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緒沢タケル編16 神々の王ゼウス 将軍アンピメデス


さて、やはり今回も、

その異常に気づいたのはミィナだった。

それまで伏目がちにしていたものを、

なんとなくの空気の変化を察知して空を見上げたのである。

 「あ・・・あれ?

 空が見えなくなっている?」


それは字義通りの言葉ではない。

この地下世界は大地の空洞の中に作られた街だ。

そしてその広大な空間の中心部分に、太陽神ヘリオスが作った擬似太陽が浮かんでいる。

つまりはその太陽の向こうは天井なのだ。

ミィナの言葉の意味は、

「その天井」が見えなくなっているということなのだろう。


誰もがその場景に気づくと、サルペドンがお馴染みの・・・、

そして恐らく最後の道案内というべき解説を行った。

 「みんな・・・

 自分たちがこの世界に辿り着いたときのことを思い出してくれ。

 ミィナの村はずれにあった、洞窟の中の大地の裂け目から私たちは降りてきたな?

 そして、この地球には、似たような裂け目が12ヶ所あるということも。

 ・・・ここも・・・王都ピュロスもその一箇所なのだ。

 ただ、

 私たちが降りてきた洞窟とは全く様相は異なる。

 上を見れば判るように、上空には足場は何もない。

 地上から見下ろせば、この地は巨大な空洞・・・。

 今、この地に立っている自分たちには感じないだろうが、

 これより上空には強力な上昇気流が吹き荒れている。

 物理上、ヘリやハリアーなどの垂直下降のできる機体を使えば、行き来は可能だが、

 その気流が如何なるものの侵入を許さない。」


タケルが思わず聞き返す。

 「へぇぇ・・・、サルペドン、

 それで、ここら辺は地上で言うとどの辺りの地下なんだ?」


 「ふ、驚くなよ、ここは北極だ・・・。

 氷の真下だよ。

 当然、磁極も狂っているから、上空からは中の観測もできず、

 現代まで発見されずに残っているというわけだ。」


 北極の真下だって?

 いつの間にか、そんな遠くへ移動してきたのか。


もちろん、地表の遥か下方に位置するこの地では、

実際の地上での距離より大幅に短縮されているのだろう。

そして、怪我の為に歩かない分だけ周りの状況に目を配りやすいタケルが、

もう一つの変化に気づき始めた。

 「おい、みんな・・・、

 辺りを見回してみろよ・・・。

 今までもこの辺の住人が、物珍しげにオレ達を見ていたが・・・、

 どうやら遠巻きに兵隊たちも監視し始めているようだぜ。」


なるほど、

この辺りは王都ピュロスの街の外に位置し、

それほど人間の数が多いわけでもない。

だが、町の外へ行く行商人や、遊牧民が時折現れるその遠くで、

隊列ともいえぬ程度の人数だが、

スサの一隊を取り囲むようにして、ゆっくりこちらを追ってきているようである。


しかし、殺気は感じない。

とは言え、自分たちの存在を隠して尾行しているわけでもないので、

彼らの目的は、あくまでも近隣住人の警備か、

それとも・・・

スサの一隊を「逃がさない」ための追尾なのかもしれない・・・。


やがて景色に変化が生じてきた。

前方に小高い丘・・・というより山のようなものがある。

そこに白く光る建造物があるようだ。


この距離から見えるということは、かなりの大きさのようにも思えるが、

そのうち、その山の真下にいくつもの建物が見えるようになってきた。

どうやらあれが・・・。

 「ついに着いたんだな・・・?

 王都ピュロス、

 ・・・オリオン神群の王ゼウスがいる本拠地に・・・!」


間違いない。

さらに進むと、大勢の兵隊たちがその街の入り口を固めていた。

同時に、先ほどから、スサを取り囲むように付いて来た兵隊たちも、

スサの逃げ道を塞ぐようにしてタケルたちを取り囲んだ。

 

 

この場にオリオン神群はいないようである。

純粋に、王都を守る兵隊として、タケル達に攻撃を加えようというのか。

ならばこちらにも覚悟があるが、

まずはサルペドンが交渉にあたる。

 「ピュロスを守る兵たちよ、

 私はかつてこの地にあったオリオン神群が一人、ポセイドン。

 そなたたちは、我らをピュロスにいれないよう指示を受けているのか?

 だが我らは、まずこの地の支配者ゼウスと今一度、話し合いをしたい、

 どうか道を開け、ゼウスに伝令を飛ばしてもらえないだろうか?」


すると、兵たちの責任者と思しき、一際重厚な鎧を纏っている者が、

ゆっくりとサルペドンの前に現れた。

 「私めの名は、この地の将が一人、アンピメデス・・・。

 かつての神々の一人、ポセイドン様に謹んでお答えいたしましょう。

 我々が受けている指示は、あなた方をピュロスにいれず、

 街の外にございます荒地にご案内せよとの事です。

 無論、・・・そこにはゼウス様直々にあなた方とお会いすることになるでしょう。

 その場で話し合いをなされてはいかがですかな?」


なるほど、

ハデスと同じく、街中で争うつもりはないというわけか。

それは当然だろう。

ハデスとタケルの戦いでさえ、街中を避けたぐらいだ。

共に破壊の権化とも言うべき最強能力者二人がぶつかりあうのに、

その当事者とその一行を街中に入れて良い訳がない。


もっとも、はじめから戦場に赴くのであれば、

話し合いのペースに誘導することは困難だ。

できれば一度、テーブルにつきたいものだ。

 「栄えあるピュロスを守りしアンピメデスよ、

 そなたの立場は理解できるが、せめて一度、ゼウスに伝令を飛ばしてもらいたいのだ。

 我々は、これ以上・・・誰の血も見たくない。

 仲間は勿論、かつての同胞・・・そしてキミ達も、だ!」


サルペドンはサングラスを外して、醜い傷跡をアンピメデスに曝け出した。

サルペドンの言葉には、

懇願と誠実さと・・・そしてわずかながらの脅しが含まれている。


生死と隣り合わせに生きているものなら、誰でも感じることが出来るだろう。

アンピメデスは臆病に身を竦ませる人物ではないが、

この場でのサルペドンの覚悟が本物であることに、

何ら疑う必要すら感じなかった。


 


古代ピュロス文書には3人の貴族?または権力者の名前が記されています。

その内の一人、a-pi-me-deことアンピメデスさんです。


もう記憶の彼方ですけど・・・確か。

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