エネルギー面
★つぎ、エネルギー面→ギリギリ……?
石油に関して、これまた言わなくても分かる人が多いだろうけど、日本は国内で消費する石油の多くを海外から輸入している。国内の石油動勢を伝えた2019年版によると、日本は99.7%の石油を海外からの輸入に頼っている。一方で、日本でも少ないながら取れるらしい石油の量は2017年時点で5億4600万リットル。この量は約328万台の自動車を満タンにさせるだけのガソリンが供給できるだけの量らしい。まぁまぁ良いんじゃないとか一瞬思ったけど、それは幻(遠目)
国内の〝ガソリンだけ〟の消費量で日本は年間、1876億6390万リットルも使ってる。輸入止まったらどうなるかはもうお察しだよね。重油とか軽油の数字も出すと……転移したら、ぎゃあああああ(発狂)って感じになる。
国内の自動車交通は完全に死んだと言って良いでしょう。
ただ、唯一の救いは石油生産量は上げる事が出来るという事。と言ってもMAXまで上げて年間100万キロリットル、つまりは10億リットルぐらい。転移前の水準から見れば爪の先程度しかないけど無いよりはマシ。きっと異世界に転移した後は石油ちょっとでも取れて良かったって皆思うと思うよ。
ここまでが、生産できる範囲の石油。ただ、日本も馬鹿じゃないから非常時用に貯金はある。爪の先程度の国内生産には完全に頼っていません。
2019年時点で日本国内の石油備蓄は国家備蓄が131日分、民間備蓄が87日分、産油国共同備蓄が6日分で、合計224日分ある。
ちなみに、天下の在日米軍はこれとは別に日本国内にFAC3090、FAC3144、FAC2006、FAC5032、FAC5036、FAC5039と言われる貯油施設を持っていて、めっちゃ燃料持ってる。FAC3144だけでも最大で6億6888万2265.1リットル。たぶん、施設全体ではもっと多い。すごいっすね。
つまり、転移後、燃料に関してはすぐに大混乱になる事はない。しかし、政府は転移後1週間以内、遅くとも2週間以内には異世界転移した事実が分かり次第、国内の石油資源の節約政策を確実に取る。国内の生産量が爪の先程度だからしゃーない。
民間への石油の提供は限りなくゼロに近くなるだろう。石油の提供は自衛隊、警察、消防、自治体、公共バス、発電所、燃料運搬業、運送業、農業に優先される筈だ。
よって、転移後の日本国内の道路交通の状況は1ヶ月後には自家用車は完全に姿を消して公共の乗り物しか姿を見せなくなるだろう。公共バスが走っていない田舎の山間部集落では行政の職員や住民が人力で物資を運ぶという光景も見られるようになる筈だ。そしてこの状況は、有力な石油油田が発見されて輸入体制が整うまで続く。
ただし、ここまでの節約政策をとると、国内の備蓄石油の消費量は必然的に最小限となる訳で、備蓄石油は1年以上は確実に持つはずだ。適切な運用がされれば、2年は持つかもしれない。
なお、この燃料だけでも、状況を経済に当てはめて見て見ると、日本にとってはかなりヤバイ。前述で述べた経済の問題はあくまでも燃料問題を抜きにして考えたやつだから、前述の経済☆壊滅プラスで、この燃料問題が合わさって悪魔合体する事になる。ようは、ただでさえ転移して壊滅した経済に燃料不足で移動制限が加わって、経済がより悪化して鈍化する。だから、転移した日本はなんとしてでも最長2年以内には石油を見つけなきゃならない。見つけられなければ、備蓄石油を使い果たして年間10億リットルの沼にはまる。怖いね(昇天)
ちなみに、2年以内に石油を見つけられなかった場合は、公共バスの運行本数大幅削減待ったなし。自治体への提供も大幅削減。自衛隊、警察、消防、燃料運搬業、農業に集約される。日本経済は悪化どころか大幅に縮小。回復の見通しも立たなくなる。早い所が、戦時中の日本とか今の北朝鮮みたいな経済、燃料事情になる。ただし、北朝鮮よりマシなのは石油が出る点。これによって北朝鮮よりは遥かにマシな生活が出来る。あと戦時中の日本よりマシなのは戦時中は当然の事ながら戦争に向かっていた国のエネルギーが全て国内に向けられる訳だからやっぱり、遥かにマシな生活が出来る。
