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第10話

 

 「ねぇ! タケル・・・

 あたし、ママのあんな顔・・・!

 あたしママを・・・!」


自分の意識を取り戻すと同時に、徐々に記憶が甦りつつあるのだろう、

今日子はその場に立ち尽くしてしまった。

デニムスカートと、

ボーダーのハイソックスの間にのぞかせている薄いピンク色の太ももが震えている。


 「・・・今日子・・・!

 落ち着けよ!

 ちが・・・そ、

 それが奴らの催眠術なんだ!

 そうやって相手を混乱させて意識を乗っ取ってるんだよ!」


タケルは何とか今日子をなだめようと、

苦しいデマカセを言う。

 「ホント・・? ママは無事なの?

 元気なの!?」

 「ああ・・・!

 俺らはお前の母ちゃんに頼まれてここに来てんだぜ! 

 お前のことが心配でげっそりしてたけど・・・!」

さすがにそこまでの嘘は美香が慌てたが、もうどうにもならない。

それにこの場合、

仕方がないのかもしれない・・・。

 「あ・・・あ・・・、

 タケルルルぅ・・・ありがと・・・

 ありがとぉ・・・。」

 

 

今日子は、

また顔をくしゃくしゃにして泣き始めた。

止むを得ず、

その間、美香は辺りを見回す。

廊下やトイレに人の気配はない・・・。

部屋はいくつかあるが、

これらの部屋のどこかに重要なものが隠されているのだろうか?

美香は一度、

泣きじゃくる今日子に振り向いた。

 「・・・ね? 今日子ちゃん、

 操られていた間、何か覚えてる事はない?」


今日子は肩を揺らしながら何とか口を開いた・・・。

 「わ・・・わがりまぜん・・・、

 覚えてるのは・・・変な顔の無い女・・・

 長い髪とワンピースの・・・。」


背筋が寒くなった・・・。

そういえばあのテレビの映像・・・。

美香は黙ってカラダを前に向ける。

・・・ここは向こうからやってくる者を撃つには適した場所だが、

常に襲撃に遭い易い場所だ、

手前の部屋に取りあえず入ってみるか。

美香はタケルを促し、

先程のように扉を開ける。


・・・ここにも誰もいない。

応接室のような場所だ。

 ここで今日子ちゃんを休ませようかしら・・・?

美香がそんなことを考えていた時、

彼女の携帯がまたもや振動した。

・・・今度はメールだ・・・。

 


美香はそれに目をやると、

視線を固定させたまま、

ふー・・・っと息をはいた。

 「例の探偵さんよ・・・、

 さっき私が送った会社名を調べてくれたみたい。

 しかもこっちに向かってくれてるわ・・・。」


美香は安堵の表情を浮かべる・・・、

やはり強がっても彼女は女性なのだ・・・。

 「なんか分ったの?」

 「会社名ノース・フィールド・カンパニー・・・、

 二年前にできた新しい会社ね・・・、

 代表者・・・児島道幹、

 通信関連のベンチャー企業だけど・・・。」


美香が口ごもった・・・

眉間にしわを寄せている。

 「おい・・・? 美香姉ぇ・・・?」

 「どっかで聞いたような名前だと思った・・・、

 ノース・フィールドですって・・・?

 顔が無い女性・・・

 顔が無い・・・

 ノー ・・・フェイス・・・。」

 


 

美香は誰に語りかけるでもなく、

独り言のようにつぶやき窓の外を見つめる・・・。

そしていきなり思い出したかのように後ろを振り返った。

 「ね、今日子ちゃ・・・ 」

その瞬間、

美香のカラダが突然固まった。

彼女の目がタケルの背後に固定される。

ほとんど同時に、

タケルは自分の首筋にあたたかい飛沫がかかるのを感じた。


そしてゴン・・・ッ

と床に鈍い音が響く・・・。

ゆっくりとした動作で、

タケルがその床に目を向けると・・・


エクステで長いウェーブの髪にくるまれた・・・

茶髪の頭がそこに転がっていた・・・。


床に転がる物体・・・

頭部が存在しないカラダ・・・

赤黒い液体が、

大量に噴き出す直立した物体・・・

さらには天井に揺らめく・・・

黒い巨大な細長い物体・・・


 き ょ う  こ   ・・・?

 


 

美香が叫び声をあげた!

 「キャアアアアアッ!!」

それに呼応するかのように、

天井の化け物も異様な悲鳴をあげる。

 「キリィィアアアアアッ!!」


黒い異様な物体は天井を這いながら、

パーテーションに区切られた隣の部屋への隙間に潜り込む。

あっという間にその姿を消してしまった・・・。

今の物体が何であったか知ろうとする前に、

美香もタケルも目の前の現実に凍り付いてしまい、

身動き一つする事が出来ない・・・。


 「あ・・・あ・・・!」

 「きょ ぉ こ・・・」


今日子と呼ばれていた少女の首から下は、

大量の血液を放出しながら床に倒れこんだ・・・。

切り落とされたその頭部は、

目を薄く開いたまま、

あらぬ方向をぼんやりと見つめている。

恐らく彼女はその最後まで、

何も見なかったであろう・・・、

先程の涙でメイクは崩れたままだ。

 


やわらかそうな今日子の頬・・・、

まだ幼さを感じさせるその唇・・・

これが作り物であったなら・・・。

タケルの引っぱたいた頬は、

まだ薄く腫れ上がっている・・・。

その不自然な表情が、

全て現実の出来事である事を物語っている。


 「・・・う そ だ ぁ・・・!」

タケルの両膝が床に沈む・・・、

腕を震わせ今日子の頭部をゆっくり抱きかかえる・・・。

 「うそだぁ・・・

 こんな・・・こんな、やめてくれよォ・・・

 きょうこ・・・きょおこおお!!」


タケルの目からは大粒の涙が流れ落ちる。

口からは、

絶え間ない嗚咽が漏れ続けている・・・、

こらえようの無い感情の波に押し流されてしまいそうになるが、

残酷な現実は、

泣き続ける事をも許してはくれない。


突如、

隣の部屋から大勢の人間のわめき声が湧き上がったかと思うと、

ドカドカとタケルと美香のいる部屋に、

二十人はいるであろう集団が、

洪水のようになだれ込んできた!

 


ついにその名前が出ました。

レディ メリー編で登場しましたね。

そして美香が何故その団体名を知っているのか・・・。

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