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リーリト麻衣は手を汚さない 第四話 御神楽ルカは友達を作らない

 

さて、話が前後してしまい申し訳ないが、

一度、麻衣が誘われることになった経緯を振り返ってみよう。


新聞部の永島先輩が、

最初に旧校舎探索の助力者として選んだのは、

前にも述べた、北欧人ハーフの御神楽ルカという同学年の女の子だ。

ビジュアルだけで言えば、

学園一目立つ美少女と言って過言ではない。

ましてや、校内新聞の特集記事に、

「学園の妖精・旧校舎の謎に挑む」とでもタイトルつければ、

全学年の生徒たちが、

こぞってその記事を読む事になるであろう。

しかし、

それは実現不可能な難題であることも永島先輩は理解していた。

というのも、

学園の妖精・御神楽ルカは、

他人とコミュニケーションを取らないことでも有名だったからだ。

日本語はほとんど不自由なく会話できるのだが、

クラスの友人たちと、

仲良さそうに話すことなどまずあり得ない。

もちろん、快活なクラスメイトたちが、

彼女となんとか打ち解けようと努力するのだが、

あからさまに「仲良くしようとする行為」を拒否するのである。

それも無表情に。


 

最初に御神楽ルカが、

クラスの自己紹介でぶん投げた爆弾発言が以下である。

 「初めまして、

 さっそくですが、私は目立つのが嫌いです。

 なので、みなさん、私に構わないでください。

 友人もいりません。

 無理に話しかけてきてもらっても、

 あなたがたを不快にさせるだけです。

 では宜しくお願いします。」


御神楽ルカが、

もし純粋日本人だったり、

ちょっと容姿がアレな女の子だったら、

まず、間違いなくいじめのターゲットになっていただろう。

誰もがうらやむ妖精のような風貌があったからこそ、

彼女が望む学園生活を送ることができたのだ。


もちろん、学園生活を送るうえで、

最低限の会話はみんなとするし、

話しかけてくる級友を無視するような真似もしない。

ただいつも、

事務的な会話と、何を考えているのか全く読めない表情、

そして、話が長くなりそうになると、

「失礼。」と言って席を立ってしまうのだ。

 


 

誰もが彼女と仲良くなるのを諦めかけた一年の夏、

ちょっとした転機が訪れる。

一年生のオリエンテーリングで、

箱根の山に校外活動しに行ったとき、

クラスのあるグループの女の子たちが、

下山ルートからはぐれて、川に転落、

溺れはしなかったものの、

足をくじいたまま流されて、

所在がわからなくなってしまったことがあった。

携帯電話はつながるものの、

本人が自分のいる場所を説明できず、

またみんなと合流するために、

どこの道を辿ればいいのかわからず、

大騒ぎになってしまったのだ。


ところが、そんな時、

どこからともなく御神楽ルカが現れて、

どんな方法を使ったのか誰にもわからないまま、

はぐれた女の子がどこにいるか、

どの道を使えば彼女を助けられるのか、

的確な指示を教師たちに行い、

あっという間に解決してしまったのである。

 



その後の騒ぎは想像できるだろう。

助けられた女の子の感謝、

教師たちやクラスメイトの称賛、

それら全てを御神楽ルカは拒絶した。

 「ケガも大したことなくて良かったですね、

 でも前に言ったように、

 私は目立ちたくないんです。

 これまで通り、何もなかったことにして下さい。」


そして再び、御神楽ルカは誰ともしゃべらなくなった。

ただ、彼女への周りの評価は、

少しだけ変化した事は間違いない。

それまでは、例え絶世の美女と認めても、

「なに、スカしてんだ、あの女。」

「嫌味よね~、何様かしら?」

といったネガティブな陰口もあったのだが、

この事件以降、

「あの子、やっぱりいい子なんじゃない?」

「もしかしたら、守護霊とか何かいるのかしら?」

みたいな、

妙な噂もこの時から広まっていったのだった。

 


 

そして・・・。

 「ルカちゃん、お願い!

 あなたの不思議な能力で、旧校舎の謎を解明できると思うの!

 一緒に来てくれないかなぁ!?」


永島先輩の熱烈アタックを、

御神楽ルカは一蹴した。

 「嫌です。」

 「即答~!?」

 「放課後は生物部の生き物の世話がありますし、

 失礼します。」

 「あっ、ねっ、待って!

 そりゃね、

 旧校舎に何もなければそれでいいのよっ?

 でも、何か噂が事実だとして、

 とんでもない事件が起きたら大変じゃない!?

 誰か犠牲者が出たり、

 警察が来たりして、この学園のことが変なことで有名になったりとか・・・!」


その時、御神楽ルカは少し変な反応を見せた。

永島先輩の言葉に反応したのか、

それとも何か思い出したのか、

それは誰にもわからない。

そして御神楽ルカは言ったのだ。

 「あの・・・私は行きませんけど、

 うちの後輩に一人、

 ちょっとした感覚というか、

 感受性が強い子がいるの・・・。

 彼女なら、あなたたちの取材に役に立つかもしれません・・・。」


永島先輩大興奮!

 「えっ!? マジマジマジマジぃ~!?

 そんな子いるの~!! 紹介して紹介して紹介して~!!」

 「あ、いえ、

 頼むのなら、自分たちで直接行ってください。

 いくら私が先輩とはいえ、

 部活に何の関係もない話で命令もできませんし・・・。」



そして話は1年生の照屋君に降りてくる。

 「名前は聞いたわ、

 1年3組にいる伊藤麻衣さん、

 うちの部には3組の子いないからさ、

 あなた交渉にいける?」

 「えっ、僕・・・ですか?

 他のクラスの子なんて知らないですよ・・・。」

 「わかってるわよ、交渉には私も行くわよ、

 本人は知らなくても、クラスに誰か知り合いいないの?」

 「勘弁してくださいよ、

 僕そんな交友関係広くないし・・・

 あ、3組か・・・岡島がいるな。」

 「お! いーじゃんいーじゃん!

 その子は伊藤さん誘えそうな感じ?」

 「あ、岡島はクラスの人気者みたいだし・・・

 大丈夫じゃないかな・・・?」


いや、人気者じゃないよ・・・

単にお調子者ってだけで・・・。

 「へぇ~、君とはどんなつながりなの?」

 「あ、えーと、はは、

 あの・・・フィギュア関係の・・・。」

 「ごめん、もういいわ、喋らなくて。」


 

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