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第3話

昨日はアクセス数が、今までの投下した中で最高数を更新しました。

ありがとうございます!!



 

深夜だと言うのに警察署は大変な騒ぎになっていた・・・。

普通なら、

最後に行方不明者と会った人物ということで、

タケルも長時間、

警察に事情を説明するハメになるのだろうが、

事件が多発しているために係の者が追いつかない。

今では都内だけで、

40件もの行方不明が報告されていた。

警察に未だ届けが出ていないものも含めれば、

三桁に数字が届くかもしれない。

もちろん被害者達の家族も、

届出の順番を黙って待っているわけでもない。

同様の事件に巻き込まれた者同士、

互いの事件の共通の接点を見つけて、

少しでも事態を把握しようと躍起になっていた。


・・・そう、

行方不明の家族の何組かが、

子どもたちに掛かってきた奇妙な電話や、

彼らの異常な振る舞いを共通して目撃しているのだ。

中には、テレビに向かって話し出した者もいたという。

家族達の間では、

その電話の相手に呼び出されたのではないか? 

という意見が強くなっていた。

 

ある中年夫婦の息子は、

「・・・ちょっと出かけてくる・・・」

と言ったまま連絡が取れなくなったそうだ。

近所の者に聞いたと言う母親は、

その隣人が道端で挨拶したにも関わらずも、

自分の娘はまるで夢遊病者の如く、

それを無視して通り過ぎ去ったと言う・・・。


今日子の両親は、

不安な表情を顔にありありと浮かべていたが、

タケルや美香に丁寧な挨拶をした。

高校時代から娘に聞かされている男友達とは言え、

男のタケルだけだったら、

ややこしい事になっていたかもしれない。

礼儀正しい美香がついていたからこそ、

辛うじて今日子の両親も取り乱さずにいられたのだろう。

手を打つべき事を全て行った彼らは、

自宅で待機するしか、もはやすることは残されていなかった。


帰る道々、タケルは姉に尋ねる。

 「美香姉ぇ、

 電話で催眠術ってできんのかなぁ?」

美香はしばらく考え込んでから答えた。

 「・・・私にも分らないけど、

 不可能じゃないとは思う、

 でもアナタの聞いた感じじゃ、

 あっという間に電話は切っちゃったんでしょう?

 なら、

 催眠術の類じゃないんじゃないかしら?

 幻聴のほうがやばくない?

 他の人が沢山いる場所で、

 今日子ちゃんにしか聞こえない声なんて・・・。」

 「・・・そうだよなぁ・・・。」

 


だが、

・・・翌朝、事件は急展開を起こす。

行方不明の少年少女たちが、

なんと全員、無事に家に帰宅したのだ。

タケルは朝起きた後、

念のために今日子の携帯に電話してみた所、

ぶっきらぼうな彼女の声が返ってきた。


 『・・・ああ?

 タケルルル・・・おはよ。

 ・・・ふぁぁああ・・・なに?

 ・・・ねむ・・・。』


間違いなく本人だ。

今日子はタケルをからかう時、

そういう呼び方をする。

当然、タケルは驚かざるを得ない。

 「お・・・おまえ、

 どこにいたんだよ!?

 親父さんたち心配したんだぞ!?

 いま、どこだよ!?」

 『えぇぇ?

 家だよ、こんな朝早く・・・。

 まぁだ眠いんだけど・・・。』

 「おまえ、

 昨日バイト休んでどこ行ってたんだよ!?」

 『バイト? あたし休んだ?

 えぇ?

 覚えてない・・・。

 そうなんだ? 店長カンカン?』

 「知らねーよ!

 ・・・それより覚えてない、って、

 駅でオレと別れてから全然覚えてないのか・・・!?」

 『・・・あぁ、

 そう言えばアンタと会ってたっけ?

 ごめん・・・眠いの、寝かせて・・・。』

 「おまえ、

 あんなにみんなに迷惑かけてんのに・・・!

 わかったよ、

 とりあえず無事なんだな?」

 『無事じゃな~い、

 アタシのカラダは睡眠を欲してま~す・・・。

 じゃね~おやすみぃぃ・・・。』

 


 「・・・あんのヤロー、

 切りやがったよ! 信じらんねぇ!!」

とはいっても無事ならそれに越した事はない。

学校へ行く仕度している姉にも報告する。


 「・・・あら! 良かったわねぇ!

