安全保障面・国内の外国軍を自衛隊に統合できるか
★安全保障面・国内の外国軍を自衛隊に統合できるか→・・・
結論からまず言うと恐らく無理。
異世界転移後、日本国内には在日米軍やロシア軍の2軍を筆頭に複数の国の軍隊が転移に巻き込まれる可能性が非常に高い。
この中で最大の懸念材料は在日米軍とロシア軍の存在である。
その他の軍隊は、転移に巻き込まれたとしても国内に基地が存在しない為、安全保障上の懸念材料としては低く見積もれるだろう。軍隊は基地が無いとその能力は大幅に制限される。
だが、米露両国には日本国内に基地が存在しており、アメリカには広大な在日米軍基地が。ロシアにいたっては北方領土絶対返すの反対ズと化した祖国精神が旺盛なロシア国民が多く住む北方領土があり、しかもやろうと思えば自給自足が可能な大地(北方領土)を持っている。
この両勢力は異世界転移後の日本政府の国内安全保障上の最大の頭痛の種だろう。
恐らくこの国内安全保障上の問題を解決しようとした為なのか、作者は何度か日本が異世界へと転移する小説で在日米軍やロシア軍を自衛隊が吸収する展開(自衛隊への統合or大規模な装備の吸収)を見た事あるが、はっきり言ってこの展開が起きる可能性は限りなくゼロに近いだろう(※ただし、大規模な装備の吸収ではなく、小規模な装備の吸収自体はあり得る。例えば在日米軍が保有している艦艇を1隻購入したりとか。もしくは、統合が起きるとするならば、日本が異世界の脅威の前に滅亡の淵に立った時等が考えられる)。
軍事勢力の統合というのは基本的に両者の間に相当な信頼関係が無ければ成立しません。
これは古今東西において数多くの武装勢力が武器を捨てるのをやめようとしなかった歴史を見ても分かると思います。
それが簡単にできるならば、地球はとっくに戦争のない平和な世界になっている筈です。惑星統一政府だって今頃できているでしょう。でも現実は平和な世界には程遠く惑星統一政府は夢のまた夢というのが現実です。
なぜ、全世界の少数民族が武器を捨てようとしないのか?
なぜ、アフリカや中央アジアで武装勢力の武装解除を交渉のみで実現した国連職員や国際NGOの職員の特定の個人が世界中から賞賛され勲章まで貰えたのか?
その理由を考えて見て下さい。
それだけ、武装している勢力から武器を取り上げるというのは難しい事なのです。
ですが、こう思う人も居るかもしれません。
いや、日本しか頼りの無い外国勢力が日本の頼みを断れる訳ないやろ!と。
確かに、異世界転移後の日本国内における力関係は日本>アメリカ>ロシア>>超えられない壁>>その他の構図となる筈です。
日本政府からの支援が無ければ生きていけない外国勢力は日本からの頼みとあれば、なかなか断りずらい空気や関係となっているでしょう。
ですが、軍事力の放棄に関ってくると話が違ってきます。
なぜならば、異世界転移した外国人達にとって、特にアメリカ人やロシア人にとっては在日米軍と北方領土のロシア軍の存在は本国無き状況下において彼ら彼女らを守る最後の盾であり矛だからです。
これは、異世界の脅威から身を守るという意味もありますが、これは日本に対しても言える事です。
例えばですが、異世界転移後、日本政府が米露の両軍の戦力を自衛隊に吸収しようと画策したとしましょう。
北方領土で暮らすロシア人の多くは北方領土で生まれ育った人々が増えた結果、今やその大半が、北方領土はロシアの領土であると考え日本への返還に強く反対しています。そして、異世界転移後、これらの祖国精神を持った人々に残された土地は生まれ育った北方領土だけになる訳です。彼ら彼女らロシア人にとって、北方領土こそが唯一残されたロシアの大地となるのです。
北方領土に住むロシア人はロシア軍がもしも解体されて吸収されたり、解体されなくても兵器を取られたりすれば、日本に北方領土を奪還される可能性をまず最初に考える筈です。もともと転移前から同盟国でもなんでもないただの隣国である日本に対して、ロシア人とロシア軍側は一切の信用をしていないでしょう。むしろ、ロシアの宿敵、アメリカの同盟国である事から警戒すらしている筈です。
一方で、アメリカ軍の方は、日本とのこれまでの関係もあり、ある程度の信頼関係はあるでしょう。
ですが、日本が突然、在日米軍の軍事力を吸収する動きを見せた場合には、日本に居るアメリカ人達はそれをどう思うでしょうか。良くは思わないでしょう。
アメリカ人にとっても軍は本国無き後の心のより所でもあり、自分達の身を守る最後の盾と矛なのです。また、日本国内のアメリカ人にとって在日米軍は日本国内における最大級の自国の行政機関でもあります。
これは考えてもらえば、分かると思いますが、例えばあなたが、外国に旅行に行って何か重大なトラブルに巻き込まれたとします。この時、トラブル解決の為に、自国の大使館を頼るのと、その国の機関を頼るのとではどちらの方が信頼感と安心感があるのかという事です。多くの場合は自国の大使館を頼った方が信頼感と安心感があると答えるのではないでしょうか。その国の機関を頼るというのには心のどこかで不安が付きまとうはずです。
本当に大丈夫なんだろうかと。
