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第一話 始まりはよくある話で

「エルハイミ―おっさんが異世界転生して美少女に!?-」の外伝です。


ベスボン家が長女ジェリーン=ベスボンはホリゾン帝国の王子と婚約したが、ひょんな事からそのバラ色人生が一転し始める。

これはお嬢様が悪の道をお進みになる物語である。

第一話 始まりはよくある話で



 何故こうなったのでしょう?



 私の目の前に婚約者の王子ゾナー様が血まみれで倒れていらっしゃる。

 そして私の手には血に濡れたナイフが握りしめられていますわ。 

  



 私の名はジェリーン=ベスボン。


 栄えあるホリゾン帝国のベスボン家が長女。

 我がベスボン家は代々この北の地で魔道を極め帝国に貢献をしてきた一族ですの。

 

 そして目の前に倒れているお方は皇帝ゾルビオン様のご子息、王子ゾナー様。

 一族悲願であった王族との婚約を成し遂げたばかりであったのに。






 事の始まりは異母兄妹のシャリナ様が兄であるゾナー様にべったりだったのが気に食わなく、私は事有るごとにゾナー様の気を引こうとした事かしら。


 しかし婚約が決まるとシャリナ様はあからさまにその態度を変えべったりどころか実の兄を誘惑し始めたの。


 いくら異母兄妹とは言え、許されぬ愛であるのは明白。

 でも、私は高をくくっていたのですわ。



 「シャリナ様、お兄様は私めにお任せいただいて、わが一族の者をご紹介いたしますわ。優秀な人材が豊富ですからどうぞご自由にお選びあそばせ」


 思わず口元に笑みがこぼれそうになるのを扇子で隠しシャリナ様を見ますと、シャリナ様は怒りの形相で私を睨め返してきますの。



 おー、怖い。

 でも、ゾナー様は私のモノ。

 やっとの思いで婚約にこぎつけたのだもの、まだ成人も迎えておられないシャリナ様は引っ込んでいてもらいたいものですわ。



 今までお優しいゾナー様はそれでも事あることにシャリナ様のご面倒を見られていましたわ。

 あんなに胸が貧相なのに。

 

 ‥‥‥そう言えばゾナー様って若い方、いえ、むしろ幼女に近い方との戯言を好んでおられてような節はございましたわ。

 お心の広いゾナー様の事、きっと未来のホリゾン帝国の担い手のご教育をされていたのですわ。

 でも、召使いも胸の貧相なものを好んでそばに置かれていたような‥‥‥


 いえいえ、ゾナー様に限ってそのようなことはございませんわ、先日だって私のこの豊満な胸を見られて熱いため息をつかれていたはず。

 きっと私の美貌に酔いしれて溜息を吐きながらめまいを起こされていたに違いないですわ。



 婚約も決まり、私がゾナー様のお部屋で今後のお話をしようと訪れ二人っきりで過ごそうとした矢先にいきなりシャリナ様は現れてゾナー様をナイフで刺されるなんて!!

 まさか、自分のものにならないと言うのならばいっそ殺してしまい自分だけのモノにだけしようとしたのかしら?

 


 と、それはともかく、今は急ぎ【治癒魔法】をゾナー様におかけせねば!


 「きゃーっ! ジェリーン様がご乱心よーっ!!」


 なんです?

 なんですのそれ??

 先ほどこのナイフを刺されたのはシャリナ様ではないですの!?

 私は倒れられていたゾナー様の手当てのために急いでナイフを抜き、これから【治癒魔法】をかけようとしているのに!!


 シャリナ様の悲鳴に近くにいた近衛騎士が駆けつけてきますわ。


 「姫、何事でございます!?」


 「ジェリーン様がご乱心なされてお兄様を刺されたの!」


 「ちょっ! 何を言いますの、刺されたのはシャリナ様ではないですか!」



 【治癒魔法】の詠唱を止め、私は遅れて抗議をしますわ。


 でも、近衛騎士はこの場に三人しかいないので判断に迷ってるご様子。

 しかし私の手に握られたナイフを見るや否や私に駆け寄ってきますわ。



 「ジェリーン殿! 殿中ですぞ!!」


 そう言ってナイフが握られている私の手に手刀をたたきつけ、ナイフを落とさせますの。


 カラーンっ!


