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フラア編以降のメリーさん2


 グワァ・・・


どこからか、ワタリガラスの声も聞こえる。

こちらを監視しているようだ。

襲ってくるでも誰かを呼ぶような声でもない・・・、

この場所は、かつて夫が足を踏み入れた「土地」と、同種のものなのだろうか?

その時は気味の悪い「馬車の音」が近づいてきたというが・・・。


ワタリガラスの鳴き声は、私の前に拓けている道の少し先から聞こえてくる。

・・・まるで私を先導するかのように・・・。

もしかして本当に私を案内する声なのか?

この先に何があるというの?


すでに時間の感覚はない・・・。

とは言っても私にとって、時間はもう無意味だ。

これからは、誰とも関りを持つこともないのだから。


どのぐらい歩いたのかもわからない、

落ち着いて立ち止まれば、足の痛み、疲労感、たいまつを持っている手のつらさ、

荷物をかけている肩の重み・・・、

全てがはっきり苦痛として自覚できるのだろうが、

今、私の意識はこの奇妙な世界に向かって開かれている。


・・・恐怖?

今のところその感覚もない・・・、

もともと、そんな感情には自分は無縁の人間だ、

というよりむしろ、

この世界が一層、私の感覚を麻痺させているだけなのかもしれないが・・・。

 


周りには霧が立ち込めているようだ・・・、

上空の風も大人しくなっている。

朝が近いのだろうか?

幾分、周りも明るくなっている気がする・・・。

いや、違う・・・。

目的地が近いのだ・・・。

森の中心地・・・、

そこだけ少しぼんやりと・・・明るくなっている。


 ガシャリ・・・   ガシャリ・・・


どこからか金属のすれる音も聞こえる・・・。

少し驚いて足を止めるが、こちらに向かう音ではない・・・。

・・・あの茂みの向こうが明るい、

一体何が・・・?


 ガサッ、ガササッ・・・

茂みの木々を避けるように進むと・・・、

私の眼前に・・・、

小さな・・・穏やかな池・・・沼? と、

ボロボロに崩れかかった、小さな家を見つけた。

それは薄い霧が立ち込めて、

うっすらと白く、幻想的な光景に見えなくもない。

もう、今が真夜中とは感じられない。

たいまつすら必要ない。

私の心臓が早鐘を打ち始めた・・・。

緊張・・・不安・・・期待・・・恐怖?

いったい、ここに何があるのだろう?


夫もこんなところまでは来れなかったはずだ、

・・・あの時、無力だった夫は「彼女」を置いて逃げ出したのだから・・・。

だが、森の途中で夫たちが遭遇したという二人の妖魔・・・、

その正体が何であれ、

そんな化け物はここに来るまで一度も姿を見せない。

では、この老朽化した家の中に?

本当に、そんな「物」がいるのだろうか・・・?

 

 

私は家の周りを観察してみた・・・。

時折、洗濯物を干すかのような竿がある・・・カビだらけだ。

何に使うかわからない棒切れ・・・武器にすらならないようだが、変な赤い模様が塗られている。


生活感はあるが、

もう長いこと、この家には誰も住んではいないのだろうか?

私は何かの手がかりを求めて、家の中に入る決心をした。

・・・扉は、土やコケのようなものが付着している。

開けようとすると、ガタガタつっかえるが、開かないわけではない。

思い切って扉そのものを外してみた。

中はさすがに薄暗く、たいまつを使わなければ何も見えない。

・・・家を燃やさないようにしなくっちゃ。

部屋の中を炎で照らすと、

案の定、ガラクタや訳の分らない小物で一杯だ。

大きなベッドには蜘蛛の巣だらけ、

テーブルの上には・・・端々が割れているお皿や、カップ・・・これは、

誰かの頭蓋骨・・・?


奥に暖炉がある。

薪はくべられていたようだが、途中で燃え尽きたらしく、消し炭しか残っていない。

代わりの薪はすぐに見つかり、少し時間はかかったが、

たいまつの火を移して部屋全体を明るくする。

ランプにも火を灯そう、

たいまつは危ないから外に・・・。

 

ここは「あの場所」です。

しかし「あの二人」の姿は見えません。


・・・永久に閉じ込められ続ける筈だったのですが・・・。

彼女達は一体どこへ?


それはフラア編の物語の中のお話。

手掛かりはレディー メリー編第五章あたりに。

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