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緒沢タケル編15 混沌たるカオス ゼウスの憂鬱とモイラの災難

あれ?

章タイトルが・・・



冥界の王ハデスを撃破し、勢いに乗るスサの一団、

敵軍のナンバー2を打ち破って、後は最終目的地までは次の町をクリアすればいいだけである。

これまで様々な障害や困難が立ちはだかったが、どうにかこうにかここまで来れた。

これより先に待ち受ける、オリオン神群ゼウスの力は強大だというが、

サルペドンと・・・そして更なる成長を遂げたタケルとなら、

恐らく勝てるのではないか?

そんな願望が彼らの心中に広がっていたのである。

勿論、タケルも楽観的とまではいかないが、

ある種の高揚感に包まれている。


次の町・・・光の女神アグレイアの治める町では、争いごとは起きなさそうだ。

これまでの疲れや怪我も回復させることができれば万々歳だ。


 「それでよー? サルペドン?

 その・・・アグレイアって人はあんたより年上なのか?

 婆さんなのか?」


 「ふむ、礼儀正しくしてくれよ?

 100年前の戦いでは、オリオン神群同士の諍いでもあったし、

 どちらにも付かずに中立を保っていた。

 だが、今度は私たちは、あくまで外来者・・・異邦人なのだ。

 争いごとを好まないのは変わってないはずだが、

 デメテルのように我らを歓待してくれるとは限らん。

 あまりはしゃぐなよ?

 にべもなく追い払われる可能性ぐらいはある。」


 「まぁ・・・そりゃそうだろうな・・・。」

それでも十分だ。

一行は街道沿いに進み、近隣の住人や商人たちに奇異の目で見られながらも、

何事もなくアグレイアの町を目指していた。

時刻は昼前のはずだったが、

・・・ふとミィナが頭上の違和感に気づいていた。

 「・・・あれ?」


今日のお供にはインド出身のクリシュナが控えている。

 「どうしました、ミィナさん?」


 「ん? ああ、気のせいかもしれないけどさ?

 ・・・今、昼前だろ?

 上の太陽、やけに薄暗くねーか?」


 「おや・・・?

 そう言えばそうですな?

 霧や雲がかかってるようにも見えませんし・・・。」


 

さてさて、

こちらは王都ピュロスのゼウス神殿。

少年神ヘルメスの報告を受けたゼウスの機嫌は、周りの者全ての神経を過敏にさせていた。

自らの右腕たるハデスを破られて、

確実に自分が腰をあげねばならない状況にイラついていたのである。


今回、その鬱憤の発散相手には、

一人の女神が犠牲になる・・・。


 「未来を見通すモイラよ・・・!」


盲目の三姉妹の長姉、ライトグレーの長い髪を振り乱しながらゼウスの言葉にビクビクしている。

 「ハ、ハハッ・・・!?」


 「以前、そなたは予言しておったな?

 地上からやってきたアトランティスの子孫とやらは、

 一人を除いて死に絶えると・・・。」


 「は・・・はい、確かに・・・。」

 「だが、ハデスが倒れ、

 報告では未だ30人近くの生き残りがこちらに向かっているというではないか?

 慈悲深い私は、何も彼らを皆殺しにしようなどとは考えていなかった。

 奴隷にでもして、飼いならしておけばいいと思っていたのだよ?

 まぁ、ポセイドンには然るべき刑が必要だが・・・な。」


 話の展開は容易に想像がつくも、長姉のモイラは頷くことしかできることはない。 

 「は、ハイ・・・。」

 「ハイではないだろう?

 どういうことだ?

 私が自ら彼らを処刑せよとでも言うことか?

 それとも、そなたの予言は私へのご機嫌取りだったのか?」


哀れなモイラ・・・。

彼女は自分が見たことをそのまま伝えていただけなのに・・・。

しかし、身分の低い盲目の女神といえど、

彼女も必死に自分の正確さをアピールする。

自分たちの存在意義を揺らがせてはならない。

 「お、恐れ多くも我らが主、ゼウスよ、

 お言葉ですが、私めの視たもの・・・

 それにいささかも変化はありません、

 いま、この時にあっても、私に視えるもの、

 それは、アトランティスにあって、たった一人の生き残りだけなのです・・・!」


この期に及んでまだ言い張るか?

考えてみれば、スサが死の神タナトスとぶつかった時も、

「嘆きの荒野」で起きた、強力な思念波動をモイラ達は浴びせられてしまっている。

では、それ以来、

彼女たちの感知精度に狂いが生じているとでもいうのだろうか?


その事をゼウスが指摘すると、

モイラは自らのプライドを賭けて、自分の能力の正確さを主張する。

 「おっ、恐れながらゼウス様、

 私は視た物をありのままに述べただけ・・・。

 冥界の王ハデス様にいたしましても、

 私めは『大怪我をなさる』と申しましたではないですか?

 勝負の勝ち負けは私の目では捉えていなかったのです。

 そして現に、ハデス様はご存命・・・」


そこでゼウスは語気を強める。

 「それだ!」


 「はっ!? ・・・ヒッ!?」

 

 「モイラよ、

 そなたは先の予言で勝ち負けについては何も言わなかったな?

 互いの生死や負傷のことだけだ。

 何故だ?

 何か思うことがあって情報を私に伝えなかったのか!?」


 「そ、そそ、そんな!

