第12話 “異世界”人の武器は過剰防衛
「お! シメオンじゃん、帰って来ていたのか?」
「久しぶりだな、シメオン!」
「おう! まあ、積もる話は今度、しようぜ!!」
道を歩くたびに、シメオンの友人たちが彼に気付き、挨拶をしていく。
そのたびにシメオンはその友人たちに気さくに挨拶を返す。
……正直に言って良いだろうか?
ちょっとだけ、気まずい。
分かるかな?
私にとってはそれほど親しくない人物と、真横にいる幼馴染が、親し気に話している、この状況。
なんとなく、なんとなく……モヤモヤする。
「あら、シメオン君?」
「戻ってきてたの?」
「言ってくれれば良いのに!!」
そして気付くと女共の人だかり。
あー、そういえば、こいつモテてたな。
全く、どこが良いのか分からない。
確かに顔は、まあ、整っているかもしれないが……
意地悪とかするし、酷いこともたくさん言うじゃん。
……それは私、限定だったか。
「そうだ? そこのお店でお食事でも、一緒にしない?」
女の一人がそう提案した。
が、しかしシメオンは苦笑いを浮かべ、首を左右に振る。
「お誘いは嬉しいが……もうメシは食べてきた後なんだ」
そして女共の視線が私に集中する。
ようやく、私の存在に気付いたらしい。
ところで、もうすでにお察しかもしれないが私には同年代の友人というものがいない。
どうしてだろうか……いや、原因は分かっている。
趣味の問題だ。
私は魔導具の作成や修理なんかが好きだし、当然それに関係する魔法理論を学ぶのも好きだし、いろんな学術書を読むことを趣味としている。
私は小さい頃からそういうことを趣味にしていたのだが、どうやら十代の少女としてはかなり変わっているらしい。
だから、同年代――十三歳から+-二歳――の女の子たちとは話が全然、合わない。
合わせようと思えば合わせられるかもしれないが……それをしても大して楽しくもなんともないので、私はいつも一人でいる。
まあ、御店に来る大人のお得意様たちとは仲が良いし、最近はアブドゥル・サイードさんという少しだけ趣味が通じるような人とも出会えているから、別にどうってことないのだが。
さて、そんなこんなで私と彼女たちとの間には面識はあるし、名前も互いに知っているのだが、親しくはない。
「ええ、つい先ほど二人っきりで彼と食事をしてきましたが、それが何か?」
私が威嚇するように言うと、女たちは目を逸らした。
「べ、別に……」
「どうってことないわ」
「じゃ、じゃあね! シメオン君!」
蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
私は鼻を鳴らした。
何故かは分からないが、何かに勝った気がする。
「お前、もうちょっと愛想よくしろよ。そんなんだから、友達が……」
「あー、はいはい。どうせ、私はガリ勉で根暗でブスな本の虫ですよぉー」
「な、何を急に……そんなこと、言ってないだろ?」
「言いましたよ。五年前!」
やっぱり、むしゃくしゃする。
気に入らなかったので、店につくまでは会話をしないという方法で私は自分が不愉快であるという抗議をした。
シメオンはそんな私を律儀に店のカウンターまでつれていき、座らせてくれた。
子供っぽいことを続けるのはそれはそれで恥ずかしいので、むしゃくしゃする気持ちを抑え、私は契約書を作成する。
「あとはあなたのサインだけです」
「ああ、分かった。……もっと、給料は安くても良いぞ?」
「例え幼馴染でも、ケジメはしっかりつけるべきです。……低賃金だからといって、サボられては困りますしね」
私がそう言うとシメオンは納得したのか、インクで自分の名前を記した。
「では、あなたはそこら辺に立って、警護任務についてください」
私はそう言うと、あるものを作るために立ち上がろうとする。
が、ズキっとした痛みが走り、思わず顔を顰めた。
「座っていろ。俺が取って来てやる」
……別に優しくされたって、五年前のことは許してあげたりなんか、しないからな?
