなったら何時でもオレが相手になってやるから、遠慮なく言え。他で暴れたら、分かってるな?』

と笑顔と殺気を混ぜた器用な様相で我々に告げた。無論、ここで反抗するようなやつはいないし、各地から呼び戻されたやつも軒並みのされて調伏されている。


そうして、瞬く間に龍族をまとめあげたソレは、魔族と人種の領地も全て治め、今では龍も魔も人もわけ隔てることない平和な世界が訪れた。


ソレの出現から千年経つが、ソレはまだ健在で、今でも世界で悪いことが起こるとたちどころに現れ、解決するという。



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