最終話
皆さま最後までありがとうございました。
レディ メリー編はこれにて終了です。
B.G.Mは Teena Marie の "Ooh la la la"をどうぞ♪
・・・なんで真夜中の3時にアクセス数が伸びているのだろう・・・?
「・・・それで・・・。」
「勇敢なる騎士」とまでうたわれたケイは、
全ての書類に目を通してから話を続けた。
「その『人形』は今後、危険はないと・・・?
『リーリト』とやらも、
我々が動くべきものではないと、
そういう結論なのかね?」
ライラックが背筋をただして答える。
「・・・いえ、危険はないとは言えません、
ですがまずは対話があるべきです。
もちろん警戒や準備は必要ですが、
いたずらに血を流すべきではないと考えます。」
「ふん、これで本部が納得できるといいがな。」
その厳粛な空気をマーゴが吹き飛ばす。
「だいじょーぶよぉー!
叔父様がつよーく主張してくれれば、
逆らえる人はいないでしょぉー!?」
「ば・・・馬鹿なこと言っちゃいかん!
その・・・もっと大局的に物事を見ないで、
迂闊に発言できる訳ないだろう!?」
「じゃー、叔父様ぁ、
大局的にお願いしますねぇ~!」
もしかしたら、
この騎士団を牛耳っているのはマーゴかもしれない。
紅いウェーブの髪のライラックは心底から震え上がった・・・。
「ゴホン、あー・・・それで、
この『人形』は何て呼べばいいんだ?
・・・もう『メリー』ではないのだろう?」
「さぁ、どうしましょう?
中の人は百合子さんだからー・・・
『レディ リリィ』なんてどうかしら?」
一方、
ガラハッドは今度の事件を契機に、
正式に『騎士』への称号を与えられる事になった。
彼の兄は、
騎士団本部本部長なのだが、
今夜はその内定を祝い、二人で祝杯をあげる。
「おめでとう、ガラハッド!
これからも頑張れよ!」
「ありがとう、ランスロット兄さん!」
日浦義純は、
今日も「日浦総合リサーチ」で地味な調査業務をこなしている。
実力があっても出世には興味ない、
「愚者の騎士」で十分だ。
熱いマンデリンがあればそれでいい・・・。
「あー・・・、
麻里! 絵美里! ごはんだぞー!」
百合子のカラダには二人の女の子の魂が入っていた。
メリーと呼んでも良かったようだが、
二人の嗜好が全く違うために区別する事になった。
食費は今までと大して変わらないが、
服の好みが違うために洋服代が馬鹿にならない。
現代生活や常識を教えるのも一苦労だ。
それにも増して、
賑やかさが今までと比べ物にならない。
麻里の方は、
生前は17、8歳ぐらいだったようで、礼儀もただしく、ある程度おとなしい。
う ら ら ー ら ぁ ♪
ただ時々、一人で歌を歌ってる・・・、
ちょっと天然がかってるが面白い子だ。
絵美里の年齢は、
ちょうど麻衣と同じぐらいらしい。
麻衣と顔をあわせると、のべつまくなし喋ってる。
メリーのカラダに入っていた時、
彼女の棲家にしていたところがあったらしく、
伊藤はしばらくして、
そこに出向いて赤い手袋を取ってこさせられた。
今となっては懐かしい・・・。
感情面については、
人形の頃のスタイルがまだ強く影響している為、
表情の造り方がぎこちないが、
きっとすぐに思い出すに違いない。
麻衣も嬉しそうだ、
姉や妹ができたように感じているのだろう。
あれ以来、
百合子には会えないが、
伊藤もそんなにさみしいわけでもない、
・・・そしてそれには訳がある。
麻衣は伊藤と一緒に夕食を作っていた。
お茶碗を並べながら父親に話しかける。
「パパァ!」
「何だい、麻衣?」
「あのねー、ママがねー、
また、トマト食べなかったでしょーって!」
「え!?
・・・麻衣、おまえまたママに言いつけたの?」
「今度食べなかったら、
鎌で斬りつけてあげるわって!」
「うへぇ!?」
・・・実はあれ以来、
麻衣は毎日のように百合子と交信している。
元のメリーともできたぐらいだ、
実の母親と交信するのは難しくもなんともないのだろう。
よくよく考えてみれば思い当たる節もある。
おばあちゃんとも似たような事をしているらしい。
確かに恐ろしい一族だ。
恐らくこの一家は、
これからもいろんな出来事に襲われるかもしれない。
『リーリト』の運命は、
麻衣にも確実にやってくる。
だが、
彼ら家族はそんなものには負けやしない。
数百年に及ぶメリーの因果を解いた家族だ。
片目のレッスルは、
杖をついて、遠くからいつまでもその家の明かりを見つめていた・・・。
きっと・・・、
自分のかつての父エックハルトや、
その愛人フラウ・ガウデンにも、
同じように呪いが解ける日がくるかもしれない。
彼らの呪いにも、
何か自分には分らない、大きな思慮が働いているのかもしれない。
レッスルは、
自分の主人が、しばしば「悪魔」と呼ばれていることは知っている。
しかしそれを卑屈に思う事もなければ、
嘆く事すらなかった・・・。
全てを選ぶのは人間次第・・・。
「未来を見通す力を持つ」、鎖に繋がれたヴォーダンも、
自らの運命には逆らう事はできない。
むしろ、
未来が見えない人間だからこそ、
運命に打ち勝つ事ができるのかもしれない。
レッスルは、
自分がヴォーダンの一部である事を誇りに思い、
人間達の世界に触れられる事に無上の喜びを見出していた。
この先、
人間がどんな進化をするにしても、
レッスルは暖かく彼らを見続ける。
遠い過去においてヴォーダンが、
アダムとイヴに与えた「果実」の本当の名前、
エピメテウスとパンドラに与えられた素晴らしい贈り物、
「希望」という果実を胸に抱いて・・・。
「・・・マリー、そしてエミリーや、
・・・その暖かい家で、
幸せな人生を取り戻すんじゃぞ・・・。」
(レディ メリー最終章「解き放たれたレディ メリー」終了)
明日の更新からは新展開!
パラレルワールドではありません。
同じ世界、同じ時間軸、同じ舞台設定で新しいキャラクターたちの物語がはじまります。
ファンタジー色は薄く、ホラー色がやや強いかも。
その前に恒例登場人物紹介・・・誰にしよ・・・。