 滅相もございません・・・!

 ですが、わ、私めに視える部分は限定されたものなのですっ、

 知りたい部分全てが視える訳でも・・・。」


 「フン、ならば先のハデスの戦いで、

 奴が敗れるシーンは視えなかったと言うのだな?」


 「は、はい・・・その通りなのです。」

 「では・・・。」

ゼウスは立ち上がる。

業を煮やしたのかもしれない・・・。

 「私とポセイドンの勝負は・・・?」


モイラは即答できない。

別に隠し事をするまでもなく、本当にわからないのだ。

静かな時間が過ぎる・・・。


心に動揺を抱えたままでは予知はできない。

その辺はゼウスも理解しているので、

彼もモイラの心が静まるのを待っていた・・・。


やがて、

モイラの予知能力のスキャンは終わったようだ・・・。

しかしやはり彼女は首を横に振り、

申し訳なさそうにゼウスに向かって頭を下げた。

 「・・・何度予知してみても視える物は一緒でございます・・・。

 ゼウス様も大怪我を負うことになります。

 そしてそのしばらく後に、

 怪我が完治された状態で、ゼウス様、ハデス様・・・その他大勢の軍勢で、

 地上に降り立つ姿が私には見えるのです。

 私めの予知が外れることは考えにくいのですが・・・。」


しばしゼウスは自らの顎に手を当て、考え込み始める。

目の見えないモイラには、そんなことは判らず彼の思考を一時、中断させた。

 「あ、そ、そう言えば・・・!」

 「・・・どうした?」

 「地上に降り立つ軍勢の中に、一人、私めの知らない者がおりました。」


 「ポセイドンか?」

 「い、いえ・・・白い髭を垂らした老人です・・・。

 気味の悪いことに、その真っ白の瞳を隠そうともせずに・・・」


そんな人物など一人しかいない。

すぐにゼウスはその老人が誰か思いついた。

 「老神官ネレウスか・・・、

 何故、奴までもが我らと共に地上に行く必要がある?」

 「も、申し訳ありません、理由までは・・・。」


埒が開かないせいか、ゼウスは再び無造作に腰を落とす。

いったい、どういうことなのか?

考えても考えても答えなど出ない。

そして彼は、モイラに語るつもりはなかったのだろう、

一人、つぶやくように口を開いた・・・。

 「ネレウス・・・、

 100年前、あのオリオン神群を二つに割った戦い・・・。

 奴はポセイドンの神官でありながら、

 事もあろうに、ポセイドンの裏切りを私に密告してきた。

 そしてその見返りとして、自らの信仰の存続を認めることだけを要求した・・・。

 いったい、あの老人の本当の目的は何なのだ・・・?」


これ以上はモイラを詰問しても仕方ないのだろう、

ゼウスは現状認識を先に行うべきと判断する。

 「では、『現在を視るモイラ』よ、

 今、アトランティスの末裔どもはどこにいる?

 そろそろアグレイアの町に辿り着いたころか?」


それまで姉の陰で緊張していた二人目のモイラの出番である。

いきなり自分を指名されて、慌ててスサの一団の動きを確認し始める・・・。

 「恐れながらゼウス様、

 まだ彼らはアグレイア様の町には着いておりません・・・。

 ただ、このままでは時間の問題ですね・・・。

 正午を回るころには辿り着くことでしょう。」


 「そうか、あの温厚な老婆のことだ、

 これまでの奴らの行動パターンから見ても、

 一晩ほど宿泊したら、このピュロスに向かうは必定・・・。

 私も舞台を整えねばなるまい・・・な。」


その時である。

ゼウスの応答に反応したのではなさそうだが、

この「現在を視るモイラ」の様子が少しおかしい・・・。


 「・・・?

 どうした、モイラよ、

 何か違和感を感じ取ったのか?」


 「は・・・はい、あ、あの・・・、

 視えなくなりました・・・。」

 

 

さしものゼウスも呆気に取られる。

 「何を言っている? お前まで・・・。

 こないだのタナトスの戦いを視ようとしてから、調子が戻っていないのではないか?」

 「い、いえ、申し訳ありませんが、そのような事ではありません・・・。

 光の女神アグレイア様のおわす神殿一帯が、

 私の感知能力で見通すことが出来なくなってしまったのです・・・!

 他は正常です、

 まるで、あの町の一部だけに結界でも張られてしまったとしか考えられませんっ・・・!」


今度は何が起きている?

ポセイドンとの戦いには絶対の自信を持つゼウスだったが、

ここに来て数々の謎や奇妙な報告を幾つも受けるに至り、

妙な胸騒ぎを起こし始めた・・・。


 「いったい・・・

 何が起ころうとしているのだ・・・。」


 




今回キリが悪いので長めにしました。


さて、この物語に登場する予知能力者は何人かいますが、

その効能と能力の解釈については、同一ではありません。

キャラごとに自分の能力ついて自分なりの見識を持っていますが、

別に派閥や交流があるわけでもないので、法則のようなものはありません。


それと老人ネレウスに関してですが、

彼が実はラスボスだったとか、敵側だったとか、ドンデン返し的なものはありません。


彼が自ら言うように、

あくまでも彼はポセーダーオンの一信奉者の立場を超えることはありません。


強いて言えば、

まだ全てを語っていない、

ということでしょうかね。


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VRoid版メリーさん幻夢バージョン
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