第4話:心無き悪魔
ノエルは自宅で湯船に浸かっている、あの後は特に何もなかった。ある程度距離が近く運がよかったのもありモンスターと出会うことは無く自宅まで帰ってくることが出来た。
湯船に浸かりながらノエルは様々なことを思考し始めた
(一先ず私の記憶喪失はもう最悪どうでもいい、銃はあるが探査能力が全くないのは流石に致命的だ。明日にでもまたあのフラッグシップで買うとしよう。後の問題はやはり金か?水道光熱費も考慮して今日は銃ぐらいしか購入していなかったが、やはりもう少しは購入すべきか。だとすれば買うべきは一先ず保身の為にも情報集機器が欲しいところだ。流石に強化服は高い、シーカーとして最低限必要と言われても買えない物を借金して買うわけにもいかない)
しばし思考を巡らせているとノエルはこのままだと湯船で眠りかねないと察しすぐに上がることにした
(本格的に睡魔が来る前に銃の整備を終わらせなければ)
そう感じたノエルは今日使用した銃の整備を開始した。銃の整備は怠る訳にはいかない、少なくともノエルは記憶を失うほどの目に会ったのだ。いざという時に暴発は無いとしても碌に銃が撃てない、弾がまっすぐ進まない何て事になってもらっては困るのだ。説明書を見ながら銃を解体し適切な整備を行っていく。
(しまった、風呂に入る前にするべきだったか?まぁいい、汚れないように手袋を付けて丁寧にすればいいだけの話だ)
整備が終わり最後に一つの銃に目が留まった、エクシウムだ。
(トリガーを引かなければ大丈夫か…)
そう考え多少色々試してみることにする。
GGH自動拳銃の様に排莢は必要なさそうに見えるしそもそもマガジンすらないように見える。少々弄ってみると形状が拳銃では無くまっすぐに変形した、どうやらこの状態でも別に問題はなさそうに見える。
(この形状は…剣か?)
一応安全の為外に出てからトリガーを引くと銃口らしき場所から目測1m程の長さの緑色のエネルギーブレードのような物が展開された。試しにそこら辺の雑草を斬りつけると何の手ごたえも無くスパッと切れてしまった、かなりの切れ味で何より軽い。
(やはり売ろうか…)
決意が揺らぎつつあるノエルだったが装備が心もとない現状では売るよりは一つ強力な装備があった方がいいと結論づけ家に戻った。
エクシウムを見ると若干緑の光のラインが少し短くなっていた、恐らくこれが使用可能時間なのだろう。だが少しずつそのラインは回復し物の数秒で元に戻った。
(数分程度じゃ殆ど残量は消費されないし、いいものを拾ったか。まぁいい明日に備えて寝るとするか)
情報端末のアラームが鳴り響く早朝
ノエルは目を覚まし直ぐに顔を洗い朝食の準備を始めた。いくら何でもトーストを焼いたりするくらいは情報端末を見ずともある程度はできる。
焦がさない程度に眺めながらスクランブルエッグを作る。焼き上がったトーストの上にバターを乗せ出来上がったバタートーストの上に少々固めに焼いたスクランブルエッグを乗せ昨日購入していたスムージーを棚にあったグラスに入れる。
情報端末を眺めニュース等を眺める、サクッサクッっと言う音を立てながら初めて作ったエッグトーストを食べ進め多少のんびりする。
(塩胡椒…もう少し振るべきだったか?味が薄い。初めてならこんなものか)
スムージを飲みながらそんなことを考えニュースを眺める。
準備を整えフラッグシップへ向かう、昨日買った銃とエクシウムをしっかり装備している。フラッグシップへ行った後はそのまま難易度の低い遺跡に向かうつもりでいるためだがフラグシップへ行くのはシーカー家業の延長である為でもある、今後も基本的にシーカーやそれに類する仕事をしていくなら恐らくずっと強化服や防護服を着るなら着たまま過ごすことになるだろう。
そもそもノエルに女性であるという自覚は薄い、最早無いと言っても過言ではない。ノエルは衣服に関しては衛生的で別におかしな格好でなければ何でもいいのではないか?とすら考えている。
フラッグシップがあるのは下位区画でも治安の良い地域だ、だがノエルの家は少々スラム街に近い。
スラム街では全く倫理観は無い、路地を歩けば孤児が当たり前、すれ違う孤児の大半はスリ多少大通りを歩いても堂々と恐喝し脅してくる。酷い時はスラムの一部を牛耳っている集団に捕まり一生奴隷として命令を無理矢理実行させられる機械と化す。
