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突然ですが、私。追われています

私は走る。

息は絶え絶えで、足ももつれて今にも転びそうだ。

心臓がせわしなく動いて、痛いくらい。


高いヒールではうまく走れないし、髪はボサボサだ。

でも構ってなんかいられない。

私は立ち止まれない。

人気のない城内……。

普段立ち入らない場所だから、今自分がどこを走っているのかも分からない。


(でも……! 捕まるわけにはいかない! だって私は……!)


焦りに唇をキュッと噛み締める。


「……っ!!」

振り返らない。

もうすぐ側まで来ているのが手に取るように分かるから。

回廊を抜けた先、ほぼなだれ込むかのように扉を開ける。


「ああっ!」


しかし、其処は白い豪奢な装飾が施されたバルコニーだった。

空には満月が煌々と輝き、灯りがなくても辺りを容易に見渡せる。

だからこそ、私は自分が絶体絶命のピンチに追い込まれたと愕然とした。


「……こ、こんなの無理よ!」


見渡してみても、辺りには逃げられるような場所もない。


そしてバルコニーの外。

視線の先には星空が、下には王宮の庭園が広がっている。

しかし、この3階の高さからは安易に飛び降りれそうもなかった。


「もう追いかけっこは終わりですよ、リーザ嬢。観念なさってくださいませ」


カツンと足音を立てながら、暗がりからゆっくりと人影が近づいてくる。

バルコニーを背にしてキッと睨みつければ、声の主がゆっくりと月明かりの中へと現れる。


「くっ……」


こんな状況でも相手に魅入られてしまいそうになる。

キラキラと輝く金糸のような髪に透き通るような青い瞳。

上背がある体にぴったりとした白い衣装は細やかな刺繍が施されていて、高貴な身分であることがうかがい知れる。

 声も人気男性声優のボイスがする。

 どこから見ても完璧超人なイケメンだ。


そう、まるで……。乙女ゲームに出てくる王子様のような。だがしかし……。


「そうやって、猫かぶるのやめたら?」


 私の言葉にきょとんとしたイケメンは急に上機嫌で笑いだした。


「ふふ……っ。強がっちゃって。可愛いわね。アタシ、そういう素直な反応はだーい好きよ?」


困惑する私をよそに、ゆっくりと近づいてくる。


「さっきまでは……令嬢たちから憧れる王子様みたいだったのに……。ベルモット様、どういう風の吹き回しなの?」


長い指先がすっと私の頰に添えられる。


「ふふ……、だってもう隠す必要がないものね」


 そう、ベルモットは不敵に笑う


「……悪いけど、アナタに拒否権はないの。正体を知られちゃ放っておくわけにはいかないわ。アナタの取れる選択肢はたった一つだけ。もし、断りでもしたら……。フフッ、言わなくても分かるでしょう?」


乙女がときめくような笑顔なのに、瞳だけは笑っていない。

その鋭さに私の背筋に冷たいものが走る。


(で……でも、私は絶対にこの人の言いなりにはなれない……!)


(私には……、絶対に成し遂げなくちゃいけないことがあるんだもの!)


自分を励ますようにぎゅっと拳を握りしめて、私の目の前にいるイケメン、ベルモット卿を睨みつける。


「……ふふっ。さあ? 観念しなさいな。大人しくしてれば悪くしないわ。私、実はとっても優しいからね♬」

「ぐっ!」 



 目の前には敵、後ろにはバルコニー。

 どうやっても逃げられない。


 ……でも!


 ここでやられるわけにはいかない……。

 推しのためには死ねる。

 そのためなら私はどうなってもいい!



「それならこうすればいいのよ!」


 ベルモットの手を払い、私はバルコニーに足をかけ、空中へと躍り出た。

 絶対に捕まるわけにはいかない。


 そうしたら、破滅フラグが立ってしまうから。

 絶対に! 絶対に阻止しなければ!

 自分の身がどうなろうと怖くない!



「すべては! ハッピーエンドのために!」



ブックマークや感想などいただけるとめちゃくちゃ励みになります〜!

初の悪役令嬢ものです、よろしくお願いします!

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