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殴る   (KAMITSUBAKI STUDIO オーディション②)

作者: あまいはな

私は たくさんの人を殴ってきた




あるときは 小学校のいじめっ子を殴った


アイツは八年前 私を「デブ」と笑った奴だ


頬を思い切り 引っぱたいてやると


「体罰だ!」と吐き捨てて ソイツは逃げていった


私は今も ミニスカートが履けない




またあるときには 中学の部活仲間を殴った


アイツは二年前 私を階段から突き落として


「何で生きてるの?」と 罵った奴だ


全体重分の右ストレートを 腹に決めてやると


「死ね!ゴミ!」なんて言って ソイツは逃げていった


私は今も 自分の生きる意味に縛られている




最近は 高校の担任を殴った


アイツは一ヶ月前 私の好きなバンドを


「根暗で悪影響よ」と 馬鹿にした奴だ


脛に回し蹴りを お見舞いしてやると


「あなたの為なのに」とほざいて ソイツは逃げていった


ふざけんな


音楽だけは お前なんかに 汚させない




 






私は今 セーラー服の少女を殴っている


手当たり次第に物を投げつけ


彼女の上に馬乗りになり


拳を滅茶苦茶に振り下ろす


彼女は 抵抗しない


沼色の目で 私の影を映して


一言 ぽつりと 


「ごめんなさい」


刹那 視界が滲んで


ああ、と笑みが零れる


彼女は 「彼女」でも何でもなかった


殴られていたのは 過去の私だった




私は 殴り続ける


拳に力を込める


汗で指の付け根が濡れていく


もっと もっと強く殴らなければ駄目だ



なあ 何でお前は動かないんだ


早く私のことをぶっ飛ばせ


へらへらすんな 笑うなんて言語道断だ


泣き喚いて 怒って 憎んで


そして 立ち上がれよ


いや、違うか


立ち上がってくれ


そうしないと 私は自分を愛せない


だって


私もセーラー服を着ているのだから



私は正しい


でも


あなたも同じくらい正しかった


それならば



「お互い本気の殴り合いをしよう」


伝えたかった言葉が


目から落ちて 頬を伝って


ようやく視界が開けた




君を殴ろう


そして


君に殴られよう


それを繰り返して


二人とも動けなくなったら


お互いの傷の手当てをしよう


その後で 一緒に


「セーラー服って可愛くないよね」


って笑うのだ


私は それだけでいい


私は それだけがいい























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