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緒沢タケル編16 神々の王ゼウス 史上最大の戦い


先に口を開いたのはサルペドンだ。

 「・・・懐かしい・・・、

 本当に懐かしい顔だが、少し老けたようだな。

 それに、かつての記憶通りなら、もう少し引き締まっていたカラダだったはずだが・・・、

 玉座の座りごごちに、怠け癖でもついたのではないか?」


ゼウスは自分の腕に止まっていた鷲達を、今一度大空に羽ばたかせると、

やがて鷲は遥か上方の、ゼウス神殿に向けて帰っていく。

そしてようやく、ゼウスはサルペドンの問いかけに機嫌よく、笑い始めたのだ。

 「ふ、フッハッハッハッハハハ!

 そういうお前はやつれたな、

 昔はもっと瑞々しい肌をしていたぞ?

 なにかと苦労していたのだなぁ?

 懐かしいのは私も一緒だ!

 だが今度はもう片目では済まさぬ。

 わざわざ・・・この私に引導を渡されに来たのか、

 それとも自らの死に場所は、やはり生まれ育ったこの地がふさわしいと考えたのか?

 安心しろ!

 盛大な墓標を立ててやろう、

 この私に逆らった愚行を存分に記してな!!」


 「ほざけ・・・!」

サルペドンが両手を広げ槍を構える!

普通の戦闘なら、そのまま一本の槍を相手に向けるところだろうが、

今、彼が手にしている槍はあくまでも避雷針だ。

サルペドンは先手必勝とばかりに、

その巨大なサイキックエネルギーを開放する!!


 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ・・・


大地が波打ち始めた!


 「う・・・うわっ!」

話には聞いていたが、タケルの目前でその能力が発現するのは初めてとなる。

いいや、

かつて騎士団との最終決戦では酒田もクリシュナも目撃はしている。

だが・・・これは・・・

あの時よりも更に巨大な・・・!


 「唸れ! 大地!!」


まさしく「大地の怒り」とする表現がふさわしい!!

地下世界のあらゆる物体・存在全てが激しく鳴動しているのだ!

ピュロスの兵は、大地に打ち付けた丸太にしがみつき、

スサの仲間は、ほとんどが立っている事もできずに、

地べたにしゃがみ込むか、這いつくばるか・・・!


ミィナはタケルの車椅子をほっぽりだして、ちゃっかりピュロス兵の用意した縄にしがみ付いていた。


 ああ、知っているとも!

 お前はそういうヤツだよな!!

タケルは車椅子を倒れないようにするので精一杯だが、

その視線だけは戦場から外さずに、

歯を食いしばって、この大いなる大地の揺らぎに耐え抜いていた。


そう・・・こんな能力を使われたら、

どんな能力者だって、自分の得意技を発現する事などできやしない!

だからこそポセイドンはゼウスと並び、オリオン神群最強と呼ばれていたのだろう。

そして、敵味方を関係なく巻き込むがゆえに、

これまで殆ど使うことを封じられていた禁断の能力・・・。


だが一対一の戦いなら、動きを封じられた相手に近づき、

絶対的な優位を以って、致命の一撃を食らわすだけでいい!

戦神アレスに対してそうだったように、ゼウスに対しても例外なくそれは・・・!


 

 「!?」

だが・・・タケルは更に信じられない光景を目撃する・・・。

この地にあって、

誰しも動けない・・・何も出来ないはずであるのに、

眼下に拡がるくぼ地の中の「二人」は、何事も無いように立ち尽くしているのだ・・・。

 「ど・・・どういうこ、ことだ!?

 サルペドンは と、当然としても、ゼウスまで!?」


タケルの後ろのほうで、

それまで何の感情も見せなかったアンピメデスは、ここで初めて哄笑をあげる。

 「ふ、フハハハハハ!

 と、当然でございます!

 あなた方は、ゼウス様の能力を『雷』を操るだけと勘違いしておいでではございませんか?

 否!!

 ポセイドン様が大地を操るなら・・・!

 ゼ、ゼウス様は『天空』の支配者でおわすのですぞ!?」

 「え!? て、天空!?」


そう・・・、

対峙するサルペドンははっきりと認識できた!

