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メリー新世界篇1 出航

投稿遅れてすみません。


新作発表してます。

今後はそちらをメインに。


船は大西洋上を航海していた。

船は今で言うスペインの辺りを出航し、

かつて新大陸と呼ばれていた未開の地域に向け、一路、西へと進んでいた。

もともと、この大きな船も、商業船や貿易船とも言いがたい。

何しろ、新大陸には何があるかわからないのだ。

今の国々にはない、高度な都市文明が栄えているかもしれないし、

人間が住めないような、荒れた土地が広がっているだけなのかもしれない。

その途中の海域にすら、海賊が跋扈している可能性だってある。

そのため、この船は甲板に大砲が取り付けられ、船員達も戦闘訓練を積んでいる。

はっきり言えば、この旅はバクチである。

国のお偉いさんたちの気まぐれが発端な訳だが、

この遠征にかかる費用を取り戻せるだけの収穫があるかどうかもわからない。

貧乏くじを引いたのは、田舎の領主、ユージンだ。

家柄、戦功、経済力、全てが三流の彼にとって、この遠征は魅力的なギャンブルだが、

その費用の大半を自分で賄わなければならなくなり、

十分な収穫がなければ、彼の家は破産してしまうのは確実と見られている。

果たして、めずらし物好きの彼の性格は、この旅で吉と出るか凶と出るか・・・?


 「・・・船長、・・・オブライエン船長・・・!」

操舵室では幾人かのクルーと共に、ガッチリした体格の船長がコーヒーをすすっていた。

今は波も落ち着いて、順調な時期らしい。

だが、若いユージンにとっては退屈以外の何物でもない。


 「やぁ、ユージン男爵、いかがなさいました?

 コーヒーでもいかがですか?」

 「・・・ああ、それは頂くよ・・・、

 だが、島にはまだつかないのかい?

 もうずーっと二週間も船に閉じ込められっぱなしで気が狂いそうだ!」


 「・・・そうですね、過去の記録もないような島への旅ですからな、

 言い伝えどおりなら、この方角で間違いないのですが、

 どのくらいとなると、船の性能やスピードの問題もありますので・・・、

 ま、無事につけるのなら良いではありませんか?

 嵐や海賊に出会うよりマシですよ・・・。」

 

ユージン男爵は大仰な手振りで不満そうなジェスチャーをとる。

 「そりゃあね、安全ならそれに越した事はないけど、

 可愛い貴婦人もいないし、舞踏場も楽団もない、

 男だらけのバーで、お酒を飲んでもうまくもなんともないよ。」

 「ハハッ、お若いですな、さすがはユージン男爵だ、

 ・・・そうですな?

 では退屈しのぎに面白いものをお見せしましょうか?」


いきなりユージンの眼が輝く。

よほど刺激に飢えているらしい。

 「何だい!? 手品? 財宝?

 それとも海の奇怪な生き物!?」

 「んん・・・ある意味、全てにおいてあってるかも・・・いや『海の』だけは違いますな?」

 「ええ? じゃ、じゃあ、手品で財宝で生き物ってな、な、なんだい!?

 早く見せておくれよ、っていうかそんなものがこの船のどこに!?」


船長は腰を上げた、

やれやれ、とでもいいたげに・・・。

 「しかたありませんな、ただし、一つ約束してもらえますかな?」

 「な、なんだい! 早く言ってくれよ!」

 「・・・この船で見たことは、本国に帰っても誰にも言わないでいただけますか!?」


なるほど、法に触れるのかもしれない、ということか。

 「お・・・おっけー、わかった、約束するよ。」

 「それと・・・!」

 「まだあるのかい!?」

 「約束ではありませんが、『アレ』に不用意な発言は慎んでください、命を保障しかねます。」

 「『アレ』? 『発言を慎む』!?

 お、おい、それって・・・まるで人間に・・・、ええ!?」


船長は部屋に残る船員達に指示をだし、ユージンとともに操舵室を出た。

二人はどんどん船の下層へと下りてゆく・・・。

この下は資材置き場のはずだが・・・。

船長はランプを片手に、ユージンを案内しながら、簡単な説明を始めた。

 「二週間前、船が港を出る前に、私はとんでもないものに会いました、

 それまで、見た事も聞いた事もないものです・・・。

 それは私に対してあることを要求しました・・・、『この船に乗せて欲しい』・・・と。」


 

揺れる船の中でユージンは驚いた。

 「え!? てことは密航者かい!?

 困るよ!?

 第一、何で僕に報告をしないんだ!?」

 「報告をしなかったのは謝りますが、あなたが困る事は何もありませんよ?

 何しろ、『アレ』は水も食料も必要ありませんからな。」

 「・・・えっ?」


二人は船の一番下までやってきたようだ。

船長はジャラジャラと鍵を取り出し、ユージンにランプを預かってもらうように頼む。

その部屋には厳重な鍵がされており、簡単に出入りできるようにはなってない。

・・・何があるのだろうか?


 ガチャリ!

鍵が開いた・・・。

船長は再びランプをとると、その重い扉をゆっくりと開けた。

中は薄暗くてよく見えない。

気がせいて覗こうとするユージンに、船長は一言たしなめた。

 「そうそう、あまり驚くのも興奮するのもよくありません、

 これも命が危険です・・・。」

 「ちょっと・・・! 脅かさないでよ! 何なんだい? 猛獣? 人間?

 早く見せてくれよ・・・!」

船長は黙ってランプをもう一度、ユージンに手渡した、

今度は自分で見ては? ということだろう。

はやる心を抑えて、ユージンはゆっくりとランプを掲げた・・・。

船室の奥を照らす・・・。

何もない部屋・・・いや!


アレはなんだ!?


船室の奥に、華やかな衣装を纏った女性が膝をかかえてうずくまっている。

顔は膝にうずめているため、銀色のウェーブヘアーしか見えないが・・・。


 「オブライエン船長!

 どういうことです!?

 女性をこんな、暗い船室に閉じ込めていたっていうんですか!?」

 

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