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第13話

 

青木ヶ原樹海・・・。

空気は冷たいが、風がないおかげか凍えるほどではない。

マーゴ達は、

相模原市内のショッピングセンターで、

既にアウトドア用の衣服に着替えていた。

ライラック、ガラハッド、義純の三人は、

サバイバル用の大きな荷物を担ぐ。

中にはどんなものが入っているのだろうか・・・?


・・・広大な樹海を前にして、

伊藤はレッスルに話しかける。

 「こっからはどうするんです?

 ・・・やっぱり麻衣に・・・?」

 「いや、お嬢ちゃんに道筋が見えたとしても、

 それはメリーの通った道を透視するだけかもしれん。

 彼女の通った道が、

 我々に歩ける道とは限らんからのお、

 ・・・次はわしの番じゃな、

 もちろん、ここで見たものは内緒にしてくれよ?」


老人は彼らの元から離れ、

一面に広がる暗い樹海に向かって高々と杖を振り上げた・・・。

そして周りの者には意味の分らない、

呪文のようなものを大きな声で詠唱し始めたのだ。

  

すると、どうだろう?

樹海のあちこちから、

一斉にカラスの鳴き声があがり始めた。

そのうち一羽の大きなカラスが、

バサバサという羽ばたきと共に彼らのそばまでやってくる。

 「おー、よしよし、うまくいきそうじゃな?

 可愛いカラス達よ、

 赤い魔法使いめが、

 この林のどこかの洞窟に出入りしてるはずじゃ。

 そこまでの道を教えてくれんかね?」

そう言うと、

カラスは一鳴きしてすぐにそこを飛び去った。 

 グワァ!


すぐにカラスの大合唱が始まる。

まるでみんなで大激論を交わしているようだ?

人間たち一同、驚きで声も出ない・・・。

麻衣だけが楽しそうに喜んでいる。

しばらくするとカラス達は静かになり、

先程の大きいカラスだけが戻ってきた。

 「見つかったか!?

 よし、それでは案内してもらうとするかの?

 おまえさん方、出発じゃ、

 カラス達の鳴き声のするほうに歩き始めてくれ!」

マーゴも大興奮!

 「すっごーい! さぁっすが大魔法使いぃぃ!」

 「なぁーに、こいつらは頭が利口じゃからの、

 しかもこの国にはたくさんおるようじゃ・・・、

 わしらの風が吹いておるぞい。」

 

一定の方角から、

本当にカラスの鳴き声がする。

その声は、樹海の彼らが歩ける道に沿ったものではなかったが、

戸惑いながらも、

義純たちは確実に目的の洞窟の入り口にまで近づいているようだ。

そうこうしているうちに、

いよいよカラスの声が頭上に聞こえるようになっていた。

ゴール間近だということか。

しかし、見たところ鍾乳洞の入り口らしきところはない。


 「ここ!」 

麻衣が指差したのは、

切り立った岩場の、足元の草が生い茂った場所だった。

茂みを掻き分けると、

一メートルほどの、

確かに奥が見えない洞穴がある。

 「いよいよ、奴の居城じゃな・・・。」

慎重なガラハッドがレッスルに問う。

 「・・・相手も魔法使いなんですよね? 

 何かしらの仕掛けや罠があるんでしょうか・・・?」

 「・・・そう考えておくべきじゃろうな・・・。」

 


入り口に入ると、

奥のほうはそれなりの高さを持っている事が分る・・・。

一番身長のあるライラックも、

もう、かがむ必要はないようだ。

広い道筋に出ると、

冷たそうな水がチョロチョロ足元に流れている。

足音が響く・・・、どのぐらいの奥行きなのだろうか?

 「ここから先は、

 またお嬢ちゃんに任せるしかないの。

 カラスはここまでは入らんからのう・・・。」


彼らの周りでは、

時折こうもりが飛び交っているようだ・・・。

羽音と、チチチという泣き声がかすかに聞こえる。

そしてそのうちの何匹かは、

彼らの主人の下へ飛んでいった。

彼らの聖域へ侵入した者がいると告げるために・・・。





  

先頭は義純が任されていた。

続いて伊藤親子、

ガラハッド、レッスル、マーゴ、

そして殿をライラックが務める。

今のところ、

義純にも危険なものは見出せない・・・。

鍾乳洞は、

時折、道のような道でないような特殊な地形も存在する。

手をついて登らなければならないような場所や、

かがまないと通り抜けられない場所もある。


 「そっち、だめ!」

麻衣が突然、義純に呼びかける。

義純は驚いて足を止めた。

・・・この先は、

下方に向かって伸びている道と思われたが・・・。


 「こっちの崖みたいになってるところを登るの・・・!」

足場になりそうな凹凸があるので、

登るには苦にならない二メートル程度の岩場だが、

どうみてもこの先に道があるようには見えない。

義純は思わずレッスルやマーゴの顔を窺うが、

少なくともレッスルは麻衣の言うことを疑ってないようだ。

 

・・・見かねてライラックが、

その辺の石を最初に進もうとしていた前方の道の奥に投げ込む・・・。

あまり反響音が響かない・・・、

奥は行き止まりになってるのだろうか・・・?


 「麻衣ちゃん、連れてきて正解だったかもね・・・?」 

マーゴも麻衣に従うようだ。

 「・・・おじいちゃん。」

 「んー、何じゃな、お嬢ちゃん?」

 「杖を鳴らして。」

 「ほい、きた。」 


崖を登るような場所は一人づつしか登れない。

先の者が登る間、

レッスルは一定のリズムで地面を叩き始めた。

崖のてっぺんは、

平らに近く人一人ぐらいは寝そべれそうだ。

果たして義純が崖を登りきると、

先程の位置からだと死角になっていたが、

眼下に細く小さい間道があるのに気づいた。

思わず義純の声が出る。

 「ふわ~・・・。」

間道そのものは20メートルぐらいだったろうか?

曲がりくねっていたが、

それほど長い道ではない。

全員、崖を登り、

間道の終わりに近づいたとき、

麻衣が再び口を開いた。


 「この向こうに誰かいるよ・・・。」

 


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