 ナイフが弾き飛ばされ乾いた音がしますわ。

 私はそれをどこか遠くで聞きながら腕の痛みに顔をゆがめますの。


 「待ってくださいましな、私はゾナー様に【治癒魔法】をかけなければならないのですわよ!」


 「ジェリーン殿、目を覚ましてください! 皆の者出合え!!」


 なおもゾナー様に駆け寄り治療魔法をかけようとする私をこの近衛騎士は取り押さえ、ただでさえ先ほどの痛みがきつい腕を取り後ろへと回しますわ。

 女の私に抗う事はままならず、その苦痛に顔をゆがめ、只々ゾナー様のお名前を呼ぶしかありませんわ。


 「ゾナー様! ゾナー様ぁっ!!」


 私の叫びもむなしく続々とやってくる近衛騎士たちに私は連れ去られてしまいましたわ。



 ◇



 それから数時間後、聞いた話では宮廷魔術師の治癒魔法でゾナー様は事無きで済んだそうですわ。

 私は安堵の息をつき、早速ゾナー様に合わせていただくよお願いをしますの。

 でも、近衛騎士たちはかたくなにそれを拒み、私を部屋に監禁いたしますの。


 「どういうつもりですの? ゾナー様に合わせてくださいまし!」


 「ジェリーン殿、どうかお気を落ち着かせてください。何があったか知りませんが王子に刃を向けるなどいくら婚約者の貴女でも許されることではありませんぞ」




 なんなんですの?

 私が謀反を起こしたような言い草。

 いくら何でも侮辱が過ぎますわ!



 「ゾナー様を刺したのはシャリナ様ですわ! 私はゾナー様をお助けするためにナイフを抜いて治癒魔法をかけようと致しましたのに!」


 思わず椅子から立ち上がりこの近衛騎士に抗議する私、しかし近衛騎士は私の話など聞くつもりも無いかのように無言でたたずんでいる。



 「ジェリーン! ジェリーンはいるか!?」


 扉を開け、怒気をまき散らしながらお父様が入ってこられました。


 「お父様! よかった、聞いてくださいまし!!」


 「このバカ娘がっ!!」


 パシーンっ!!


 いきなりの平手打ちに私はよろけて床に座り込んでしまいましたわ。

 痛みも驚きの方が勝って感じないくらいに私は混乱いたしますの。



 「なっ、お、お父様?」


 「殿下にお聞きしたぞ! ジェーリン、貴様殿下に謀反を起こしナイフで襲ったのだとっ!?」



 はっ?

 理解できませんわ?

 お父様、何をおしゃっているの??



 「ゾナー殿下とシャリナ姫がお部屋で談話されているのに嫉妬して殿下に刃を向けるとは! 聡明なお前はどこに行った!?」



 え?

 お二人が談話されてたって、そんな筈ございませんわ、お話をしていたのは私とゾナー様。

 後から来ていきなりゾナー様を襲ったのはシャリナ様のはず!



 「お父様、誤解ですわ! ゾナー様を襲ったのはシャリナ様ですわ! 私はゾナー様と今後についてお話を二人っきりでしようとしていたのですわっ!!」


 「黙らんか! このバカ娘がっ!!」

 

 バシーンッ!!


 再び逆の頬を平手打ちで撃たれる私。


 どっ!


 先ほどより更に怒気を含んだ平手打ちは私を床にたたきつけますの。

 もう、なにがなんだかわからず呆然としますの。


 「ワシは皇帝陛下に謁見させていただく。お前はここで大人しくしていろ!」


 そう言ってお父様は部屋を出て行ってしまいましたわ。




 私はただ、ただ床を見つめて瞳から涙をこぼすだけ。

 一体どうなっているのですの?

 誰か、教えてほしいですわ!!

 



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誤字、脱字ありましたらご指摘いただけますようお願いいたします。


「お嬢様は悪の道をお進みなさる事にした」はゆるりと書いていきます。

次回更新は未定ですので、ゆるりとお待ちください。

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