順調!順調! あれ?どうしてここに?
「ふんふん……ふふん!」
私は鼻歌を歌いながらクルクルと執務室の椅子で回りながら報告書に目を通していた。
転生してから三ヶ月。
私は家の敷地内に農園があることに気づき、そこから馬車馬のように働いた。
そう……、目的のために。私は努力を惜しまない。
「ふふふ……。いい感じに進んでるわ。これなら今日の報告会も目立った成果が聞けそうね……」
上機嫌にニヤニヤしっぱなしの私の耳にノックの音が響く。
「失礼します、お嬢様」
「あ! ありがとう。皆様お揃いなのかしら?」
「ええ、広間に通してあります。ですが、困ったことがおきまして……」
「困ったこと?」
「はい。事前の知らせもなしに、アルフレッド様が……」
「はあ?」
事情を聞いた私は小走りに応接間へと向かう。
(どうして突然私の屋敷へ?)
メイドの話では本当になんの前触れもなしに、いきなりアルフレッドが訪れたというのだ。
本人曰く、ただ寄っただけだというのだが、そもそも婚約破棄をした相手の家に突然押しかけるなんて普通ありえない。絶対になんかあるに違いない。
「い……一体、なんなのかしら? はっ……まさか!」
まさか何かのフラグ?
ゲーム前だから情報は乏しいが攻略キャラクターが来たということは、きっと何かのイベントに違いない。
(でも、設定だと婚約破棄後は頑なにリーザに会おうとしなかったはず……。まあだからこそ油断していたわけだけど)
では一体なぜ?
婚約破棄の日以来、こちらからコンタクトは取ってないのに。
(ともかく、アルフレッドに聞いてみるしかないわね)
応接間の扉を小さくノックする。
「失礼いたします」
「来たか……」
アルフレッドは中央に位置するソファに腰掛けていた。
目の前には紅茶とクッキーが出されている。
「遅かったな」
「あ……すみません。執務中……いえ、ちょっと取り込んでいたもので……」
何がフラグを立ててしまうのかが分からない。
発言は慎重にしないとだ。
「ところで、本日はどういったご用件でしょうか。何かお約束をしていた記憶はございませんが……」
「近くまで来たから少し立ち寄っただけだ」
「は……はあ。ですが」
普通、婚約破棄した相手の家こないよね? っていう私の疑問はとっくに伝わっていたらしい。
「破棄したとて、お前の家と繋がりが全くなくなるわけじゃない。名門貴族だしな。お前の父親をないがしろにしたとあれば、臣下を思わない非情な後継者と見なされるだろう?」
「ああ……」
なるほど、そういうわけか。
世継ぎとしての振る舞いを考えれば、それなりに仲良くしてるパフォーマンスをしていた方がいいもんね。
「ですが……。父は今、外出しておりまして……」
「構わない。ただ立ち寄ったと言っただろう?」
(うーん、じゃあ本当に顔見せに来ただけなんだ)
それなら差し支えない感じに対応しておけば、ひとまずは安心しても良さそうだ。
ホッとする私にメイドがこっそり耳打ちした。
「お、お嬢様。いかがしますか? 皆様お揃いでお待ちしております。事情を話して、別日に改めましょうか?」
「あ、そうよね。えっと……」
バッドタイミングだ。
ほっとくわけにもいかないけど、私はこれから大事な用があるわけだし。
でもこれがまさかのバッドエンドフラグに繋がるとも限らないし……。
ここで帰すわけにもいかないし……。
「ん? これから何かあるのか?」
「そうですわ! せっかくですからアルフレッド様もおいでくださいませ。きっとびっくりしますわよ!」
私はアルフレッドを広間へと案内することにした。
「一体何があるというのだ?」
「ふふっ、それはまだ内緒ですわ」
そうして連れてきた先は屋敷で一番の大きさを誇る来賓用の広間だ。
「ぜひ、ご覧くださいませ! アルフレッド様!」
勢いよくドアを開けるとアルフレッドの瞳が大きく見開かれる。