 でも昨日の事、覚えてないって言うの?」


美香はそれだけ聞いて黙り込んでしまった。

タケルもそこから先は口を開けない。

誰がどう考えても怪しさ満点なのだが、

そのからくりがいかなるものか全く読めない。


 「・・・とりあえず、タケル、

 あなたはまたお昼過ぎにでも電話してあげたら?

 私は学校に行くから。」

 「ああ、美香姉ぇもありがとな、

 夜中まで手間かけさせて・・・。」

 「どういたしまして。」

美香はふざけ半分でバカ丁寧に頭を下げる。

 「・・・貸しにしとくわ、

 また買い物手伝ってね?

 肉体労働者さん?」

 「まぁた荷物持ちかよ?

 美香姉ぇ、買い物しすぎ!

 彼氏の車あるだろ?

 あの人に頼めよ!」

 「彼氏ぃ? 誰の事かしらぁ~?」

 


 

しっかり者とは言え、

美香も勿論、男友達は沢山いる。

だが、

あまりの成熟度に、そんじょそこらの男ではまともに付き合えない。

タケルが言っている人物は、

比較的その中でも美香と親しい男性で、

向こうもその気十分なのだが、

どうも美香の中では「いい人」止まりのようだ。

 「男ってほんとに悲しいなぁ・・・。」

タケルはボソッとつぶやいた。




美香は家を出た後、自分の携帯を開いた。

電話帳・・・ア・・・カ・・・サ・・・、

タケルの言っていた人物はこの欄にいるが、

美香はちょっと名前を見た後、

すっとばす。


・・・かわいそす。


タ・・・ナ・・・ハ・・・、

ここで美香は動きを止めた。

珍しく彼女が悩んでいる。

しばらくして美香は意を決したようだ。

その欄の、

一人の名前にカーソルを合わし電話をかけた。

二、三回コールした後、

相手の男性が出たようだ。

 



 「・・・あ、もしもし、

 あの・・・お久しぶりです、緒沢美香です・・・。 

 ・・・はい、お元気でしたか?

 お変わりなさそうですね?

 実は今日、お電話したのは、

 少し調べていただきたい事が・・・。

 ええ、私たちは勿論、

 あなた方の団体にも直接は関係ない話だと思います。

 それで、

 できればあなた達の情報システムを利用したいんですけど・・・、

 あはは、有料ですかぁ?

 デート一回分じゃダメです?

 ウフフ、


 ええ、ちょっと真面目な話、

 昨日都内で数十件の行方不明者が出たんですけど、

 不思議な電話や幻聴といった症状が、

 共通して関わっているみたいなんです、

 無事に戻ってきたようなんですが。

 はい、まだ確認してませんけど、

 少なくともその内一件は昨晩の記憶を失っているみたいで・・・。

 何もなければいいんですけど、

 今後何らかの事件になる前に手が打てたらと・・・。


 はい、良ければ今日の午後にでも・・・。

 ええ、確かコーヒーはお薦めがあるんでしたよね?

 マンデリンでしたっけ?

 愉しみにさせていただきますね、

 ・・・ハイ、ではその時に・・・。」 

 


 

時刻は正午になった・・・。

駅前の雑踏は、

昼休みのサラリーマンやOLでごったがえしている。

たくさんの車が交差点を行き交い、

駅前の商店は、

呼び込みの声やパチンコの音楽で賑やかだ・・・。

歩いている途中で、

携帯に耳をあてる会社員も少なくない。


だが、

同じ職場の仲間の中で、

ただ一人、

歩行すらストップさせる行動はやはり奇妙だろう。


同僚がそれに気づき、後ろを振り返っても、

当の本人は同僚の事を気にも留めない。

完全に意識を他のものに向けている。

中には横断歩道の真ん中で足を止めてしまった者もいる。

同僚が声をかけても彼らは無反応だ。

瞼を大きく見開き、

まばたきすらしなくなる・・・。


そして、その場所にある、

全ての音響機器から、

少し舌足らずに聞こえる若い女性の声が聞こえていた・・・

彼らの耳だけに届く声で・・・。


 『 もしもし? 私メリーさん、

 クスクス・・・お友達がこんなに増えちゃった・・・。』

 

気づかれた方もいらっしゃるかもしれませんが、

今回の話は伏線ありです。



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