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緒沢タケル編16 神々の王ゼウス 墜落する天空の王

 

一縷の望みどころか、最低最悪の事態だ。

鬼に金棒などという生易しいレベルではない。

雷を操る神が、

更に雷を生み出す道具を手に入れたのだ。

その相乗効果とはいったい如何なる規模のものか?

サルペドンはもう何もできない。

ただ、上空にあるゼウスの姿に、無言の視線を送るだけだ。


その胸中、既に死を覚悟しているのだろうか・・・。

元来、そのサイキックパワーは膨大なる物ではあったが、

ここまで生命活動そのものに危険の及ぶダメージを負ってしまったら、

これ以上エネルギーなど湧き出てくるはずもない。

もう、サルペドンには何もできないのだ・・・、


その最後の瞬間をただ、待ち続けるのみ・・・。


 

 


そしてスサの仲間たちの非難はタケルに注がれる。

冷静に考えれば、タケルの行動を理解できなくもないのだが、

スサの最後の切り札である天叢雲剣さえも敵の手に渡ってしまっては、

この後・・・、

サルペドンが処刑された後も、スサに生きる望みはなくなってしまう。

タケルの行動はあまりにも短慮だったといって差し支えあるまい。



だが!

当のタケルは、みんなからの非難や糾弾など耳を貸さない。

彼も待っている!


ここにあってまだ何かを待ち続けているのだ。


タケルの行動を腑に落ちなかったマリアは、

ここで初めて、タケルに何か他の意図があったことに気づいたのである。

 「タケルさん、あ・・・あなたまさか!?」



その表情に・・・

口元が緩んだのは見間違いか・・・?

いいや、タケルははっきりと叫んだのだ!

 「ちげーよ、ゼウス! 

 賭けは・・・これでオレ達の勝ちだっ!!」


  


そこでマリアはタケルの本当の作戦に気づいた!

まだ、他のメンバーは何のことかわからない!

そこで彼らはタケルに倣い、

今、まさにゼウスが最後の攻撃を繰り出すその光景に目を奪われた。


いったいこの状況で、どうやって!?


天空にあるゼウスの・・・そのさらに極北の高みには、

これまでにないほどの雷光が胎動し始めている!

それこそ、このピュロスそのものを破壊しそうなほどのエネルギー!?


それらはまるで生き物のように、

黒雲の表皮や中心部へと蠢き続けている。


天叢雲剣を掲げているゼウスの体は、

雷そのものの化身であるかのように、薄く薄紫の光に包まれてゆく!


こんなものを食らったらサルペドンは一瞬で消し炭だ!


 

ゼウスは自らの集中し続けるエネルギーが、一つの頂点に達したことを自覚した。

そして標的の姿を確かめるべく、

最後の視線をサルペドンに向けた時・・・


 

ゼウス・・・

彼のカラダに違和感が・・・。

 「ん? なんだ、この右腕の感覚は・・・!?」


ふと自分の腕を見上げると、薄い光に包まれた自分の腕の周りに、

青白い煌きが・・・。


 バチィッ! 


・・・バババババッ!!


 「なっ!? これは!?

 エネルギーが・・・逆流ッ!?」


そう!

この場にあって、この現象を理解していたのはタケルとサルペドンのみ!!

天叢雲剣は、その資格がある者にしか使用を許されない!!

スサ当代のタケルにしたところで、胸元の紋章を身に付けていないと、

この剣を使用することはできないのだ!!


タケルが最後に賭けたのはまさにこの一点!!


今や、天叢雲剣はゼウスを主人とは認めず!

その牙を使用者、ゼウスに向けて襲い掛かったのだ!!

 「ぐっ!?

 ぐわああああああァあァァああァァァあああああァーッ!!」

 

天叢雲剣の電光は、たちまちゼウスの肉体を蹂躙するっ!

その光景、もはや誰にも目を背けることが出来ない。

ただ、

事の成り行きに、呆然と目を奪われるだけ・・・!



そして・・・、

天空の王は墜落する・・・!

ゼウスが、

ついに大地に沈み落ちた響きは、この地全ての者の耳にこだました・・・。


 終わった・・・?


 これで全てのケリがついた・・・のか?


サルペドンはようやく片膝をついて立ち上がり、

よろめきながら、かつての仇敵の姿を覗き込む・・・。

まだ、息はあるようだ。

辺りには、ゼウスが落とした天叢雲剣が転がっている・・・。 

 

誰にも聞こえる声ではない。

それでも、サルペドンははっきりと言葉に出さずにはいられなかった。

 「ふ・・・勝ち名乗り、など、あげられる姿ではないか、

 だが、タケル・・・、

 ありがとう・・・、

 あの小僧が・・・、

 泣き虫ハナ垂れ坊主が・・・本当にオレを救いやがった・・・。

 美香よ、誇るがいい、

 お前の弟は、スサを・・・またも世界を救ったのだぞ・・・!」


そのままサルペドンはよろめきながら、首を仲間たちのほうへと向ける。

この距離でははっきりと見えないが、

タケルやマリアたちの歓喜する様子が窺える。


反対に狼狽し始めるのはアンピメデスたちだ。

ゼウスの勝利を疑わなかったばかりか、主人の変わり果てた姿を想定すら出来なかったのだ。

それはパニック状態に陥っていたといっても過言ではない。

このまま舞台に乱入し、ゼウスの仇を取ればいいかのか、

それとも、まだ主が生きていて、

サルペドンと最後の決着をつけるべく、再び立ち上がるかもしれないという淡い期待も捨てきれず、

何をどうすればいいのか、統率が乱れ始めてしまう。


その時、

彼らの背後に一人の人物が・・・。


 



次回、後始末に追われるオリオン神群の皆さん。


オリオン神群編全ての戦いがこれで終わりました。

しかしもうちょっと続きます。


なお、天叢雲剣は誰なら持てるの?

という謎ですが、

昔、なんかの書物で読んだ謂れを設定してます。


この物語では明らかにしてませんが、

ヒントを言うと、「美香なら紋章無しでも使用可能!!」

ただまぁ、いかに彼女でも「紋章」無しで雷撃を撃てるかどうかはまた別の話です。


あくまで彼女なら、剣に拒絶されることはないというお話です。

 「次回! 転生したら天叢雲剣だった!!

 ~オレの大事な部分を握っていいのは、きゃわいいおんにゃのこだけだぜ?」


↑嘘です。あ、でも実はホントにそれかも・・・。

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