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メリー新世界篇8 その後

 

言い訳をするしかないオブライエン船長。

 「待ってください、

 私も彼女が戦うのは初めて見ました!

 ・・・確かに彼女が人を殺す、という事は薄々知ってました・・・。

 出航する前の港で、最近、悪名高い犯罪者やギャングが、

 次々と鋭利な刃物で殺されていく事件がありまして・・・、

 そんな時、私はあの巨大な鎌を持つ彼女・・・メリーに出会いましたので、

 ただ、ここまで凄いとは・・・!?」


甲板には大勢の死体が転がっている・・・。

船員達も、ようやく次の行動に移り始めた頃だ。

オブライエンは必死に冷静さを保ちながら、大声で船員達に指示を与えていく。

収まりがつかないユージンは、隙を見てはオブライエンに話しかける。

 「な、なぁ!?

 あの人形は危険はないのかい?

 もし・・・僕らを襲ってきたら!?」

 「・・・確かに保障はできませんな・・・。

 ですが、彼女にその理由はないでしょう、

 彼女は、この先の大陸に向かいたいと言ってるのですから・・・。」


ユージンはまだ何か言いたそうではあったが、それ以上、反論できずに船内へ降り始めた。

まだ、心臓が早鐘を打っている・・・。

無理もない、

信じられない出来事が立て続けに起こったのだ・・・、

この先果たして、無事に旅を続けられるのだろうか・・・?


ユージンが自分の部屋へ入ろうとしたとき、

彼はまたもや、心臓が停まってしまうかと思われるような事態に遭遇する。

自分の部屋の先に、あの得体の知れない人形が立ち尽くしているのを見てしまったからだ。

 「ひっ!?」

思わずあげた悲鳴に、人形メリーは振り返った。

 「・・・ユージン様、驚かせてしまったようですね、

 ごめんなさい、すぐに自分の部屋に戻りますから・・・。」

 「あ、ああ、い、いや、メメメ、メリー、

 こっここで何をしてたんだ・・・?」

 「別に何も・・・。

 ただ、さっき手を砕かれましたので、元に戻るのを待ってただけ・・・。

 別に場所はここでなくても・・・、

 あと、2~30分で元通りになると思うのですけど・・・。」


やっぱり化け物だ・・・、不死身だとでも言うのか、コイツは?

 

 「あ・・・、あの海賊に何をしたんだ?

 キ、キミに触ると石のように固まってしまうとでも言うのか?」


メリーは、自分の腕を見ながら興味なさそうに答えた。

 「そんなことはないわ・・・、

 あなた達には何が起きたかわからないでしょうけど・・・、

 いえ、本当は何も起こってはいなかったのよ、

 あの男には幻が見えていただけなのです・・・。」


そういって立ち去るメリーに、ユージンは更に質問をする。

 「あ、あのキミを包んでいた白いもやみたいなのも、か!?」


そこで初めて、メリーはユージンに興味を持ったようだ、

足を止めて後ろを振り返る。

 「? 見えたのですか?

 死にゆく人達の迷える魂を。」

 「えっ? 魂? あ、あれが?」


メリーは、そこで喋るのをやめてしまった・・・いったい何を考えているのだろうか?

ユージンは好奇心と、恐怖の狭間で心を揺らしていた。

 ど、どうしよう?

 このまま、部屋に戻るべきだろうけど・・・。


ところが人形メリーは、とんでもないことを言い出したのである。

 「ユージン様、よろしければあなたの部屋にお邪魔してもよろしいかしら?」


うええええええええっ!?

とんでもない、

冗談じゃない、

ふざけた事を言ってはいけない!

・・・と言いたかったのだが、ついつい、女性に対する条件反射のようなものでユージンは、

 「ど、どうぞ、是非私の部屋においで下さい・・・!」

なんてバカなことを言ってしまった。

だが、もう後には引けない。

貴族に二言はない。

ユージンは観念して、メリーを部屋に迎え入れた。

 


部屋の中は片付けられている。

乱れているのは、

せいぜい、慌てて出かけなければならなかったために、無造作に放り出された寝巻きだけだ。

恥ずかしそうに片付けるユージンにメリーは言葉をかける。

 「人形相手に気を遣う必要はないですわよ?」

 「あ、ああ、だ、だけど、仮にもキミは Lady だろ?

  ・・・こんなものを朝っぱら見せるのも・・・。」


その姿を見ていた彼女はポツリと独り言を言う・・・。

 「・・・人間だったなら笑う所ね・・・。」

 「えっ? 何か言った?」

 「いいえ、なんでもないですわ。」


片付け終わったユージンは、落ち着くためもあるのだろう、ワイングラスを取り出した。

 「・・・一杯やらせてもらうけど、キミは・・・飲めるわけないよね?」

 「もちろんです・・・、でも味はわからないでもないわ・・・。」

 「ええ!? な、なら君の分も・・・!?」

 「いいえ、必要ないといったでしょう?

 ・・・と言いたいけど、ちょうどいいわ、

 この部屋に来た目的を果たさせていただきましょうか。

 ううん、グラスは必要ありません、

 あなたは黙ってそのワインを味わって下さい。」


訳が分らない・・・。

だが、ユージンには他の行動を選ぶ余裕すらなく、

その芳醇なワインの香りに一瞬の至福を感じた後、ゴクリと咽喉に流し込む。

 「・・・フゥ・・・うわっ!?」


気持ちが落ち着くかと思ったのに、飲んだ瞬間、メリーの冷たい手が自分の腕に這わせられる。

 「ちょ!何を!? 私の腕が・・・!」

 「ごめんなさい、

 でも大丈夫です、なんともなってないでしょう?

 それよりワインの味はいかが?」


・・・確かに腕に異常はない・・・。

メリーとのカラダの距離も近い・・・。

これが本物の美しい女性だったらどんなにいいか・・・いやいや、今はそんなこと・・・!

ワインの味を尋ねられたユージンは、今、味わったワインのふくよかな余韻を、

口の中でたっぷりと膨らませていた。

 


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