顔のない人形 第1話
レディ メリーの解放から2年後・・・。
更なる恐怖が街を襲う。
・・・なお、これ書いたの、まだスマホ出回ってない時なので、
古臭い表現になってるのはお気になさらないでいただけると・・・。
チャラララララァラァン♪
着信だ・・・、
流行のアーティストの新曲が流れる。
「なんだ? この電話?」
ギャルっぽい格好したその少女は、
不審な顔して携帯を開いた。
「もーしもーし?」
・・・雑音が多い・・・
どっからかけてんだ?
『・・・もしもし、私メリーさん、
私とお友達になって・・・?』
やや舌っ足らずの声がする。
「ハァ? なんだ、おまえ?
出会い系かなんかか?
わりぃけどこっちも女だ、
他、あたれ、じゃぁな。」
少女は「ばっかじゃねーの」とでも言うような顔で携帯を閉じた。
連れの男が反射的にツッコミを入れる。
「・・・なんだあ?
今日子? おまえ出会い系やってんの?」
「ふぅざけろ!
あたしがやるか?
宣伝か勧誘だよ、
女の声で『私とお友達になって?』だと?
きもいよ、マジで。」
二人は新宿を歩いていた・・・。
別に彼らは恋人同士というわけでも、
デート中というわけでもない。
強いて言えば高校時代からの悪友、
互いを異性として意識しているかどうかは・・・
微妙。
男は今日子の買い物に付き合わされているだけである。
二人はただいま東口前の広場で休憩中、
冷たいドリンクでも飲みながら、
くだらない仲間同士の噂話をしていたところだった。
再び友人達の話題を始めて3分もしないうち、
アルタの電光スクリーンから、
彼女の携帯の着メロと同じメロディが流れ始めた。
「おっ? アタシの曲じゃん?」
そう言って彼女は顔を上げたが、
モニターに映っているのは、
その曲とは全く関係ないコスメの宣伝だ。
「あれ? このCMにこの曲使ってたっけ~?」
ところが、
今日子はさらに自分の耳を疑うことになる。
その曲はすぐに止まり、
先ほど自分の耳で聞いたばかりの、
一人の女性の声がスクリーンから聞こえてきたから・・・。
『・・・クスクス、私メリーさん、
ねぇ? お友達になりましょう?』
今日子は驚いて、
自分の連れの男に振り返る。
「・・・お、おい!
聞いたかよ?
さっきあたしに掛かってきた電話、
今の声の女だよ!」
今日子は男に反応を求めた。
・・・だがその反応は、
彼女の予想を裏切るものだった・・・。
「あぁ? 今日子なに言ってんだぁ?
ただの化粧品のコマーシャルだろ?」
「・・・えっ?
タケル、今の声、
聞こえねーのかよ・・・?」
「・・・んだよ?
まぁだ怒ってんのか?
悪かったっつってるだろぉ?」
タケルは、
先ほどの件で今日子をからかい過ぎたらしい、
帰りの電車の中でも謝ってばっかりだ。
「だってよぉ、
普通のコマーシャルにしか聞こえなかったぜぇ?」
今日子はそっぽを向いてふてくされたままだ。
「・・・もぉいいよ!」
タケルもそれ以上、
口を開く気はもうない。
いいかげん、彼もイラつきはじめていた。
気の短い方でもないが、自分に非はそんなにない筈なのに、
ここまで不機嫌な対応されるのも悔しい。
ガタンゴトン、ガタンゴトン
・・・二人は無言になり、
電車内は走行音だけしか聞こえていない。
次の駅が近づいてきた。
電車のアナウンスが鳴る・・・。
( 次はぁ西荻窪ぉ~、西荻窪ぉ~、
お出口はぁ・・・クスクス・・・。)
今日子が突然、顔を上げた!
・・・今のは!?
彼女は目を見開いてタケルを見上げる。
「ん?」
「・・・タケル! アナウンス!」
そう言うと、
彼女は車内のスピーカーをにらみつけた。
・・・放送はまだ続いてる・・・。
(・・・クスクスクス・・・私メリーさん、
私が話しかけているのは、お友達だけよ?)
「・・・なぁんだよぉこいつ、
マジで気持ちわりぃ・・・、
なっ? 今のだよ!
今度は聞こえただろ!?」
今日子は怯えながらタケルに振り返った。
もうこれは絶対、偶然とか気のせいとかのレベルで有り得ない。
なんだかわからないが、めちゃくちゃヤバい気がする。
気味が悪い以外の表現が見つからない。
・・・だが、
またしてもタケルはきょとんとしたままだ。
「・・・タケルやめろよ・・・、
まさか今のも聞こえないって言うのかよ・・・!」
タケルの方も、違う意味でこの事態のヤバさに向き合うことになった。
既にふざけてからかったりできる余裕は全くない。
「おいおい、またかよ?
