表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
580/676

緒沢タケル編14 冥府の王ハデス 真相

ぶっくま、ありがとうございます!


誤字訂正しました。


酒田の拳は、

胸元というよりも、サルペドンの喉や顎先をぐいぐい圧迫する。

それなりの痛みもサルペドンは感じるはずだ。

だが、彼は何も言わない・・・。

ただ黙って、酒田の追及を甘んじて受ける。


 「やめてくださいっ!」

酒田の行動を制止しようとするのはマリアだ。

そう・・・彼女は最初から知っていた・・・。

 「何故、止めるっ!?

 こいつは俺たちを・・・!」

 「酒田さん、責めるなら私も・・・!

 この事は、タケルさんや美香様のお父様である先代と、

 この私だけ知らされていたことなのです!」


そこでようやく酒田の手が緩んだ・・・。

 「なんだとっ!?

 アンタも知っていたって言うのか!

 何故だっ、何故、俺たちスサの幹部にも黙っていたんだっ!?」

 

騒然となるスサの一団を傍から面白そうに眺めるヘルメス。

勿論、先ほど彼が言ったように、

ポセイドンと共に、他の神々が叛旗を翻すなら、それはゼウス達にとって脅威である。

しかし実際のところ、そうはさせないし、

そうならないことも十分わかってのヘルメスの言葉である。

オリオン神群がその力を使えば使うほど、この世界に重大な被害が発生する。

極力、その力は限定的に使うべきなのだ。

それはサルペドンもゼウスも分かっている。

単純に・・・

いや、ここは狡猾に、というべきなのだろう。

スサ内部をガタガタにするためにヘルメスはやってきたのだ。

ポセイドンが、他者を巻き込みたくないと考えているのは100年以上前から分かっている。

ポセイドンの目的を知りたいなんてのは、ただの口実なのだ。

 


無言のサルペドンに代わって、マリアは必死に事情を話す。

 「酒田さんの仰ることは良くわかります。

 ・・・ですが、

 ポセイドンの大地を揺する力は、何の関係も無い民間人をも巻き込んでしまうのです!

 それに・・・力を多用すれば、必ずこの地下世界のオリオン神群が、

 ポセイドンの存命を気づいてしまう。

 オリオン神群を刺激してしまえば、

 せっかく沈静化していた、地上の人間を滅ぼすと言う計画が、再び決断されかねない・・・。

 そして何よりも、

 こんな力を持っていることが周りに知られてしまえば、

 スサ内部に大いなる混乱が生じることが目に見えています。

 『スサの正当なる後継者である緒沢家は、その座にふさわしくない、

 ・・・ポセイドンに継がせるべきだ』という声すら、あがってくるかもしれません。

 緒沢家に大恩あるサルペドンは、

 何よりもそれを恐れて、自らを黒子に徹してきたのです。

 そして・・・、

 もう隠す必要もありません・・・。

 私も・・・。」

 

そこで初めてサルペドンは動揺を見せた。

 「やめろ、マリア!」

 「いいえ、ここまで来たら全てを明かすときです。

 この私も、スサとは一切、無関係の女性なのです。

 私の先祖は、ヨーロッパの片田舎で神秘主義の研究に明け暮れた一領主の氏族に過ぎないだけ・・・。

 その一族の知識と、サルペドンとスサの関係を補佐するために、

 タケルさんのおじい様の要請でスサに派遣されてきたのです・・・!」


周りの者は口が利けなくなっていた・・・。

辛うじて酒田が絞るような声で、マリアの話す真実を確かめようとする。

 「そんな・・・だったら、アンタは・・・」

マリアは酒田の言葉の先を察し、自らその言葉を遮った。

 「私は生れ落ちた時、既にスサに派遣されることが決まっていたのです・・・。」


理屈では酒田も納得できたのかもしれない・・・、

だが、内なる感情がそれを拒否しているだけだ。

だが、拳の振り下ろす先が無い彼は、

掴んでいたサルペドンの胸元を放すのがやっと・・・。

 

今までのサルペドンの姿を知る者からは想像も出来ないだろう。

彼は、眉間に深い皺を浮き上がらせ、

その顔も見えなくなるくらい頭を低くした・・・。

 「みんな・・・酒田・・・

 すまない・・・。」


やがて、この場でサルペドンを除いて最も高齢で、最も思慮深いクリシュナが静かに口を開く。

 「では、かつてスサが結成されたとき、

 アトランティス伝説と緒沢家にまつわる縁起が結び付けられたとき、

 その立役者になったと言う話は・・・?」

 「その話を作ったのも私だよ・・・、

 第二次世界大戦や、中東戦争のごたごたの時に、私は一時、スサから離れた。

 そしてそれぞれ、父親から息子に代替わりしたように見せかけて、

 スサに舞い戻ったのだ・・・。」

 「ではマリア殿の家系と、緒沢家、またはサルペドン様の接点は・・・?」

 

そこで再びマリアが事情を話す。

 「全てを話すと、また長くなるのですが、

 要点だけかいつまんで言えば、

 私の家は、世に隠れて神秘主義を実践する傍らで、

 ある狂信的なカルト集団に目をつけられていました。

 ・・・ノーフェイスと言う、今はなき団体ですが、

 私たちの家を窮地から救ってくれたのが、クネヒト・ルプレヒトと言う人物と先々代の緒沢家党首、

 その時から、私たちの一族は緒沢家に協力を惜しまないと誓ったのです・・・。」


マリアがわざわざ、自分の身を省みず真実を語ったのは、

サルペドンをかばってのことである。

その事によって、スサはさらなる不信に包まれる危険もある。

だが、ここで膿を出し切ってしまえるなら、

それはこれからの余計な心配事を排除できるかもしれない・・・、

そう考えての彼女の賭けである。


そして・・・ようやく、スサ現当主・・・、

緒沢タケルがサルペドンに対し行動を起こした・・・!

 




クネヒト・ルプレヒト暗躍中です。

ただ、これ以上ストーリーには影響を与えません。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRoid版メリーさん幻夢バージョン
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