時には悪い想像をする事もあるでしょう。
この様な不安が異世界転移後の外国人の行動を考える上で重要なファクターの一つとなり得るでしょう。
それに、アメリカ軍側の立場から安全保障的に長期的な視野にたった場合でも、将来的に自分たちを害する政権が日本に誕生する恐れも考える筈です。日本にその様な政権が誕生した時に軍が無ければ困る訳です。
いざ、異世界転移が発生すれば、難民と化している外国人に対して心無いヘイト活動をする輩はほぼ間違いなく一定数現れるでしょう。
これを日本にいる外国人達の側から見れば、もしもこういうヘイト活動をしている様な輩が日本の政治の主導権を握る様な事が万が一にでもあれば……や、異世界転移で切羽詰ってる日本の世論がそっちの方向に傾いてしまったらや……等々の可能性を考える筈です。
実際、古今東西の国の歴史を見ても有事や国難や重大な社会問題が発生した際に国民世論が大変動を起こした例は世界中で見られます。
例えば最近の事例で言うならば、ドイツとアメリカが挙げられるでしょう。
ドイツでは難民を100万人規模で受け入れた結果、それをきっかけに国内の政治状況が一変。それまで事実上、左派政党しかなかったドイツ議会において、戦後初めて右派政党がドイツ国内で大躍進をとげ、野党第一党にまで成長しました。さらにはドイツが難民を受け入れた事をきっかけに、ヨーロッパ全域でEU懐疑派も勢力を伸ばしました。
アメリカでは、コロナによる影響で大統領選挙の結果にまで大きな影響を与えました。
コロナ前、トランプ前大統領の再選はほぼ確実視されていました。しかし、コロナによる社会混乱の結果、支持率が下がり、その結果、現在のバイデン大統領が誕生しました。
それに、歴史的に見ればナチス・ドイツも国民世論の大変動を起こした例としては良い例です。
ナチスは当時、比較的豊かな資本家が多かったユダヤ人をスケープゴートにし、第一次世界大戦後の不況で混乱するドイツ国民の世論を上手く扇動して政権を握り、ユダヤ人の迫害と大量虐殺を実施しました。この様な非道な行為を行ったナチスは民主的に選ばれた政府だったのです。これはいかに民主主義国家であったとしても、一歩道を踏み外せばそこにはいつでもナチスが居るという事の証明なのです。
ナチスを見れば良く分かりますが、民主主義は必ずしも完璧な政治システムではありません。あくまで民主主義は数多ある国の統治方法の一つであり、手段でありシステムなのです。
これらの世界の政治の歴史は、特にナチスの様な政権が民主主義によってかつて誕生したという事実は、異世界転移後の外国人が最も恐れて懸念する歴史的事実でしょう。
もしも、日本人が自分たち外国人に対して排他的になってしまったら……異世界転移後、日本以外の地球国家が無くなり、日本一国しか頼りにできない日本国内の外国人達にとって、これほど恐ろしい想像はありません。
さらには、日本に異世界転移の混乱に乗じて強権的な政権や独裁政権が誕生する事態が発生する可能性も捨てきれません。
この様な事を考えれば、在日米軍も北方領土のロシア軍も、転移に巻き込まれたアメリカ人やロシア人からすれば、軍の存在は本国無き状況においても、自分達の身を守る唯一の存在なのです。
(そもそも在日米軍とロシア軍を自衛隊に統合する話が出てる時点でその時の日本政府はかなり思い切りが良い事やってんなというか、強引な危ない橋渡ってんなとそんな気がしなくもないですが……というか見方によってはその時点でも充分に強権的な政権が誕生してしまったとの判断もできる)
この様な存在を自衛隊に吸収するというのは限りなく不可能に近いでしょう。
もしも強引にやったら、もはや本国が無く背水の陣状態の両者は追い詰められて何をしでかすか分かりません。
それこそ、政治面のコラム?エッセイ?で解説した様に、外国軍によるクーデターが起きかねません。また、事態の推移によっては、異世界転移後に絶対に避けなくてはならない内戦なんていう可能性もありえます。
これらの在日米軍やロシア軍の戦力を日本が吸収するとするならば、これらの勢力からの絶対の信頼を日本が勝ち取らなければならないでしょう。
信頼が無い状況では自衛隊への吸収は不可能と見て良いはずです。
現実的に考えるならば、在日米軍とは現行の日米安全保障条約の名の下で。ロシア軍とは日米安全保障条約の様な安全保障条約を新たに締結して相互の協力体制を構築するのが最も安全で現実的なプランではないでしょうか。
ですが、本当に自衛隊に外国軍を統合する事はできないの?と問われればできなくはないという答えになります。
ただし、上記でも述べたように非常に高い政治的、思想的、安全保障的ハードルがあります。
つまりですが、この問題を解決できる非常に高い政治スキルを持った人間が時の日本政府の総理大臣とか大臣に居たとするならば、可能でしょう。
ですが、超高難易度クエストです。
そんじょそこらの税制改革であったり、郵政民営化とは訳が違います。
それも、異世界転移によってそれ以外にも解決しなければならない数多の大問題が山積するなか、この超高難易度クエストを同時平行で処理できる政治家でなければなりません。
現実的にそれは可能でしょうか?