・・・おまえ本気でやばいんじゃねーか?
周り見ろよ?
そんな変なのが聞こえたら、
みんながこんな無反応なはずないだろ?」
タケルは真剣に彼女の心配をしていた。
・・・こいつクスリでもやってんじゃねーか?
今日子も慌てて辺りを見回す・・・。
降りる仕度をする乗客はいるが不自然な反応をする者はいない。
ていうか、どちらかといと、
騒がしくやり取りし始めた自分たち二人に、
怪訝そうな視線を向けてくるぐらいだ。
ラッシュアワーにかち合ったらどうなっていただろう?
「・・・うそ・・・。」
彼女の心臓が早くなった・・・。
耳もなんか変だ・・・耳鳴りがする。
あたし・・・おかしくなっちゃったの・・・?
「・・・おい・・・おい!
今日子! 大丈夫か!?」
タケルの声でふっと我に返る今日子。
・・・一体自分の身に何が・・・?
「・・・あぁ、タケル・・・
あたし、今、意識無くしてた・・・?」
「何、言ってんだよ?
ほんの一瞬、ぼーっとしてただけだろ?
・・・それよりこれからカラオケのバイトだろ?
大丈夫なのか?」
タケルも、
外見はチャラチャラしているが根は真面目だ、
例えケンカしたって、
彼女の様子が変なら放っておけはしない。
「・・・あ・ああ、
カラダは大丈夫だと思う、
だけど、何であんなモンが聞こえるんだ・・・?」
「おまえ、
クスリとか手ぇ、出してねーだろうな?」
自分たちの仲間でそんな事する奴はいないはずだが、
今日子の交友関係全てを把握しているわけでもない。
それこそバイト仲間やプライベートで危ない奴と関わり持っていることもあり得るか・・・。
「やってねーよ!」
だが今日子は即座に否定する。
彼女も自分が遊び人と自覚しているが、超えてはいけない線ぐらいは弁えている。
過去にそういうお誘いがあったとしても、彼女特有の処世術でトラブルを回避してきた。
そんな自分をタケルは理解してくれていなかったんだろうか?
今日子がムカついて感情的な声をあげたのも仕方ないと言えよう。
けれどもタケルの方にしてみれば、今日子の機嫌など後回しだ。
「・・・ならいーけどよ、
帰り、迎えに行ってやろうか?」
それでも、タケルが自分を心配していることくらいは理解できる。
すぐに今日子は先ほどの自分の短気を後悔した。
「さんきゅ・・・!
でも大丈夫だよ、
ヤバかったらメール送る・・・。」
「そーか、ムリすんなよ・・・。」
・・・電車は吉祥寺に着いた。
今日子のバイト先へはここで降りる。
プーのタケルは次の三鷹までだ。
扉が開き、今日子が出て行く。
彼女は振り返ってにっこり笑ったが、その表情は不安そうにも見える。
ホントに大丈夫だろうな・・・?
タケルは最後まで彼女の姿を追っていたが、
彼の乗っている電車は、
次の駅へと動き出してしまった。
そして今日子は一人になった。
周りに大勢の乗降客が流れているが、
今の彼女にとっては無機物と一緒だ。
ただの雑音と景色、
すでにそこには自分の世界しかない。
バイトの時間までまだ間がある・・・。
今日子は駅のホームで自分の携帯を取り出した。
今日、何度も聞いた、
あの女の声は何だったんだろう?
しばらくして、
今日子は恐ろしい考えが頭に浮かんだ。
・・・ここにかけ直したらどうなるんだろう?
今更、ワン切りも下火だし、
相手は肉声だ。
反対側のホームを電車が通る・・・
大勢の乗客のざわめきもうるさい・・・。
だが彼女の耳には、
その騒音より、
自分の心臓の音の方が大きな音に感じられた。
先ほどの着信の番号を指定し、
ダイヤルボタンを押す。
ルルルルルルル・・・、
ルルルルルルルル・・・
ガチャ、
・・・声は聞こえない・・・
雑音のようなものが聞こえる・・・。
だがすぐに・・・
周りの騒音にも関わらず、
今日子の耳にはあの女性の声が聞こえてきた。
『・・・もしもし、私メリーさん、
・・・ありがとう、
お友達になってくれるのね?』
・・・その日、
バイト先のカラオケ店に、
彼女が出勤する事はなかった・・・。
レディ メリー編とテイスト変えたつもりです。
少しは怖そうでしょうか?
次は順番を変えて登場人物紹介を一気にいきます。