自分が大地を揺する能力を使うか使わないか、ギリギリのタイミングで、

彼は・・・

ゼウスは自らの能力の一端を垣間見せたのだ・・・!


 「ゼウス・・・貴様、レビテーション・・・空中浮揚を・・・!!」


そのゼウスは口元に緩やかな笑みを浮かべ、

ゆっくり・・・しかし確実にその体を大地から浮かせてゆく・・・。

サルペドンの顔の角度も、当然それにあわせて上空へ向けて・・・。


次第に空に浮き上がるゼウスは両手を広げ、

もはや、サルペドンの遙か10数メートルもの高さに舞い始めていたのだ・・・!

 「ハッハッハッハッハ!

 かつての同胞、ポセイドンよ!

 まさか忘れてしまったのではあるまいな!?

 この私の力を!!

 それとも呆けてしまったのかっ!?

 貴様では・・・

 決してこの私の能力に届かないということをなぁっ!!」


なんという事だろうか?

サイキック能力に目覚め始めたタケルにも、

今のサルペドンの大地を揺する能力が、どれほど巨大な物かは充分に理解できる。

それが・・・単純に体を浮かす・・・。

それだけの能力の前に全て封じられてしまうなんて・・・。

こんな呆気なく・・・。 


そしてゼウスは笑っているばかりではない。

大仰に広げていた両手の手のひらを、

少し・・・まるで何かを掴むかのような仕草で指を曲げた・・・。

何をするつもりなのか?

誰の目にもそれはわからなかった・・・。

だが・・・感知能力を有するマリアには・・・、

そして同じサイキック能力を持つタケルにも、

ゼウスが何かとんでもない事をしでかそうとする事だけは、充分に察知できたのである。

だが・・・その恐るべき能力は、

完全にタケルの予想の遙か彼方の出来事を引き起こした。


 「なんだ・・・か、風が・・・

 急に風が吹き荒れ始めたぞ・・・!?」


次第にその風は勢いを増し、まるですり鉢上の闘技場になだれ込むかのように吹き荒れ始める。

それどころか、周りの景色にも変化が生じた。

辺りが薄暗く・・・

いや、ゼウスのまた更に上方の空間に黒雲が立ち込め始めたのだ!!


あっという間に空は真っ暗だ。

そしてこの強風・・・。

今までこの地下世界に、「雲」と呼べるものは、その存在を確認された事などない。


それがここに来て初めて・・・

そしてこんなはっきりと、禍々しい分厚い雲がタケルたちの真上に積み重なっていく。

 「お、おい、この真っ黒な雲も、まさかオリオン神群の・・・

 ゼウスの・・・。」

呆気に取られる酒田さん、

だが、そんな呑気にしていられる状況ではない。


いま、

まさしくサルペドンが発揮した膨大な精神エネルギーに、

それと匹敵するほどの巨大なパワーが上空に集まりつつあるのだ。

ゼウスが創り上げた強大な体積を持つ黒雲が、

どれほどの厚みを帯びているのか、タケルにも分からない。

だが、ここから何が始まるのかは想像に難くない。


・・・だが、そんなものが・・・もし、

サルペドンの頭上に落下したら・・・。


 「ダメだ・・・逃げろ、


 逃げろサルペドーンッ!!」


 

ゼウスが高々と指をかざす!

その方向の先にはパリパリと乾いた音と共に、

青白い閃光が黒雲の中を蠢き始める。


 冗談じゃない!


それこそ天叢雲剣の雷撃など児戯にも等しい。

直撃したら、サルペドンの肉体は・・・消し炭だ!!

そしてついにゼウスはその絶望なる裁きを断行!

その逞しい腕を一気に眼下に向けて振り下ろす!

同時に青白き雷の牙が、

避けようと考える暇すら与えずサルペドンの頭上に降り注いだのだ!!


 「喰らえッ 雷霆ッ!!」



誰も正視できない!

あまりの眩さ!

あまりの轟音!!

そして何よりも・・・、

サルペドンの惨たらしい黒焦げ死体を想像するなという方が無理な話だ。

その場にいた全員が、

視力を正常に回復させた時、そこに広がる光景は・・・。


 



最後の戦いだけに、寄り道、脱線などせずに話を続けますよ。



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