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メリー新世界篇6 処刑執行

 

この状況を一部始終見守ってたユージン達には、何が起きたのかまるで理解できていない。

メリーが捉えられ、絶体絶命のピンチかと思っていたのに、

全く不可思議な事に形勢はいつの間にか逆転しているのだ。

海賊の手足が、気味悪く変色してしまっていることも、ユージンの目には映っていない。

一方メリーは、ベッドの愛人にでもにじり寄るかのように、

挑発的な仕草で、這いつくばる海賊の胸元や背中に、「やさしく」手を伸ばしていく・・・。

 「くっ、来るなァアア!!」

 「あら? 今までこうやって何十人もの女性の上にのしかかってきたんでしょう?

 最後に彼女達の気持ちを味わってみたら・・・?」

 「おッオレはッ・・・こんなことぉ!

 奴らを可愛がってやっただけだァ!!」


メリーはそんな言葉を気にも留めず、

海賊の首元までにじり寄り、その忌まわしき抱擁を頭目のカラダに味あわせた・・・!

 「・・・下種・・・。

 さぁ、じゃあ今は私があなたを可愛がってあげる・・・。

 抱いてあげるわ・・・私の愛しい人・・・。」

メリーは、もはや丸太同然の海賊の両足の間に、自分の白い太ももを挿しいれる。

そのか細い腕が、蛇のように男のウェストや胸を這い回っていく・・・。

海賊は半狂乱だ・・・。

 「ヒィィィッ!? やめてくれぇぇ!!

 ・・・おい! や、野郎ども! 見てねぇで助けろぉォ!!」


既に恐慌状態のため、声が裏返っている。

そうは言われても、海賊の手下達も、今、頭目のカラダに何が起きてるのかわからないのだ。

一人で勝手に動く人形・・・、

仲間たちを切り刻んだ恐ろしい物体・・・、

そして正体不明の行動で、頭目を赤子のようにあしらう死神の遣いに、

勇気を奮い起こせる者などいなかった。

そしていまやメリーは、海賊の首筋に冷たい口づけをあわせていた・・・、

頭目は、ただひたすら哀れな叫び声をあげるだけで、もちろん抵抗などできやしない。

 「ほら? 私はあなたの胸をも掴まえたわ・・・、

 もうあなたの胴体も死に始めてる・・・。

 もう少ししたら、内蔵や・・・心臓すらも腐って停まってしまうわよ・・・。」

 


 

 「やめてぇーっ! 助けてぇっ!! オ、オレが悪かったぁ!!

 もう海賊はやめるっ、だから助けてェ!?」

 「・・・もう遅いわ・・・、だんだんと近づく・・・

 死の恐怖をゆっくり味わって死になさい・・・。」


メリーはそう言って、視線を宙に向けたまま痙攣し始める頭目のカラダから、ゆっくりと離れた・・・。

そして彼女は、そばに転がっている死神の鎌ゲリュオンを拾い上げる・・・、

まるで、スローモーションのような静かな動作で・・・。

すでにその場にいる全員が、この先の結末を理解しつつも、

次の行動を起こす事も出来ずに、この光景を見守り続けた。


鎌の柄の先端を、両手でガッシリと掴んだメリーは、

身動きの取れない頭目の真正面にまで近づくと、

彼を見下ろし、ゆっくりとアラベスク文様の鎌を振り上げる・・・。

先ほど砕かれた右手首は、軽く鎌を支える程度には支障がないようだ。

一方、もはや頭目は屠殺前の哀れな子羊だ、

涙を流しながら声にならない声をあげている。

頭目の眼前には、メリーの薔薇の刺繍のドレスが揺れている・・・、

その視線の先には、メリーの白い、無表情な高貴な顔・・・、

今、残酷な鎌の刃は彼女の頭の後ろに隠れているが、

恐らく次にその刃先が見えた時、もう彼の命は・・・。


そしてメリーはゆっくりと・・・

冷たい死刑宣告を告げる・・・。

 「私はメリー、私は鎌を振るう・・・汚れた命を絶つために・・・。」


その鎌が振り下ろされた。

嫌な音と共に

一人の男の首が飛び

それは転がるように海に飛び込んだ。


残ったカラダからは、激しい鮮血が飛び出している・・・。

これで終わったのだ。

ちょうど、そのことを知らせるかのように、雲の切れ目から金色の朝日が船に射しはじめた。

メリーの白い肌にも、明るい光が浴びせられていく・・・。

そしてメリーは、まるで人間の女性のような仕草で首を振り、乱れた髪を直し、

夥しい血が流れたこの狩場を後にした・・・。

 


仮に、メリーが残りの海賊達に興味を見出していたならば、

彼らはパニックを起こし、

大混乱に陥った後、ほぼ皆殺しの惨劇は避けられなかったかもしれない。

だが幸運な事に、彼女、メリーは力を使い果たしていた。

メリーが船室に戻ろうとするのを確かめると、

海賊達は慌てて、縄梯子を断ち切り、命からがら逃げ出していく。

・・・逃げ出したいのは海賊達だけではない。

オブライエンの部下の船員達も、海賊の頭目がメリーに触れた途端、

おかしくなってしまったのは理解できた。

メリーがそばに近づくだけで、後ずさり、恐怖と嫌悪を露わにする・・・。

彼女のおかげで命が助かった事など、考える事すら出来ず・・・。


もっとも、メリー自体、別に感謝をされたくて死神の鎌を振るったわけではない。

彼女は彼女なりの行動原理で動いただけに過ぎない。


船室への入り口には、相変わらずオブライエン船長とユージンがいる。

船長は比較的落ち着いているが、ユージンは他の船員同様、幽霊でも見たかのように怯えている。

勿論ユージンの恐怖など、メリーにとってはどうでもいい。


 「・・・オブライエン船長、船室に戻ります・・・。

 それと・・・扉と鍵を使いものにできなくしてしまったのですけれども・・・。」

 「ああ・・・、それは気にする必要はない、誰かに修理させるから・・・。

 それより・・・礼を言う・・・。

 おかげで最小限の被害で助かった。」

 「いいえ、次は期待しないで・・・。

 私は・・・誰かが殺されなければ、力は出せないのですから・・・。」


と、不気味な言葉を残しつつ、メリーは船内への階段を降りていった。

彼女の姿が見えなくなると、ようやくユージンが船長を質問攻めにする。

 「オブライエン船長!

 あんたはあの人形がどんな恐ろしい化け物か知ってて、この船に乗せたのか!?

 ・・・一体、彼女は海賊に何をしたんだ!?

 触っただけで・・・?

 もしかしたら、

 ・・・僕もあの時、彼女に触れたらとんでもないことになってたって言うのか!?」

 


「ぼっち妖魔」の方ですが、

明日の更新で、


フラア編に名前だけ登場させた、

斐山優一の息子カラドックが登場します。

明かされなかったシリス編の一部のストーリーがわかるかも。

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VRoid版メリーさん幻夢バージョン
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