ノエルが偶々フラッグシップで情報収集デバイスを購入し消耗した弾丸を補充して一旦保管用に多めに買った弾丸を置きに家に帰っている途中だった。
「おう、おめーちょっと止まれや」
大男が数名立ちふさがった、ノエルはスラムの知識は疎かった。如何せん都市の情報よりもシーカー関係の知識を優先して覚えていたためだ。
それでもノエルは購入した情報収集デバイスで収集した情報を端末で確認してこの男たちが居ることは知っていた。それでもノエルの武装は強化服こそ無いが一般人が複数人居たところで敵わない程度の武装はしているのだ。
(なんだ?大男が集まりに集まって)
ノエルがそんなことを考えているとリーダーと思われるひと際大きな男がよだれを垂らしながらノエルに高圧的に恐喝を始めた
「へへっ、嬢ちゃん悪いことは言わねぇ銃を捨てて大人しくしな。綺麗な顔に良い体だからなへへっ。楽しめそうだからないっそ服も脱いでこっちに来るんだ」
多少質の悪そうな小銃を構えノエルを囲んでいた周りの男達も同調してゲラゲラ笑い始めた
ノエルは少々驚いていた、何を言っているのだこの男は?と。ノエルは非情に顔が整っていることを自覚していないしスタイルなんて気にしていない。それ以前にこんな武装した人間に整備もまともにされていそうにない銃で挑もうとしているのだ。いくら数的有利・体格的有利があっても油断しすぎなこの者たちに少しの呆れも入っていた。
「抵抗しないでくれよ?傷は出来れば付けたくないからなへへっ回復薬はあるけどよ」
(全く、早く帰って予備弾薬を置いて異跡に行きたいのだがな)
ノエルは元からの澄まし顔で少しのため息をつきながら服のボタンを外す振りをし左脇にあったエクシウムを引き抜きその場で360度ぐるりと光線の如きそのエネルギー弾で一掃した。
一瞬の出来事だった、男たちは何が起きたか分からないような表情で上半身と下半身が分かれた。その激痛に絶叫し苦悶の表情を浮かべ泣きながら「死にたくない、死にたくない、助けてくれ」とノエルに泣きついてきた
「汚らわしい、触れるな」
その一言で懇願した男の体は両断された。その様子を見て他の三名の男達は匍匐してノエルから離れていった。
それをノエルはゴミを見るような見下した目で頭部を撃ち抜いていく。練習が甘かったのかエクシウムを使うのに慣れていなかったせいか最後の男を撃ち抜こうとした際に耳をかすめただけになってしまった。
「ヒエッ、やめてくれ。お願いだ!!俺はもうあんたには手を出さないから!助けてくれ!」
怯え、顔から色々な体液を垂らしながら懇願する
「信じろと?君たちの事は良くは知らないのだ。スラム街?と言うのもそもそも私が目が覚めたのは最近でね詳しくないんだ。話がそれたな君を助けるかどうかだったな。」
怯える上半身だけの死にかけの男の目の前にしゃがみ切断面を焼き付け簡易な止血を施しながら話を続けた。
「痛いかい?まぁまぁ失血死する可能性は消えたんだむしろ私の慈愛に感謝してほしいね。さて、君を助けて利点はあるのかな?君は私がこのまま見逃して君たちの仲間が君を助けたとしよう。君は私に報復に来るんだろう?人間と言うのは感情で動くらしいからな。この場で殺してしまった方が見せしめにもなって好都合だろう?」
エクシウムを男の蟀谷に押し付けながら無感情に淡々と説明しすると。男が震えながらならばと次の交渉を開始する
「言わない!言わないから。何でもする!助けてくれ仲間たちには何も言わない!あんたに攻撃しないように働きかける!」
「うん?もしかして私の言葉が間違っていたのかな?それだったら申し訳ないね、言葉は最近覚えたばかりで誠意勉強中なんだ。もう一度言うけど大前提として君が信用ならないんだよ。君が聖人君主でその実績があれば君の言葉を信じても良いんだ。それで?何でもする?汚らわしい物体にが私に触れてほしくないし私が使うものにも触れて欲しくないんだ、会話すら時間の無駄なのに発声練習もかねて話してあげているのだよ。すまないが拷問の趣味も無いし私は異跡探査に勤しみたいんだ、時間をかけて君の仲間が大量に来たら困るしね?いるんだろう?」
男は朦朧とする意識の中で絶望しこの悪魔のような小さな少女が心の無い悪魔に見えた
エクシウム:切り替え式で異物の為それなりに強力、生身でも十分扱える上にバッテリー式で有機転換炉と自動修復機能付き。小さくXium と彫られていたのでエクシウムと呼んで愛用している。




