フラア編以降のメリーさん５
その後に視えるもの・・・
湖の底・・・
歪む陽の光・・・
歓喜の表情を浮かべた男・・・
何度も何度もカラダを悪戯される光景、
・・・そして解放・・・
片目の老人・・・
鎌・・・文様のある巨大な鎌・・・ゲリュオン？
アラベスク文様の・・・ゲリュオン・・・鎌・・・死神・・・文様・・・
感じる・・・怨念、怒り、カラダが勝手に・・・
飛び散る首、
散血 無造作に転がる死体・・・！
私は空を跳び、
大地を駆ける、
壁を登り、天井を這う・・・、
汚れた命を狩るために・・・
そして・・・
蠢く白い蛇、
それはリーリト・・・？
本当に存在したの？
この子は・・・麻衣。
そして信じられないほど巨大な怨念・・・
銃やライフルで武装した大勢の男たち・・・
銃弾の嵐・・・
削られていく・・・カラダがなくなっていく、
滝のように銃弾を浴びせられて
それ でも
行か なくて は、
進まな くて は・・・
麻 衣 、麻衣、 麻衣っ麻衣ッ麻衣ぃッ・・・！！
意識がなくなっていく・・・
私の意識ではない・・・。
私の心に入り込んでいる残留思念が・・・。
これ以上、読み取れるものは・・・何もない・・・。
涙が・・・
気がつくと、私の頬からは大粒の涙が滝のように溢れていた・・・。
言葉や文章には出来ない、何十年も何百年もこの人形が見てきた感情を、
ほんの・・・たった一瞬触れただけだというのに・・・。
この涙はきっと私の涙ではない。
私はまた「見た」だけなのだ・・・。
そう望んだのは自分だ・・・、
そう望んできたのだ・・・、
選んだのは自分・・・全て分りきっていた事だ。
陽の当たらない生活・・・
呪われたカラダ・・・、
忌まわしき仲間達・・・、
そして当然の報いともいえる死に様・・・。
生まれ変わり、新しい肉体を得た後も、
過去のしがらみを捨て去る事は出来なかった。
・・・恐らくそれが私が自分に与えた罰・・・。
どんな華やかな舞踏会も、
舌がとろける様な宮殿の晩餐も、
カラダが消えてしまうような性の快楽でさえも、
私が芯から満足できうるものではない。
私は全てを理解した、
この人形が一体何なのかと・・・。
そして、一時的にバラバラになっている自分の心を組みなおし始めた。
これまでの自分とこれからの自分・・・、
さらに目の前にある・・・壊れた人形・・・。
先ほどのサイコメトリーで、この人形の「使い方」も認知できている。
最初の住人だったマリーという少女には無理だったかもしれないが、
自分にはできる・・・！
所詮、自分が観客にしかなれないのなら、
心や感情を捨て、このまま世界の行く末を見続けるのも一興だ。
どうせ、今のカラダも、あとは老いさらばえていくのみだ。
もともと、自分のカラダだというのもおこがましい。
もういいわよね、私？
あなたも十分楽しんだでしょう？
私は自分の荷物の中から、護身用の短剣を取り出した。
タイミングや、やり方を失敗をすればただの自殺だ。
うまくできるだろうか？
いや、ダメならそれでも・・・。
うまい体勢を保持するのが難しい、
しっかり人形を抱き寄せ、その硬い唇に口付けを・・・。
要領はサイコダイブを行うような形だが・・・。
ナイフを自らの心臓に近い部分に突き刺し、
即死ではなく、最低でも数秒意識を保ち、なおかつ痛みや苦しみに耐えつつ、
精神を移動させねばならない。
理屈は簡単だが、かなりの荒業だ。
最後の住人だったリーリトの時は、もう一人の術者の協力があったようだが、
たった一人で、この作業を行うのは・・・。
私の夫・・・純粋すぎたランディ、
顔をあわせる度にいがみあってたわね・・・セザンヌ、
あんなに尽くしてくれたのに、最後まで騙してしまった、ザジル・・・、
そしてあなたに・・・もう一度、会って謝りたかった、フラア。
斐山優一・・・いいえ、天使シリス！
スーサの王アスラ！
お前たちの目的が何だか知らないが・・・、
お前達の騒乱に巻き込まれ、多くの者達が命を失った。
私も今、人間の命を終える！
満足？
それとも、もう私たちなどには興味を失い、
次の世代の人間達をも利用しようとでもいうの？
せめて見極めてやる。
この不死の人形のカラダを使って！
フラア！ ランディ！！
私はあなた達と同じ道は歩めないけれど・・・
この人形の目で、あなた達が追い求めていたものを少しでも・・・！
ここでイザベルと名乗った方はお亡くなりになります。
最後に名前が出てきた「セザンヌ」は初掲です。
大陸戦争後に九鬼帝国から逃れてきてフラアに保護された九鬼帝国王族の一人です。
ああ、「フラア編２ その後の九鬼」で名前出てないけど、その存在が言及されてますね。
次回メリーさん復活。
