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緒沢タケル編16 神々の王ゼウス 虹の女神イリス


アンピメデスはサルペドンの意図を理解したようだ。

 「・・・わかりました、

 伝令は送ってみます。

 しばし、この場でお待ちいただくことになりますが・・・。」


 「結構だ、アンピメデスよ・・・。

 賢明なるそなたの判断に敬意を表する。」


そこでスサは一度、腰を休め、軽く小休止をとる。

恐らく1時間ぐらいは待たされるだろうが、

交代して仮眠をとってもよいぐらいか?

サルペドンは既に緊張を通り越し、その精神状態は万全である。

何時間待たされようとも、もう彼の心が揺らぐことはないだろう。

戦いで命を落とすことになっても、

このまま和平案が受け入れられることになろうとも・・・。


だが、意外なことに伝令はあっという間にやってきた。

それも一兵卒や神官ではない。

タケルたちがその「接近」に気づいたときには、

いつの間にやら、彼らの眼前に姿を現せていたのである。

 

長い流れるような美しい髪の、長身の女性・・・。

オリオン神群特有の重厚なマント・・・。

お茶を飲みかけていたタケルは、

喉にむせながらも、いきなりの急展開に焦りながら対応する。

 「ゴホッ、ゴホッ、

 あ、あなたは、お、オリオン神群の一人か?」


彼女は、その外見のイメージに相応しい、美しい声を発して車椅子のタケルを一瞥した。

 「・・・虹の女神イリスと申します・・・。

 ゼウス様の代弁者としてこちらに参りました。」


意表をつかれて対応に戸惑うタケルより、やはりオリオン神群同士、

ここはサルペドンに任せたほうがいいだろう。

 「虹の女神イリスか、

 数十キロの距離も、歩くように神速で移動できる能力の持ち主・・・、

 まぁ来てくれたのがヘルメスでなく、そなたで助かった。

 ヤツなら交渉ごとも引っ掻き回してくれそうだったからな。」

 

虹の女神イリスは、髪を梳き上げながらサルペドンを注視する。

サルペドンこそが、かつての同胞ポセイドンと気づいたようだ。

 「あなたが・・・大地の神ポセイドン様ですね・・・?

 お会いできて光栄です。」


丁寧なイリスの挨拶にサルペドンも頭を下げる。

 「これは失礼、

 名乗るのを遅れたようだ。

 改めて、自己紹介しよう、

 かつてこのピュロスから逃げ出した愚かな者、ポセイドンだ。

 ・・・今はサルペドンと名乗っている。

 どちらの名を呼んでくれても構わない。

 それで、早速で申し訳ないんだが、我らの要求をゼウスに伝えたい。 

 元来、我らは地下の世界に干渉するつもりは一切ない。

 かつて、私とゼウスに思想と立場の違いから諍いがあったが、

 別に今更、他人を巻き込んでまで決着をつけたいとも思っていない。

 お互い、犠牲を出しすぎた。

 この辺りで兵を引くことを考えてみてはどうだろうか?」 

 

スサのメンバーも、ピュロスを守る兵士たちも、

イリスの返答をただひたすら見つめる。

だが・・・、

イリスの意志は・・・ゼウスの意志は最初から決まっていたのかもしれない。

 「・・・フーッ、

 そんなことだろうとは思っていましたよ。

 ゼウス様のご意志は既に決定なされています。

 その事をあなた方にはっきりさせる前に、

 私の感想を述べさせていただいてもよろしいですか?」


一瞬の間が開く・・・。

サルペドンが返答する間もなく、

次にイリスの表情が険しくなった!

 「何をぬけぬけと!?

 ・・・和平をお望みならば、何故アグレイア様や神殿の民を皆殺しにしたのですっ!!

 あのような蛮行の直後で、よくもそんな恥知らずな態度を取れるものですねっ!?」

 

スサの一団に衝撃と困惑が走る。

アグレイア神殿の惨劇は、タケルやスサには何の関係もない。

あの時の状況から、混沌の神とか言うカオスの手によるものだとは推定できたのだが、

実際、死闘を演じたタケルは、あの時点で神殿に起きた殺戮を知らない。

全てを知った時には、既にカオスは物言わぬ死体になっていたのだ。

本当にカオスが女神アグレイアを殺したのか、

また仮にそうだとして、

如何なる理由があってそんな凶行に及んだのか、結局のところ想像すらできなかったのである。

 「ちょ、ちょっと待ってくれっ!

 オレ達はアグレイアや神殿の連中を殺していないっ!

 戦ったのはカオスっていう若いオリオン神群だけだっ!

 オレ達が神殿に入ったときには、みんな殺されていたんだっ!!」


虹の女神イリスの眉がヒクついている・・・。

明らかに今のタケルの言葉に、さらに怒りのボルテージをあげてしまったようだ。

 「・・・もっとまともな嘘をついたらどうなの、野蛮人・・・!

 私たちの仲間にカオスなどという者は存在しないし、

 お前たち以外にアグレイア様に凶行を働くものなどいるものかっ!?」  


 「そ・・・そんな事言ったって・・・!」


やはりサルペドンがフォローするしかない。

 「虹の女神アグレイアよ、

 私たちも混乱しているんだ。

 何ゆえ、アグレイアが殺されなければならなかったのか・・・。

 そしてそなた達が、地上からやってきた我らを信用できないというのも仕方ないとは思う。

 だが、この件に関しては濡れ衣だ。

 我らはトモロス、シルヴァヌス、アレスを討ち倒してきたが、

 今更、他の神々を殺していないなどと、嘘をつく必然性もないだろう?」


 「そんな事は私どもの知ったことではありません。

 あなた方が我らの敵であることに、些かの間違いもないでしょう?」

 「だが、イリスよ、

 ゼウス神殿には全てを見通すモイライがいるではないか?

 彼女たちに聞いてみてくれれば判るはずだ!

 我らは不要な戦いや殺戮を好まないのだ!」


だが、イリスの返答は更に絶望的だ。

 「・・・それも何か策略を巡らせての言葉でしょうか、ポセイドン様?

 アグレイア様の神殿には結界が張り巡らされ、

 モイライの目を以ってしても見通すことはできませんでしたよ。」


 



カオスの凶行の目的はいまだ不明ですが、

スサとオリオン神群の戦闘中止を阻むためにやったことかもしれません。


・・・いえ、ただの遊びの可能性もありますが。

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