まあ、お言葉には甘えるけど。
「……では、仕事場に置いてある私の工具セットを。そして倉庫のAの棚の十三の四、五、六、七を取って来てください」
私がそう言うと、シメオンは言われるままにそれを取って来てくれた。
「これ、《場違いな芸術品》か?」
「ええ、こちらが“自動拳銃”、こっちが“自動小銃”……どちらも武器ですね」
正確には『ベレッタ・モデル92』と、『AK-47』という。
両方とも、普遍教会の倉庫にもあった武器だ。
《場違いな芸術品》の中には“銃火器”という種類の武器が山のようにあり、そのうちこの二種は特に多い。
だから部品も弾も確保が容易だ。
勿論、その分修理が簡単ということになる。
「ふーん、強いのか? それは」
「さあ? 使ったことはありませんが、まあ、そこそこの威力はあるんじゃないですか?」
私が魔力で調べた限りでは、武器としての性能はかなり高い……と思う。
まあ、私は軍人でも騎士でも冒険者でもないし、武器の善し悪しなんてものは正直、よく分らないけれど。
「とりあえず、自衛目的で作っておこうかなと思っています。悪い奴がいたら、これで懲らしめてやりますよ」
と、言いつつも私はそれぞれ二つずつある銃火器を解体する。
どちらも構造と原理はそこまで難しくはないようで、修理は簡単だった。
魔術で置き換えるまでもなく、部品の共食い整備だけで修理は終わった。
「よし、後は試してみるだけですね」
弾は使用できるものがそこそこ残っているので、自作する必要も手を加える必要もない。
「どこで試すんだ?」
「うーん、庭で良いかなと思ってるんですが、念のために街から出ましょうか?」
嘘か真か、この武器の“矢”はかなり遠くまで飛ぶらしい。
近隣住民を巻き込んで、怪我をさせたら大変だ。
そう思った私はシメオンに肩を貸して貰いながら、市街へと移動した。
人気のない砂漠に甲冑を着せた案山子を立てる。
それから十分な距離を取る。
「では、シメオン。まずはこの自動拳銃の方から試してください。……本当は私がやりたいんですが、生憎の怪我なので」
「任せろ。えっと、この引き金を引くと、穴から弾が出てくるんだな?」
「そうです。あ、魔力操作で筋力強化だけはしておいてください。結構、衝撃が強いらしいです」
「了解、了解。じゃあ、行くぜ! おら!!」
その瞬間、聞いたこともないような音が砂漠に響いた。
耳がキンっとする。
さて、当たったかは分からないが……確かめに行こう。
私とシメオンは案山子の近くまで歩く。
「おお!」
「すげぇな、これ。甲冑に穴が開いてるぜ」
威力は十分のようだ。
……十分すぎるかな? 撃ちどころ次第じゃあ、人が死んじゃうじゃないか。
私は人殺しはしたくない。
「うーん、それはシメオンにあげます。次は自動小銃の方を確かめましょう」
次に私はシメオンに自動小銃を握らせ、使い方を指導する。
どうやらこの銃は切り替え次第で連射ができるらしい。
こんな弩以上の威力の“矢”がどばどばと撃てるなんて眉唾だが……まあ確かめてみれば分かることだ。
「じゃあ、まずは“せみおーと”というのを試してください」
「了解、了解」
そう言いながらシメオンは引き金を引いた。
自動拳銃と似たような音がして……やはり確かめてみると甲冑に穴が開いている。
「次は“ふるおーと”です。ドバドバ!! って、出るみたいですよ」
「本当かよ。……じゃあ、行くぜ」
シメオンは引き金を引き……そして引きっぱなしにした。
すると連続で凄まじい音がした。
それはしばらく続き、弾切れになって止まった。
「……甲冑、木っ端微塵ですね」
「ハチの巣、いや、ハチの巣以上に穴だらけだな」
私とシメオンが設置した案山子は気付いたらボロボロになっていた。
殺傷能力が高すぎる。
「これ、作った奴も使う奴も頭おかしいだろ」
「同感です」
“異世界”人はこんなもので日々、戦っているらしい。
そんなに強い魔物でもいるのだろうか?
戦争でも使うのかな? だとしたら、あっという間に兵士がいなくなっちゃいそうだが……凄く分厚い鎧でも着ているのだろうか?
あー、だからあんな戦車なんていう鋼鉄の馬車があるのか。
「しかし自衛武器には使えませんね」
「法律に疎い俺でも、過剰防衛なのは分かるぜ。……やっぱり、無難にお前はクロスボウとナイフと箒で武装した方が良いんじゃないか?」
「あはは、そうですね」
使いこなせる自信はない。
多分、まだ箒の方が役に立つだろう。
「ところで、この武器、要ります?」
「いらねぇよ。こんな危なっかしいもん」
「ですよねぇー」
斯くして『AK-47』は私の家の“置物”となったのだった。
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