第17話 倒せない
間違えて、同じ話を投稿してしまったようですので、修正しました
こちらが本当の十七話です
私はファミコンをテレビに繋げ、カセットを蓋に押し込む。
ガチャリ、と音がする。
「おお!!」
「入りましたね!!」
感動の声を上げるセリーヌさんと私。
一方、シャルロットさんは苦笑いだ。
「入るようにできているんですから、入るのは当たり前じゃないですか」
「いやいや、すべてのカセットがぴったりとこの穴に嵌るようにできているとしたら、相当凄いことですよ、これは」
魔導具じゃあ、同じ種類のはずの部品の大きさや太さが全然違うなんてことは当たり前なんだから。
まあ、職人じゃないシャルロットさんには理解できないかもしれないが。
「じゃ、じゃあ……スイッチをいれますね! 覚悟の準備は良いですか!」
「え、ええ! やっちゃって、ショシャナ!」
私は緊張しながらファミコンを起動させる。
するとテレビの画面に不思議な文字のようなものが浮かび始める。
「やっぱり動いてる……いつ見ても感動するわね!」
「分かります。私も一日一回は同じものを見ているんですが、いつ見ても興味深いものです」
映像がどんどん切り替わっていき、そして止まる。
よし、本番はここからだ。
「良いですか、セリーヌさん。これは、ですね。驚かずに聞いてくださいよ?」
「何? これ以上、何か、凄いことがあるの?」
「……私も、これから試すんですけどね。この中の映像、動かせるらしいんですよ!」
私はそういって、コントローラーの十字架部分を押した。
すると……
変な音がして、少しだけ画面の中が動いた!!
「う、動いた!!」
「す、凄いわ!! ね、ねえ! 私にもやらせて!!」
「良いですよ。ここを、押すんです」
「ええ……わぁ! 動いた、動いたわ!!」
いやー、凄いな、“異世界”人。
あんな物騒な兵器を作る野蛮人なくせに、こういう面白い玩具を作れるなんて。
まあ、それを修理した私も、当然凄いんだけどね!
「あのー……まだ、スタート画面なんですけど」
苦笑いのシャルロットさん。
この人は、全く、全然わかってないな。
「スタート画面? よくわからないけど、続きがあるの? じゃあ、早く見たいわ」
「……まあ、それもそうですね」
このままでは日が暮れそうなのは確かだ。
私はコントローラーを操作し、“ゲーム”を始める。
すると次々と文字が浮かび、私の操作で進み始める。
「文字かしら? これ、もしかして、物語になってる?」
「らしいですよ。一応、説明書のようなものがあって、それを読んだので何となく概要は分かりますが……聞きます?」
「聞きたいわ」
頷くセリーヌさん。
さて、どう説明するか。私も正直、よくわからなかったからな。
「なんか分からないんですけど、人型の魔導具が出てくるんです。で、悪の魔導具が人々に迷惑をかけ始めたので、善の魔導具である主人公が、その悪を成敗するという話です」
「え? 何? 魔導具が主人公? ……難解ね。というか、悪とか善とかって、感情を持っているの?」
「この物語だと、その魔導具は人の心を持っているらしいですよ」
するとセリーヌさんは眉を潜めた。
「人型の魔導具が心を持つ? それは人の手による人間の創造じゃない。……随分とまあ、不道徳的な内容ね。人を創れるのは主だけよ。結婚の秘儀を受けた、正当なる男女が、聖なる交渉の末に主から授かるのが子よ。人が人の手によって、独力で子を為そうとするなんて、あってはならないことだわ」
憤慨しているセリーヌさん。
まあ、私も教義は違えど、同じイブラヒム教徒だから気持ちはわかる。
「『汝、人を作ってはならない』ですねー。でも、物語ですから、気にしても仕方がないのでは?」
呑気な声音で言うシャルロットさん。
それについては私も同意だ。
異教徒が作った物語に目くじらを立てても仕方がない。
如何に優れた科学技術を持っていようとも、所詮は主の教えも知らないような“野蛮”な“異世界”人の考えることだ。
「あ、始まりました。へぇ……こう動かすんですね! えっと、ここで攻撃ですか。おお! 倒せた!!」
いろいろ進めながら私は中の主人公を動かす。
「しかし……魔導具に命を与えておきながら、その魔導具同士を殺し合わせるなんて……やっぱり“異世界”人は野蛮ね」
「まるで剣闘士みたいですよね。私もそう思います。やっぱり、あの兵器の数々を見る限り、“異世界”人は殺し合いが大好きみたいですね」
「どうしてかしらね?」
「やはり主の教えを知らないからではないでしょうか?」
「まあ、それよね。どんなに技術があっても、心が貧しいんじゃあ仕方がないわ」
「全くもって同意です。……まあ普遍教会の教義は間違っていると思いますが」
「何か言ったかしら?」
「いえ、何も。……あ」
負けちゃった。
うーん、難しいな。操作が慣れない。
続けていけば上手くなるのだろうか。
「次は私にやらせてください」
「ええ、分かりました」
シャルロットさんにバトンタッチ。
シャルロットさんは……中々、軽快に続けていく。
「このゲームは初めてですが、ふむ、何となくで、何とかなるものですね。あ、ボスまで来ましたよ!」
が、しかしシャルロットさんはそのボスに敗北してしまった。
シャルロットさんは首を傾げる。
「私、こういうの、実はあまり得意ではないんですよね……」
「初めてなんだから、当たり前じゃない。私に任せなさい。仇を打ってやるわ」
「操作方法、分かります?」「二人がやってたのを見たわ」
そういってセリーヌさんはコントローラーを手に取る。
そしてボスに戦いを挑み始める。
セリーヌさんは……上手い!