正直言って作者は、そんな政治家はこの現代日本には存在しないと断言できます。
いや~……だってねぇ……?
詳しくは話題が逸れるので今回は言いませんが、今絶賛、有事中であるコロナの状況下な訳ですが、このコロナが始まった2020年から現在までの国会の様子を思い出してみて下さい。
この日本で一番マシな政党である自民党は普段は憲法改正であったり、有事になったらどうするんだ!とか言ってたにも関わらず、本物の有事がいざ襲ってきたら右往左往するばかりの体たらく。外国の変異ウイルスは国内に入れない!とか言ってたくせに検疫ガバガバ過ぎて今や変異ウイルスが主流。強制力を持った対策も殆どやらない。国民や全国の知事が感染者の行動などの罰則化を求めたにも関わらず、重たい腰を上げたのがなんと事態が始まって1年以上が過ぎた2021年の2月。その法案の中身もかなりの甘々。なんだったらコロナで困窮する国民への経済支援策とかでも明らかな変な偏りまで存在する有様。(※ただし、右往左往と体たらく感は否めないが、客観的データと2020年前半のコロナ対策に対する第三者調査の結果からすれば、少なくとも2020年前半は最低限の事はできていた。また、現在(2021年7月現在)でも諸外国の感染状況と比べれば充分抑えられているレベル。この点は非常に重要。日本で一番マシな政党としての最低限の威厳は守った。”野党と比べれば”)。
一方の野党(立憲民主、共産、国民民主、社会民主、れいわ新撰組の面々)はと言えば、コロナが日本に上陸してもコロナそっちのけで桜を見る会をいつまでーもやっていたり、ようやくコロナの話題をし始めたかと思ったら、全国の国民や知事が感染症対策で罰則強化を求めているにも関わらず、それを無視してやった事と言えば、ただでさえ、諸外国から見れば甘々な罰則内容の法律案だったにも関わらず、これから罰則内容をめちゃくちゃ軽く修正させて法案を骨抜きに。それでいて、さらにはコロナの第4波が始まったかと思ったら、全国でコロナ感染者が激増するなか、立憲民主党が何故か大阪”だけ”を槍玉にあげて「一番悪いのは府知事だ」などと、府知事と地域政党の維新の会を批判しだす始末。なーんで突然、大阪だけを槍玉に挙げて攻撃し始めたんでしょうかねぇー……怖いですねー……。ヤダナー、怖いなー怖いなー。さらに、野党くん達は2020年に行われた全国民対象の10万円の一律給付金の支払いや企業への補助金の支払いに関して、政府に対して、支払われるのが遅い!だとか、デジタル化が進んでないのは政府が悪い!みたいな事よく言ってたけど、元を正せばマイナンバーの制度が作られた時に、デジタル化に猛反対して政府のデジタル化推進政策を骨抜きにしたのはお前らだろぉん!?メディアと一緒に国民の不安を煽りに煽りちらして「監視社会が来る!」とか言ってたの作者は絶対に忘れないゾ。野党くん達、一体どこの口で言ってるんでしょうねー……ヤダナー、怖いなー怖いなー。手のひらグルッグルですやん。給付金だったり補助金が届くのに時間がかかってるのは明らかにあの時、デジタル化に反対してた奴ら(野党くん&メディア)に責任あるから。というか、野党とか関係なく反対派はよくデジタル化をデジタル独裁とか言ってるけど、その理屈だと、普段、こういう人達がなにかと人権先進国とか言って持ち上げてるヨーロッパの国全部がマイナンバーよりも遥かにデジタル化進んでる訳だから、独裁国家って事になっちゃうんですがそれは……はぁ~(クソデカため息)(ちなみに、作者は維新の会は他の野党の面々と比べれば、雲泥の差で充分まともな分類に入る政党だとは思ってるんだけど、如何せん選挙に弱すぎるのが問題)。
右往左往と体たらく感が否めない与党と政府。
批判に終始し永遠に政権の揚げ足取りしか考えず、なんなら、ライバル政党の支持率を下げる為に有事の根本的原因である”コロナ”を政治利用までしだす悪質な政党までが存在する野党。
国会……百鬼夜行、魑魅魍魎の巣窟かな?(すっとぼけ)
まぁ、こんな感じな訳ですが……この様子を見て異世界転移後に、異世界転移で生じた諸問題の対応をしながら、同時平行で国内の外国軍を自衛隊に統合できる様な優秀な政治力を持った政治家が日本に存在している確率ってどれくらいなんでしょうかね……?
