表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
649/676

メリー新世界篇3 海賊

挿絵(By みてみん)

ぼっち妖魔は異世界に飛ばされる〜メリーさん、今どこにいるの?

https://ncode.syosetu.com/n9627fw/


3D画像も作ってみました。

せっかくの休みもこの作業で潰れてしまう・・・。

あ、画像クリックしても小説ページには飛びませんので。


 ゴトン!


いきなりの事で、ユージンの手からランプが落ちる。

オブライエン船長は慌てずに、ゆっくりランプを拾い上げると、

固まったままのポーズの、ユージンとメリーの顔を照らし映した。

のけぞったユージンには、狼狽と恐怖の色がその顔に浮かび上がっている・・・、

一方、表情のないメリーには、その心のうちを顔に出す術があるはずもないが、

上目遣いに睨んだそのナイフのような視線が、全てを物語っている・・・。


 気安く触ろうとするな・・・!


そしてメリーは、ゆっくりと真っ直ぐに伸ばした右腕を引っ込める。

 「・・・ユージン様・・・でしたね?

 私はただの人形ですが・・・、

 私は、召使でも奴隷女でも・・・ましてや玩具でもありません。

 私には、明確な意志と目的と・・・そして人格があります。

 この船に乗せて貰った代わりに、私にできる事があるのなら多少は協力いたしますが、

 貴方の所有物になるわけには参りません・・・。」


ユージンの顔に汗が垂れてきた・・・。

 どうなってるんだ? おれの言う事を聞けないってのか!?

 「き、きさま私を誰だと・・・!」


言いかけるユージンをメリーが制する。

 「ご覧の通り、私は人形です。

 あなたがあなたの国で、如何なる権力をお持ちか存じませんが、

 私には権力も財力もいかなる力にも拘束されません。

 ・・・ただ、だからと言って、私の都合で周りを騒がすのも本意ではありません。

 それでこのような、人目のつかないところでじっとしていたのです。

 ですので、極力私に構わないでいただけますか?

 もし・・・それが叶わぬなら・・・」


そこで船長が割って入った。

・・・これ以上、事態を険悪にさせるわけにはいかないと判断したのだろう。

 「ユージン様、最初に言ったでしょう、

 不用意な発言は慎んでいただくようにと・・・。

 これ以後、彼女と接する機会がないわけではありません、今夜は一まず・・・。」

 


仮にも貴族のユージンが、それで納得できるはずもない。

・・・だが、人形の言葉遣いから、

彼女のセリフが本気である事も、疑いようがない事はわかった。

しぶしぶと、その薄暗い部屋から退出するしかない・・・。

船長は扉を閉める前に、もはや真っ暗になりかかっている船室で、

一人立ち尽くす暗い姿の人形に声をかけた。

 「邪魔をしたな、メリー、

 また何かあったら声をかけるかもしれないが・・・。」

 「ええ、どうぞ?

 私の方には気を遣う必要はありませんわ、

 おやすみなさい、船長。

 ・・・そしてユージン様?」

 「ああ、おやすみ、メリー。」

そういって船長は、

たじろぐユージンに一度目配せをしてから扉を閉じた。


ユージンは挨拶どころではなかったらしい、

プライドを酷く傷つけられたせいだろう。

やむなく、帰りしな船長に食って掛かる。

 「どういうことだよ?

 なんだいあの無礼な人形は!?」


身分は勿論、貴族のユージンの方が上だが、年齢も人生経験も船長が上回る。

若きユージンをなだめることなど造作もない。

 「これは失礼を・・・・、ですが面白いものを見れたでしょう?

 それにユージン様は感じませんでしたか?

 人形メリーはいかなる権力も気にしないと言ってましたが、

 あの『人形』そのものに高貴な雰囲気が・・・。

 まるで貴族のスタイルを身につけているような・・・。」


 「えっ!?」

そう言われてユージンは後ろを振り返った・・・。

そう言えばあの物腰は・・・。

だが、それ以上詮索したところで何が明らかになるわけでもない。

しばらくして、二人はそれぞれ自分の部屋に戻った・・・。




その夜・・・いや、空が白み始める薄暗い船上の甲板・・・。

交代で寝ずの番をしていた船員が叫び声をあげる。

 「か、か・・・海賊だぁ、

 海賊が現われたぞぉぉーッ!!」

 

この時代にレーダーなどない。

朝もやの中から、突然3隻からなる海賊船が洋上に姿を現わした。

オブライエンやユージンの乗る船のクルーたちは、

直ちに持ち場について海賊船に襲撃への臨戦態勢をとる。

熟睡していたユージンも、突然の騒乱に目を覚ました。

 「・・・え? おい、何事だ・・・!?」


寝巻き姿で廊下に出ると、雇い主の自分を無視して船員達が慌ただしく駆け抜けていく。

・・・まさかこれは・・・。

ユージンは着替えて操舵室に向かう。

既にオブライエンは厳しい顔をして、部屋のガラス窓から甲板の騒乱を見下ろしていた・・・。

 「・・・お目覚めですか、ユージン様・・・。」

 「船長!

 まさか海賊に襲われてるのか!? ・・・一体!?」


慌ててユージンも窓の下に目をやると、

既に縄梯子をひっかけた海賊船から、

大勢のならず者達が乗り込んで、この船のクルー達と交戦している。

訓練されたクルーたちもよく戦っているが、圧倒的に海賊の兵数のほうが多い。

次第に押されていき、既に3人もの犠牲者が甲板に横たわっている。


 「・・・あれは、マックにブレポワ・・・そしてワイズマン・・・クソっ! 

 まだ目的地にも着いてないのに・・・!」

日ごろ温厚なオブライエンも、部下を殺されて激しい怒りの表情を浮かべている。

その激情に戸惑うユージンだったが、

船員達と関わりを持たないユージンにとっては、身の安全のほうが最大の心配事である。

 「オ、オ、オブライエン船長・・・!

 ここはだ、大丈夫なんですか!?」


オブライエンはユージンの方を向かずに、絞るように声を吐き出す・・・。

 「・・・生きるか死ぬかです・・・。

 例え降伏しても、こんな所で食料や燃料を奪われては、生き残る術はありません。

 あなた様の身の安全を図りたいとは思いますが、最悪の事態を覚悟してください・・・!」

 「そ、そんなぁ!?」


一方、甲板の上での戦闘を見下ろしている人物が、

マストのてっぺんにもう一人存在していた・・・。

荒ぶる海風に銀色の髪をなびかせ、薔薇の刺繍のドレスを纏ったモノトーンの人形が・・・。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRoid版メリーさん幻夢バージョン
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