リーリト麻衣は手を汚さない 第二十七話 リーリトガールズは牽制しあう
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さて、
旧校舎探索隊一行は、
荷物を片付け、最後に門の鍵を閉めて、
それぞれ思い思いに本校舎へ帰るだけとなった。
同じ生物部のルカ先輩と麻衣は、
2人並んで静かに歩いている。
先を歩いていた永島先輩は、少し気になって後ろを振り返った。
友達を作りたがらないルカちゃん・・・
でも伊藤さんとは仲良いのかな?
何てったって、同じ部の先輩後輩だし、
2人とも同じ力を持っているのなら・・・
さて、それはどうだろう?
「ルカ先輩?」
「なあに、麻衣ちゃん?」
一見普通の会話と雰囲気である。
「聞きたいことがあるんですけどー。」
「遠慮しなくていいよ・・・
私とあなたの仲じゃない・・・。」
どの口でそれを言う?
それが麻衣の本心だ。
「どこまでわかってたんですか?」
感知能力者同士でないと成立しない質問だろう。
一度、ルカ先輩は、肩に掛かる美しい金髪を背中に回した。
「うーん・・・、全然?」
麻衣は信じられるかとでも言うように口を尖らせる。
「嘘ばっかり、
自分の正体曝す危険すら犯さずに、
最後まで美味しいとこ持ってっちゃったじゃないですか!」
「怒ってる、麻衣ちゃん?」
相変わらずルカ先輩は無表情のままだ。
「・・・いーえ、怒ってませんよ、
呆れてはいますけど・・・。」
「良かった・・・、
麻衣ちゃんが永島さんの誘い、断ったらどうしようかと思ってたの・・・。」
えっ? そこから!?
「は? ちょ、ちょっと待って下さい!
私が断れないの承知で、永島先輩にふったんじゃないんですか?」
ルカ先輩は首を傾けてきょとんとしている。
「え? だって嫌だったら麻衣ちゃん、
断ればいいだけでしょ・・・?」
麻衣は自分の認識の甘さを後悔した。
この人は義理とか人情とか理解しようともしてないんだった・・・。
でもだとすると・・・
「はぁあぁ~、
おかげで無駄に力見せびらかしちゃったかなあ・・・。」
麻衣の口からため息が出る。
「無駄じゃないよ、麻衣ちゃん、
犯罪を未然に防いだじゃない・・・。」
「でも~、成り行きによっては、
最初から何も起きなかったかもしれないですよー?」
そこで初めてルカ先輩は明確な意志を見せた。
「いいえ・・・。」
「え?」
「ネコちゃんたちの仇を討てた・・・。」
「へ!?」
ついにルカ先輩が、
今回の本当の目的を明らかにした。
「私ね・・・、
この学園の敷地内のネコちゃんたちに、
ご飯あげたり、たまに遊んでるのね、
でも・・・時々、
急に姿が見えなくなる子たちがいて・・・
もちろんどこかにお出かけしてるんだったらいいのだけど、
ネコちゃんたちの集会場所で、
あの人・・・理事先生の姿が私に視えたのね・・・。
それもネコちゃんに酷いことをする情景が・・・。
でも、私には姿は視えても、
どこの誰かまで特定できなくて・・・。」
その時に、
猫を生贄にする理事先生の悪想念を知ったということか。
恐らく今回、理事先生が動いた時に、
同じ悪想念の波長を感じ取ったのだろう。
後はリアルタイムにその波長を追尾すればいいだけである。
「ルカ先輩、ネコと遊べるぐらいなら、
人間と遊んだらどーなんです?」
「無理・・・、
あんな感情剥き出しにしてくる人達と、
一緒に行動できっこない・・・。」
「・・・ネコの仇討たいとか、
それも立派な感情だと思いますよ、先輩?」
「ううん、・・・それは本能だから。」
いつもこの手の話になると頑なに否定するんだ。
前にも書いたが、
同じ生き物である筈の2人だが、
その考え方には大きな隔たりがある。
麻衣は、
自分たちの種は、あくまで人間の一種だと考えているが、
ルカ先輩は、
自分たちと人間は、全く別種の生き物だと信じているのだ。
どうにかして、同じ学校に通っている間に、
考えを改めて欲しいとも思うのだが、
基本的に彼女たちは、同族であっても他人に対して無頓着だから・・・。
ところがルカ先輩の方も、
実は麻衣に対し考え方を改めて欲しいと思うことはあるのである。
「麻衣ちゃんこそ・・・、
余計なことに首突っ込まないと言ってたのに、
大活躍しちゃったみたい・・・。」
「だから、それはあなたのせいで!」
と言いたかったのは堪えてみた。
「・・・まあ、あたし達が通う学園で、
あんな怪しげなマネさせておく訳にもいかないですからね。」
「でも、麻衣ちゃん、
私は嬉しかった・・・。」
「へ? な、何がですか?」
「麻衣ちゃんが私たちの力、使ってくれて・・・。」
そう、ルカ先輩の方は、
麻衣が自分たちの存在に近づいてくることを望んでいるのだ。
「・・・そこまでする必要なかったかもしれませんけどね。」
「もっと・・・、
その気になればもっと凄い力を発現できるはず・・・、
人としての感情が邪魔して、
麻衣ちゃんには、まだリミッターがかかっている・・・。」
それについては否定も肯定もできない。
確かに感情の枷を外せば、
感知能力については最大限まで感度を伸ばすことはできるだろう。
けれど麻衣は、もう一つの可能性も気づいている・・・。
あの時・・・、
2年前、悪霊の悪想念に感染してしまった時、
麻衣はそれ以上の恐ろしい能力を発現させていた。
それは悪霊の力などではなく、
紛れもなく麻衣本人の力だった。
そしてそれは感情がない状態ではなく、
心の奥底の感情を無理矢理暴走させられた結果の能力である。
その力は全く正反対のものだ。
麻衣の無言の思考を他所に、
ルカ先輩は話を続ける。
「あ、あとね、
さっき・・・理事先生に髪を触られた時に、
わかったことがあるの。」
「え、な、なんですか?」
「あの先生の目的・・・。」
「そ・・・それって悪魔召喚とか・・・?」
「ううん?
それは手段でしょ・・・?
もちろん、まずはそれを成功させるのが目的なんでしょうけど、
最終的には不老長寿・・・
若く美しい姿を夢見てたみたい・・・。」
そんなことの為に・・・。
ただ五体満足に暮らしていけることで満足できないのか・・・。
麻衣は暗澹たる気持ちになった。
それにしても魔物を呼び出して、
そんな願いを叶えたいとか、最初から頭おかしいとしか言いようがない。
だがそれ以上に、その後のルカ先輩の話は、
聞いて麻衣も背筋が寒くなる。
「私達も気をつけなきゃね・・・?」
「え、気をつけるって何に?」
「昔なら私達は、
正体がばれたら火あぶり、串刺し・・・
でも、現代なら捕まったら人体実験よ・・・。
ああいう人が不老長寿を望むなら、
私たちの血を取り込んだ方が手っ取り早いかも・・・。」
「うげ・・・。」
確かにそっちのほうが現実味がある。