でも、ここまで乗り物の燃料の問題だったけど、この次の問題の方が実は遥かにヤバイ。人によっては危機感を共有できるはずだ。それは灯油の問題である。知っての通り、日本には冬がある。転移後に気候が変わって亜熱帯にでもならない限り、非常に切迫した問題だ。冬にはストーブを点けて暖を取る訳だが、そのストーブを動かすには灯油が必要な訳で……つまり、乗り物の燃料ばかり生産する訳にもいかないのだ。もしも、2年以内に有力な石油油田を見つけられなければ、北海道や東北等では最悪、凍死者が出かねない。日本凍えるぅ!(カチンコチン)
石油の次は電気だけど、電気は意外となんとかなるだろう。現代日本が転移した場合、日本政府は国内の原子力発電所を反対派の意見を全て問答無用で無視して再稼動させる筈だ。というかしないと日本は火力発電所に頼りすぎてるから、転移後はただの燃料の浪費になる。少しでも資源を節約する為に、原子力発電所を再稼動させて、可能な限り石油を使うタイプの火力発電所を停止させていくだろう。
ただし、なんとかなると言っても、計画停電は確実にある。少しでも火力発電で使う石油を節約する為だ。
なお、電力供給だけは例え2年間の間に有力な石油油田が見つからなかったとしても、続けられる可能性が高い。それどころか、場合によっては電力供給だけは状況が良くなる可能性もある。何故ならば、日本では石油は取れないが、石炭はかなりの量が取れるからだ。日本の石炭埋蔵量は日本の消費量にして132年分もある。石炭の採掘が何とか再開され、石炭火力発電所が増設できれば、計画停電も無くなるかもしれない。そうすれば、電気には困らなくなるだろう。
そして、ここに来て朗報。計画停電はあっても電力供給に大きな問題が無いということは、電車はフル稼働できるという事である。自動車交通は死んだが、鉄道交通は生き残る。転移後の日本では有力な石油油田が見つかるまでは電車が命綱となるでしょう。大鉄道輸送網時代到来っすね。
ただし、いつまでもずっと鉄道だけが命綱になる事は無い。鉄道が輸送の命綱になれるのは転移初期だけだろう。何故ならば、そもそも、有力な石油油田が発見され安定供給が実現すれば、燃料不足問題は解決する訳で、鉄道だけに頼る必要は無くなる。
または、2年以内に有力な石油油田が発見できなかった場合でも、これは同じだ。その時は前述した様に、国内の自動車交通は備蓄石油の使い果たしによって、ただでさえ、節約で絞られていたのに交通の幅はさらに絞られる事にはなるが、しかし、それは短期から中期的(数年単位)な視野にたった場合であり長期的(十年単位)な視野に立った場合はそうではない。前述したように日本には石炭が沢山ある。これの安定した採掘が再開され安定供給が可能となれば、運送業やバス等の公共交通機関ではガソリン自動車の代わりに木炭自動車の導入が進められる筈だ。資源上の問題や生産体制上の問題から、現在の様に市場の要求にすぐに答えられる様な生産体制の構築は不可能だろうが、十年単位の時間をかければ、少しずつだが、日本全国に必要な数のバスであったりトラックを行渡らせる事は出来るはずである。
この場合、鉄道は有力な石油油田が見つかった場合に比べて、かなり重要な日本の生命線である事には変わりは無いが、それでも、備蓄石油枯渇直後の自動車交通が死んでる状態に比べれば、その役割と負担は若干、軽くなるだろう。備蓄石油の枯渇で運行本数の減っていた公共バスは、ガソリンから石炭に移行した車両が増える事によって運行本数が増えるだろうし、運送業界もトラックの運行量を増やせる筈だ。ようは、すぐには無理だが、時間とともに自動車交通の状況は少しずつ改善していくのだ。石炭がとれて良かった良かった。
もしくは、木炭自動車ではなく石炭を液体化する人造石油プラントを建設して燃料問題の解決を狙うという選択肢も日本政府にはあるかもしれないが、こちらはまず、本格的な人造石油プラントの建設を一から進めなければならないという問題と、生産コストの問題から実行には難しいかもしれない。