あっという間にボスを倒してしまった。
「凄いですね、セリーヌさん」
「さすが、セリーヌ様」
「まあね! この程度、倍率三千倍の聖職任用試験を最年少で、そして第一試験、第二試験、第三試験をすべて主席で通過した、普遍教会始まって以来の大天才である、この私に掛かればどうってことないわ!」
唐突な自慢が始まった。
いや、まあ確かに聖職任用試験に比べればこの程度の敵、大したことがないのかもしれないが。
「よし、このまま世界を救ってやるわ!」
軽快にゲームを進めていくセリーヌさん。
途中まで私とシャルロットさんは大人しく見ていたのだが……
「あのー、セリーヌさん」
「なに? 今、良いところなんだけど」
「そろそろ交代してください」
「ええー」
「ええー、じゃないです。それ、私のですよ」
「でも、あなたはいつでもできるじゃない? ここは私に譲るべきよ」
「その理論なら、セリーヌ様。私も同じです。貸してください」
「順番的に私です! シャルロットさんはその次です」
「そんな順番、いつ決まりました? ショシャナ様はいつでも遊べるじゃないですか」
「そうよ、そうよ!」
「私は十三歳です! 皆さん、何歳ですか? 十八歳でしょう? 五歳年上のお姉さんとして、ここは年下に譲るべきです」
「年下なら年上に譲るべきじゃない?」
「その通りです。……ところで、私の方が少しだけセリーヌ様よりも年上です。交代してください」
「数か月じゃない!」
「十一か月の差、ほぼ一年です」
「誤差の範囲だわ」
「私は店主、あなたたちは客! 交代してください!!」
と、まあ多少トラブルはあったものの、話し合いの末、交代して使うことになった。
それから、どれくらいの時が経っただろうか。
「おーい、ショシャナ。もう夕方、店仕舞いだぞ……何やってるんだ?」
シメオンの声が聞こえてきた。
が、私は今、手が離せない。
「ちょっと、ちょっとだけ、待ってください。今、良いところなんです。ようやく、この『エアーマン』とかいうやつが、ようやく倒せそうなところで……」
「よし、ショシャナ! 今よ、今!!」
「ああ!! ハラハラします!! 私たちの仇を取って、世界を救ってください!!」
あと少し……あと少し!
よし、ここで倒せれば……
その時だった。
ブツン!!
画面が真っ暗になった。
「「「え?」」」
「店仕舞いって、言ってるだろ」
そこには引き抜いたコンセントを手に持つシメオン。
あ……
あああああ!!!!
「何してくれるんですか!!! あとちょっとなのに!!」
「仕事放り出して、遊んでるお前が悪いだろ!」
「それは……ですが、やり方があるでしょう! 壊れたら、どうするつもりですか!!」
直すの、大変だったんだぞ!!
「ショシャナ様の言う通りです! やり方というものがあります!!」
「そうよ!! これは、とてつもなく、貴重なものなのよ!!」
シャルロットさんとセリーヌさんも味方をしてくれる。
それに対し、シメオンは一瞬だけたじろいだが……
しかし、冷めた表情で言った。
「お前ら、こんな玩具で何時間も遊んで、恥ずかしいと思わないのか?」
「「「……」」」
そこで、私は我に返った。
私は……何をしているんだ!
大体、こんな画面の中の世界を救って、何になるというのだ!
「私としたことが……久しぶりのゲームで興奮してしまいました……」
「こ、これは……悪魔の玩具だわ! 人を堕落させる!!」
頭を抱えるシャルロットさんとセリーヌさん。
そこへ、シメオンは追い打ちをかけるように言った。
「というか、司祭さん。あんた、司祭服着ているが……ここには仕事できたんじゃないのか?」
「……あ」
セリーヌさんの表情が固まった。
「し、しまった!! わ、私としたことが!!」
と、そこで店の玄関の方から若い少女の声が聞こえてきた。
「あ、あの……ご、ごめんく、ください!」
「ここはショシャナ様のお店でしょうか? セリーヌ司祭様はいらっしゃいませんか? モンモランシ選教候閣下はいらっしゃいますか?」
この声は……ララ助祭とリリ助祭、だっけかな?
「ま、不味いわ……シャルロット。どうする?」
「……素直に謝るしか、ないのでは?」
これはお気の毒……かな?
まあ、仕事を放り出して遊んでいたのは自業自得だけど。
「おい、ショシャナ」
「シメオン? どうして、そんな怖い顔を?」
「俺に店番押し付けて遊んでいたことについて、何か言うことはないか?」
「……まことに、申し訳ございませんでした」
まあ、あれだ。
ゲームは一日、一時間まで、ということだね。
私はそんな結論を出すのであった。