異世界転移はコロナと同じく政府のやるべき仕事が非常に多い。
さらにそれと同時平行で野党、政治家、国民、メディアからの批判にも政府は晒されるだろう。
その様な状況下で、コロナでも手一杯であった政府が異世界転移でも手一杯となる状況は容易に想像がつく。というか、コロナよりもやる事多いから、コロナのレベルじゃすまない。
そしてその様な大変な状況下で、外国軍の自衛隊への統合などという明らかに政治力を消費する難問に現代日本の政治家が果たして挑めるだろうか。
そして、なによりも挑んだとして、成功を収めるだけの実力を持った政治家が存在しうるだろうか。
挑んでも失敗する様では意味がない。むしろ失敗しただけ、最悪と言える。失敗する様なら最初からこの問題には手をつけない方が遥かに良い。
なぜならば、失敗したという事は日本政府とアメリカ軍、ロシア軍の関係が軽度、重度を問わず少なからず悪化しているであろう事が予想されるからだ。失敗とはそれすなわし交渉決裂を意味する。
作者ははっきり言って、この問題を解決できる政治家のレベルは田中角栄や伊藤博文レベルの政治力を持った政治家でなければ不可能だと思います。田中角栄後の日本では間違いなくトップクラスで高い政治力を誇り国際的な評価においては恐らく歴代日本の総理の中で1番の評価を得た安倍前総理大臣でもこの問題では恐らくは厳しいでしょう。田中角栄や伊藤博文レベルの政治力を持った政治家以外の政治家では事態をただいたずらに悪化させるだけだと思います。
現在のコロナにおける状況下の日本と、過去の日本の政治史を見て考えてみても、これを達成できる政治家が現代日本にいるビジョンは作者には残念ながら一切見えません。
さらに、これはあくまで、作者の私見ですが、過去の日本の政治家と今の政治家を比べると、現代に近づくに従って、政治家全般の質とレベルが低下している様に感じます。もちろん、その傾向に抗っている良い政治家も存在しますが、政治力の低い政治家が国会議員全般で増えている様に感じます。それを考えると今後にも、この問題に挑める様な高い政治力を持った政治家が出現する可能性はかなり低いのではないかと作者は思います。
むしろ、時計の針が進むほどに可能性はさらに低くなるかもしれません。
また、実はこれ以外にももう一つ、日本が外国軍を統合するのは難しいであろう理由が存在するのですが、それは前回解説した見えない地球の目問題です。
見えない地球の目問題についてはそちらをご覧下さい。
どういう事かというと、例えば、国内の在日米軍とロシア軍を日本が自衛隊に吸収する事に成功したとしましょう。
しかし、その後、日本に再び転移が発生し日本が地球に戻った場合を考えた時どうなるでしょうか?
アメリカやロシアはその様な事をした日本に対して、強烈な反発をする事は容易に想像がつきます。両国関係に致命的な打撃を与える事にも成りかねません。
これを考えると、日本政府は在日米軍やロシア軍を自衛隊に吸収するという選択肢は可能性が限りなく0に近かったとしても、日本が再び地球に戻った時の事を考えれば安易に在日米軍やロシア軍を吸収するという選択肢は、日本の安全保障上でも外交戦略上でも取れない可能性が非常に高いのです。
今回、紹介した全ての問題をオールクリアして在日米軍とロシア軍を日本に安全に統合できるとするならば、在日米軍とロシア軍の側から自発的に日本に対して自衛隊との統合の話を持ち込む展開くらいが無いと厳しいかもしれません。
その様な展開が起きる可能性は非常に低いでしょうが……。




