緒沢タケル編14 冥府の王ハデス 口上
黒犬の名前をケルベロスにしなかったのは少し訳ありです。
オルトロスに関してはあまり知識がありませんでしたが、
ケルベロスに関しては、
犬でも三つ首の化け物でもないというのが、私の認識です。
では何者かというところで・・・
いずれ地上に戻ってから、似たような名前でタケルの前に現れるかもしれません・・・。
うりぃ
「さるでもきじでもないで?」
ニコラ爺さん
「狐でも熊でもカラスでもないのう。」
麻衣
「蛇でもないニョロ。」
ヒントはスサノヲにもポセイドンにも関係深い動物です。
そしてケルベロスの名前の方なんですが、
ケル・・・シャル・・・カル・・・
ここら辺を並べると正体が見えるのではないかと、
あ、「しゃれ◯◯べ」は・・・は、「晒す」から来た別の語源という説が強いんでしたっけ。
・・・ん?
麻衣ちゃん?
なんか言葉遣いが・・・あれ?
タケルの脅しにクラトスは大声で笑い始める。
「フッ? ふ、フハハハッハハ!!
地上の者は冗談も言えるのか、
まぁ、良い、
小僧、お前がこの一団の首謀者か?
それともポセイドンがお前の主なのか!?」
一瞬、言いよどむタケルの背後から、サルペドンが歩き始める。
「ここにいる緒沢タケルがスサの主だ・・・!
だが、このポセイドンに用があるというなら私が聞こう!」
ついにサルペドンが、堂々と己の正体をオリオン神群に明かす形となった。
スサの行く手を阻む者は残り僅かな筈だが、
この先、どんな展開が待つのだろう・・・。
さて、クラトスとビアは、
初めてポセイドンに相対すのか、
ここで態度に変化が現れた。
・・・まぁ、ビアは斜に構えた体勢で押し黙ってしまうが、
代わりにクラトスが雄弁に振舞う。
「これはこれは・・・、
本来、位からは我等など、あなた様には跪かなくてはならぬ身でございますが、
既にあなたはオリオン神群たる地位を剥奪されている身、
申し訳ありませんが、
この対等なる位置で語らせてもらいますぞ?」
言葉遣いはそれでも丁寧な気がするが、
その身振りや表情は尊大以外の何者でもない。
それは目下のものに向ける視線である。
もっとも、そんな些細なことなど、サルペドンは何も気にしていない。
「余計な気遣いは要らぬ、
それでクラトスよ、
お前やビアの力で私の前に立つつもりか?
このポセイドンと並び立てるのは、お前たちの主人ゼウスだけだと理解していないというのか?」
今まで裏方にいたサルペドンの強硬なる言葉に、タケルは感心すると同時に頼もしさを覚える。
今まで自分ひとりが、戦闘面の最前線にいたのだ。
どれだけサルペドンの参戦を心強く思えるだろう。
さて、
クラトスは軽く頭を下げる。
まるでサルペドンの主張はもっともだとでも言うようだ。
「いかにも・・・。
我等とて、ポセイドン様に敵うなどと大それたことは思っておりませぬ・・・。
ですが、
あなたもこの状況では、我々に攻撃できないのではないですか?」
そう、ポセイドンの大地を揺する攻撃は、仲間のいる場所では使えない。
大量の犠牲者を出す危険のある地域では一切使えない能力なのだ。
だが勿論、そんな事は当の本人が理解している。
「それで?
私が能力を封じられていると思うのなら、
お前たち二人で、私とその仲間たちと真っ向から戦うとでもいうのか?」
「ふふふ、ポセイドン様、
そう慌てるものではございません・・・。
見てください、
このメタパの門の中は、
狭い道や、曲がりくねった道、起伏の激しい土地、
いずれも戦いに向いた町ではありません。
無理に戦闘を始めたら、多くの町民や建物に被害が及ぶでしょう。
そこで、
場所を変えたく思うのです。
地理に疎いあなた方には、却って都合がいいはずですよ?
それに我々を倒しさえすれば、
次の光の女神アグレイア様の町まで一直線だ。」
「どこで戦おうというのだ?」
「ああ、あなた方にも見える場所ですよ?
この門をくぐらず、あなた方から見て左側に傾斜の激しい岩場がございますな?
そこで、このクラトスと、隣に控えるビアがお相手しましょう。
そしてもし、私たちが敗れたならば、
この岩場の先で、
メタパの主、ハデス様があなた達を歓待するでしょう。」
なるほど、
街の外には、馬車ではけっして登れないような、ゴツゴツとした岩場がある。
石灰岩の成分が溶け出している白い渓流のすぐ傍だ。
この傾斜を登りきるだけでもかなりの体力を使いそうだが、
逆に街中と違って、罠などを設置されていることもなさそうだ。
ならばクラトスの申し出を断る理由もない。
「了解した。
この上にハデスも待っているのだな?
ならば、一気に勝負を決してくれる。」
「おっと、ポセイドン様、もう一つ。」
「まだ何かあるのか?」
「ハデス様はあなたと戦う意思はありません。
これはゼウス様も同意の上です。
あなたを討つのは、ゼウス様直々にと考えていらっしゃるのでしょう。
・・・あなたも、無闇やたらと能力を使おうなどとは思ってはおりますまい?」
「それは状況次第だ、
失うものが何もなくなれば、この力を使うのに何の躊躇いも無くなるだろう。」
「おお、それは恐ろしい・・・。
よろしいでしょう、
我々は、ポセイドン様がピュロスの都にやってくる前に、
それ以外の蝿たちを駆除せよ、と言われているだけです。
私たちが戦うのは『地上の者たち』だけ・・・。
そこの所もご了解いただけますな?」
「クラトスよ、お前の主張は理解した。
ではタケル・・・。」
ようやくタケルの出番だ。
さっきっから、会話に参加できなくてうずうずしていたのだ。
「おう! 俺が相手するぜ!
さっさと場所を案内しろ!」
と、強気のタケルだが、
この後、日本語で、
クラトスたちにばれないように小声でサルペドンに話しかけた。
「ヒソヒソ) サルペドン、それでこいつらの能力は?」
「・・・臆するな、
他のオリオン神群に比べればゴミのような能力だ。
気をしっかり持っていれば、脅威など何もない。」
次回はビアとミィナの絡みです。