緒沢タケル編15 混沌たるカオス 最後の攻防
カオス戦決着!!
「うおおおおおっ! てめぇ、この野郎っ!!
もう指令なんてどうでもいいっ!!
この場で息の根を止めてやるぅっ!!」
「ハン・・・! ようやく本性出したな、
どうせそんなこったろうと思ったぜ・・・。
だがなっ・・・、
こっちはさっきっから、ずっと怒りまくってんだよぉっ!!」
もはや二人ともその場を動けない!
カオスは「ならば」と、
そこら辺に落ちている槍やらナイフやら、全ての刃物を一斉にタケルの頭上に集めだした!
「フ・・・フフッフ!
ど、どうだぁ!? これを全部一度に落としてやるっ!
直線的に飛ばすだけなら、全て同時に操作できるぞっ!
こ、これ以上、貴様に手はあるまいっ!!」
「くっ・・・!」
どうする!?
大量の刃物を打ち込まれる前に、
カオスの背中の天叢雲剣を更に深々とめり込ませるか!?
いや、実はさっきっから試みている!
だが、タケルの念動力を上回るエネルギーで、カオスが天叢雲剣を固定しているのだ。
さすがに能力のパワーそのものでは勝ち目がない!
じゃあっ!?
今にも刃の雨はタケルの頭上に降り注ぐ寸前だ・・・!
タケルの力が及ぶものは他に・・・!?
「 う ぉ ぉ ぉ ぉ お お お お っ 」
「はっ・・・!
ハッ、今更どう抵抗しようってんだっ・・・!
全方位型のサイコバリヤーは難易度が高いんだっ!
初心者のお前に全ての攻撃を避けることなんか・・・
あ!? お、お前・・・何を!?」
タケルの選んだ道・・・、
それは常人の思考を超越するものだった・・・。
自分の両手に打ち込まれていた杭を、
絶え間ない激痛の波に襲われながらも、
無理やり筋力と念動力、両方の力で引き抜いてしまったのだ!!
勿論、お互い、激痛や驚愕などに躊躇する暇などもうないっ!
カオスは刃物の雨を!
十字架の枷から外れたタケルは、両手の平から大量の血を床に流しつつ、
殆ど片足で跳ねるようにカオスに飛び掛る!!
そして勝敗を分けた原因・・・。
それは恐怖・・・!
苦痛と怒りの凄まじい形相で襲い掛かったタケルに、
カオスの生存本能が恐怖を覚えた。
その為、彼の念動力に一瞬の怯みが生じたのだ。
だが、タケルにしても何か決定的な攻撃に成功したわけではない。
そのままカオスに覆いかぶさって転がったはいいが、
右膝は使い物にならないし、
両手ともまだ杭が刺さったままで、カオスのカラダを掴みあげることもできないのだ。
「く、くそっ! 離れろ、き、貴様っ!」
タケルを突き飛ばそうと必死にカオスはもがく。
だが、彼のカラダにも天叢雲剣が刺さったままなのだ、
もう肉体にはほとんど抵抗する力は残っていない。
つまり、この「形」になった瞬間、勝敗は決したと言える。
タケルは自らの体重を、カオスに預けるだけで良かったのだ・・・。
「ヒァッ・・・!」
もんどりうったカオスの背中の剣が、地面に引きずられる。
その振動はカオスの内臓に強烈な苦痛を与え、
そのショックで全ての能力が不能となる。
タケルがここで見出した選択は、
その天叢雲剣の柄を・・・。
ガッチリと握り締める必要はない。
もう、昆虫の脚のようにしか動かすこともできないが、
その長い五本の指で、軽くでも握り締めることさえ出来れば・・・。
届いたっ!!
・・・そう、
天叢雲剣の雷撃と、カオスが使っている念動力も、原理は一緒・・・。
ただ天叢雲剣が、使い手の精神力を「雷」の形に変換しているだけ・・・。
だから、タケルは残った精神力を全てこの天叢雲剣に流すだけでよいっ!
さけべ いかづち !!
今回もその電流は、タケル本人を巻き込んで放電するっ!
だが、その最大破壊力は、
真っ先にカオスの体内・・・内臓に注ぎ込まれているのだっ!
これに耐えられる生物など存在しないっ!
アバババッバアバババァハ・・・ッ
カオスの眼球は白く濁り、その口からは内臓を蝕む嫌な匂いが・・・!
タケルも、もはや手加減や力のコントロールなどできる状態ではない。
意識の続く限り能力を発現し続けたっ!
やがて、
激しかった電流のスパークは弱々しくなる・・・。
まだタケルの意識は残りつつも、
もはや天叢雲剣を使えるレベルの精神力も尽きてしまうと・・・、
そのままタケルは冷たい床に倒れこんでしまった・・・。
まだカオスのカラダはピクピク動き続けているが、
もうこのカラダに命は残っていない・・・。
終わった・・・終わったんだ・・・。
もう、
何もできない・・・する気力もない・・・。
このまま新手が現れれば、自分は間違いなくやられるだろう。
せめてあの扉が開くときに現れた者がスサの仲間だったら・・・。
だけど・・・
生き延びたとしても、
もうこのカラダじゃあ、戦えないな・・・。
サルペドン・・・
お前一人で、本当に敵の親玉と戦う気かよ・・・。
大丈夫・・・なの、か?
あ・・・、
扉のほうが騒がしい・・・、
誰かこの部屋を見つけたのか・・・。
オレはここだ・・・よ、
後は・・・ヘルプッ・・・
カオス君の出番はこれで終了です。
なお、彼は「天使シリス編」でも登場します。
しかも、かなり早い段階からで、
それこそ、斐山優一君の身体計測エピソードの少し後ぐらいから出てきます。
そして次回、彼の出自判明、
「黒十字の四人」です。