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緒沢タケル編14 冥府の王ハデス 成長していた者


もう、サルペドンはスサの全員の顔も見ることができなかった。

顔をうつむいたまま、またもや、

 「すまん・・・。」

そういって、背中を向けたのである・・・。


 これでいいんだ・・・。

 あとは一人でやるべきなのだ。

 本来なら100年前に命を失っていたはずなんだ・・・。

 ここまでチャンスが与えられただけでも・・・。

 後ろからマリアの自分を呼ぶ声が聞こえるが、

 もう・・・。


 「ふざけんなっ! ってんだろが!!」

またもや、タケルの怒鳴り声がサルペドンの耳に飛び込んでくる。

まだ、何か・・・、と思い後ろを振り返ると、

タケルの表情に変化がある。

 「サルペドン、てめぇ、さっきオレは何つったよ?」

 

そうは言われても、何のことだかサルペドンは思い起こせない。

片目をパチクリしているサルペドンに、さらに馬鹿にしたようなタケルの一言。

 「オレは『仲間を信用できないのか?』って言ってるんだけどよ・・・。」


タケルの言葉の意味が今ひとつ掴めない。

 仲間?

 信用・・・?


そしてタケルの真意を理解したマリアは明るい笑顔を取り戻した・・・。

 「サルペドン!

 私は言ったじゃないですか!

 何でもかんでも一人で背負い込むのがあなたの悪い癖だって!

 何故、自分一人で答えを出そうとするのですか!?

 みんなで・・・苦しみも悩みも、喜びも分かち合うのが仲間でしょ!?

 それを叶えようともしないで、何が大地の支配者ですか!?

 これじゃ、あなたはただのはぐれ者でしょう!」

 

いきなりの雲行きの変化に・・・、

想像もできなかったサルペドンは、次の言葉が見つからず、立ち尽くすしかできない。

そこへタケルの追い討ちが・・・。

 「聞ーてんのか、サルペドン?

 お前は俺たちを信用できないのか、できるのか?

 さっさと答えやがれっ!」


タケル・・・


 「タケル・・・、私は・・・

 お前たちを 頼っていいのか・・・、

 私は一人じゃない・・・

 そう、思っても・・・許されるのか・・・。」

 「・・・へっ、知らねーよ、

 俺らの目的はオリオン神群を止めることだろ?

 お前の復讐なんて知ったこっちゃないっ、

 だからな、

 その目的が一致する限り、俺たちは仲間だ、

 そりゃ、あんたを許せない奴もいるだろうけど・・・、

 そこはサルペドン、おまえ自身でこれからもとことん悩みやがれ!


 一人で考えるのが好きなら一人で考えろ!

 だがな、

 オレが緒沢家の現総代だってんなら、この話はこれで終わりだ!!

 好き勝手抜かして、スサから『逃げ出そう』としたってオレが許さねぇっ!」

 

あっという間にその場の空気が晴れてゆく。

唯一、身の置き所がなかった酒田さんへの配慮もタケルは忘れない。

 「・・・酒田さん、戦いが終わったら、みっちりサルペドンの奴を責めようぜ、

 でも今は、これで・・・いいかい?」


もう、ここまで突っ切られたら、酒田に反論するすべはない。

 「あ、お、オレは・・・

 って、いいのか、タケル?

 少なくとも、ここにいる中じゃ、

 お前が一番カラダ張ってるのに・・・」

 「・・・いい、

 なんとなくサルペドンの気持ちはわかる・・・。」

 「え?」


一方、サルペドンは力が抜けてその場にしゃがみこんでしまった。

そして彼の脳裏には、一人の若き女性の姿が蘇える・・・。

 ・・・まさしく美香だ・・・。

タケルの説教が、美香のそれとダブってサルペドンの目に映った。

勿論、口調や言葉の使い方は全く違う。

 いつの間にか・・・、

 タケルは戦闘以外でもこんなに成長して・・・。

 もう・・・完全にスサの総代としての資格を身につけたんだな・・・。


そしてサルペドンは改めて思う。

 ここから「逃げ出そうとしたって?」

 そうだ、

 自分はまた逃げ出すところだったのだ。

 100年以上前から、何も自分は変わっていない、

 成長していないのは自分だった。

 変わったのは・・・

 新しい仲間を手に入れた事なのだろうか。

 

 

 「うわっ!?」

そこまで考えていたところに、後ろからミィナが膝蹴りかましてきた。

 「ほらぁ、らしくないよ?

 あんたはいつも偉そうにすかしてなよ、

 じゃないと、こいつら、まとまんないだろ?」


もう、口をあんぐり開けるしかないが、

もうそろそろ自分を取り戻すころだ。

サルペドンは苦笑を浮かべて、再びサングラスを顔にかけた。

 「ふっ、・・・しょうがない奴らだ・・・。」

そこでミィナもニヒッとお決まりの笑顔だ。

 「うん、そのほうがアンタらしいよ!」


どうやら完全にもとの空気を取り戻したようだ。

いや、むしろこれで隠し事がなくなったスサは、更なる団結力を発揮するのでは?

離れて見守っていたヘルメスは、

あまりにも彼にとってつまらない展開にイラつきを覚える。

 (・・・いい気になってんじゃ・・・ねーぞぉ?)

 


オリオン神群ヘルメスの能力は瞬間移動・・・。

彼は・・・スサの誰にも悟られぬように、

微動だにしない体勢のままその場所から消え、

そしてまた、誰の目にも触れないうちに、

その姿を、タケルの背後に出現させたのだ・・・!


 食らえっ!


周りの者がヘルメスの出現に気づいたときには、

既にヘルメスは持っていた杖を振りかざしていた。

その杖、カドケウスの先端でタケルの肝臓付近に狙いを定め・・・

 「いやぁっ!!」


だが、そのヘルメスの行為は虚しく空を切る。

 「あ、あれっ!?」

ヘルメスの視界からタケルが消えていた!

それでも反射的にヘルメスは、自らの身の危険を最大限に自覚する。

 

 や、やべっ・・・


どうやって背後を取ったのか、

ヘルメスの目にも留まらぬ動きで、彼の背中に回りこんでいたタケルは、

遠慮なく、天叢雲剣を引き抜いていた・・・!

 「ずいぶん、やりたい放題、引っ掻き回してくれたな・・・。」


辛うじて首をひねることに成功したヘルメスは、

タケルの洒落にならなそうな憤怒の表情と、

青白く閃光を放ち始めた天叢雲剣に恐怖する!

 「あ、あ、あ、い、いやね?

 こ、っこっこれ、ハデス様の指令でさ、

 あっ、あっ、じゃ、じゃあオレ用事思いだしちゃった・・・!

 じゃ、じゃなっ!?」


バヒュンッ!





もうそろそろタケル無双状態。

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