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緒沢タケル編14 冥府の王ハデス 懺悔


その歩みに迷いは見られない・・・。

どちらかというと、いままで優柔不断だった気の多かったタケルが、

確固たる決断を以って、サルペドンに近寄ったのである。


 グィ!

いまだサルペドンの傍にいた酒田を無造作に押しのけ、

その右手に力を込めて・・・。

サルペドンは真剣な表情のタケルを前に、辛うじて口を開く。

だが、このパターンは・・・


 「タケ・・・っぐはぁっ!?」

タケルの容赦ない拳がサルペドンの横っ面に叩き込まれたっ!

身長180センチを越すサルペドンのカラダが吹っ飛ぶ!

あまりの問答無用の暴挙に、マリアは勿論、

さっきまで怒りまくっていた酒田さんすらタケルを抑えにかかる。

・・・もう手遅れだ。

 

それでもサルペドンは抵抗するそぶりも見せない。

タケルの殺人的な拳を食らって、口の中や鼻から大量の血が溢れてくるが、

これも自業自得だと割り切っている。

確かに酒田の言うとおり、自らの力を出し惜しみなく使えば、

死なない命もあったかもしれない。

だが、それ以上の多くの命が失うことへの恐れと天秤にかけてしまうなら・・・。

いや、・・・所詮言い訳だ・・・。

もう、スサの仲間・・・仲間なんておこがましいか、

これまで、共に生きてきた連中の下を去るときが来たのかもしれない、

ここまでオリオン神群の内部にまで入り込めたのだ。

あとはたった一人でも、ゼウスのところまで・・・。


タケルの次の鉄拳を待つまでの間、

サルペドンはそんな思考を続けていた。

だが、そのまま、

どれだけ待ってもタケルは追撃しないばかりか、

何の抗議の声もあげない。

不審に思ったサルペドンがタケルを見上げると、

ようやくタケルは、うずくまってるサルペドンの元に、再び歩み寄ったのだ。

カラダにしがみつくマリアや酒田さんなんか、まるで意に介することなく・・・。

 

 

 「立てよ、サルペドン・・・!」

意識ははっきりしていたが、いざとなると足下がふらついてる。

 そういえば、既に最強の戦士となりつつあるタケルの攻撃を、直に食らうのは初めてだな・・・。

 まぁ、

 もしかしたら、これで無意識のうちにセーブしているのかもしれないが・・・。

ようやく、血だらけの顔でタケルの目を見返すと、

それを待ってたように、タケルも先の酒田同様、サルペドンの胸元を掴んだ。

だが・・・。

 「勘違いするなよ、サルペドン!」

 「・・・?」

 「酒田さんの言い分はもっともだ、

 何ら否定するつもりもない。

 けどな・・・!

 俺が怒っているのは・・・、

 なんで・・・!

 なんでこの事をみんなに打ち明けなかったんだ!!

 そんなに・・・共に命を預けあってる皆を信用できなかったのか!?

 どうなんだ・・・どうなんだよ!

 サルペドン!?」

 

その言葉はサルペドンの胸に深く突き刺さった。

別に初めて言われた言葉でもない・・・。

以前にもマリアに指摘されたことはある。

だが、物静かなマリアの言葉と、激情に駆られたタケルの言葉の重みの差に、

改めて、その意味の深さを思い知ったのだ・・・。



 「・・・すまん・・・。」


それだけの言葉を返すのに、どれだけの時間を要したのか?

そして、そのサルペドンの辛そうな表情を確かめて、ようやくタケルは手を放した。

 「一つだけ確認するぞ、サルペドン!」

 「ああ、・・・なんだ?」

 「お前の目的は、・・・何だ?

 オリオン神群に・・・ゼウスに復讐するのが目的なのか!?」

 

一度、サルペドンは口を拭った・・・。

辺りを見回して・・・そして自分の本当の目的を、声に出す前に自問する。


 オレは・・・。


 「タケル、みんな・・・。

 私はずっと、罪の意識に苛まされてきた。

 自らの信念は、100年前より今に至るまで、決して揺らいでいるつもりはない・・・、

 だが、その信念を貫いたために、大勢の人間を不幸に追いやった・・・。

 先代のヘファイストスは、私の為に命を失ったようなものだ。

 そして今また、ゼウスは我らの味方ですらないはずのヘファイストスを苛まそうとしている。

 ・・・その怒りはこの大地を引き裂いてしまいかねないほど、

 私の心の暗い部分で渦を巻いている・・・。

 だが!

 私が最も許せないのは、この世界から、

 過去から逃げ出した自分だ!

 本来なら、地上に住んでいるお前たちを巻き込む道理などなかった筈なのに!

 私一人でケリをつけるべきなのに!

 現実にどうすることもできない自分がいる!」

 


これは懺悔か、

サルペドンの罪の告白とも言えるだろう。

 「タケルよ、スサの皆よ!

 ・・・お前たちの力を利用しなければ、私は何もできない・・・!

 復讐?

 そうかもな、その気持ちがないとは言わない。

 だが、私の一番の目的は・・・

 ふふ・・・そうだな、

 矛盾だらけかも知れん、

 自分の使命を・・・大地を治める神の名を冠したポセイドンの宿命に殉じる事、

 お前たちを利用しても!

 どんな手段を使ってでも、あるべき自分の姿を取り戻そうとしていたのだろう・・・。」


喋っているうちに、サルペドンは自分の馬鹿さ加減を否応もなく自覚する。

 何が大地の神だ!?

 他人を巻き込みたくないと言っておいて、

 自分が無力だと分かれば、他人を利用する?

 そんな馬鹿げた理屈を誰が納得しよう?

 殴りつけられて、

 ・・・軽蔑されて・・・排除される・・・。

 当たり前だろうに・・・。

 



さて、どうなることやら。

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